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25章
おヨメさまと予定日
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三月に入り、まだ雪がチラつく日はあるけれど、出産まではあと少しだと思う。
多分、三月半ばで六十日になるので計算上はそんな感じだ。
お腹がそんなに大きくなるほどでもなく、胸が張ってるかなー? くらいで、少しぽっちゃり狼な座敷犬と化している私である。
食欲は少なかったのが最近はよく食べてしまっていて、ぽっちゃりに拍車をかけてしまったかも? 人の時と違ってお腹が張り過ぎて痛いとか、足が吊るとかはないんだけどね。
あとは相変わらず、クローゼットの中に入りたい症候群が凄い。
暗いところが落ち着く為に、私は穴倉から布団を咥えてはクローゼットの中に入り込んで寝ていることが多い。
ふんふんふーん。と、鼻歌交じりに今日もクローゼットに布団を持ち込む私。
ビバッ! 私の快適空間!
布団を手でふみふみと踏み、寝心地が良いように広げていく。
犬や猫が布団を踏みまわったりする意味がようやく実感できたという感じで、私も狼生活に慣れてきたかも?
「最近、アカリは狼に近くなりすぎていないか?」
そう心配するルーファスの声に、私は片耳をパタッと動かす。
そんなことは無いと思うけど、声が出せないから、どうも最近一人で居ることを好んでしまう。
クローゼットを開けてルーファスが心配そうな顔をして見下ろしている。
「今日はこのクローゼットが良いのか?」
私は尻尾を振って「ここが良い」と伝えて、へらっと笑うとルーファスは「仕方がない」という顔をする。
クローゼットはそれなりに大きいけど、服が多く入っている為にルーファスと二人で入るには狭く、心配性なルーファスはクローゼットの近くで私を見守ることが多い。
そんなに心配しなくても、ただ寝ているだけなんだけどなぁと申し訳ない気分もあるけど、クローゼットの居心地の良さに止めるに止められないでいる。
「アカリは狼の姿だとシューに似てるな」
そうだろうか? 首を傾げると、ルーファスは私の口元を触って頬を撫でる。
「獣化した時に、口元を笑ってみせるのはシューくらいだからな。アカリも笑っているからよく似ている」
んーっ、そういえば、シュトラールは獣化しても狼というより犬みたいに見えちゃうのは、口元がへにゃっと笑って見えているせいかも?
ルーファスやリュエールは口元を引き締めていることが多いから、狼って感じに見えるし、黙って近付かれると怒っているのかな? と、思うこともある。
ミルアやナルアが獣化する時は、危険が差し迫った時だけなので、そういう時の二人は常に怒った顔で走っている為、口元が笑っていることはないかな?
長年一緒に居て、その表情が怒っているわけでは無い事を知るけど、自分の顔まではわからなかったなぁ。
やはり、私は犬寄りの座敷狼ってところかな?
「アカリ、なにか食べたいものはあるか?」
「クゥーン?」
首を傾げる私に、ルーファスがギュッと抱きついて「声が聞きたい」と囁く。
抱きしめ返すことも出来ない私は、ルーファスに頭を摺り寄せて目を閉じる。
子供が生まれれば元に戻るようなことを精霊は言っていたらしいので、もうすぐ戻れるとは思うのだけど、意思疎通は多少図れても、伝えたいことすべてが伝えられるでもなく、もどかしさもあるし、本当に私なのかも不安なのだと思う。
姿かたちが変わって、私だと証明出来る物は匂いだけ。
確証が無いのに完全に信じるというのは大変だろう。もし、私が匂いと記憶だけを入れられているただの狼で、本物の人間の私はどこか別の所に閉じ込められたままだとしたら、この一ヶ月半以上の時間は無駄になる。
最悪、人間の私は餓死したりして死んでいるかもしれない。
そう考えると怖いかな?
まぁ、私は私なので大丈夫だよ。と、思うんだけど、自分でも最近は狼っぽい仕草に慣れてきているから、少し人間に戻った時に、大丈夫かな? ちゃんとお皿から直接食べたりしないように注意しなきゃと思う。
「すまない……アカリが不安な時に、オレがしっかりしないとな」
「フゥーン」
ポテッと座ってケープを口に咥えてお腹を出して尻尾を振ると、ルーファスが「触っていいのか?」と聞いてきてコクコクと頷くとお腹を撫でてくる。
人間のお腹と違って、少し赤ちゃんが分かりにくいし、コロコロ動くのでルーファスも手探りで探している感じで結構くすぐったい。
「これか?」
そうですよー。ルーファスの手より小さい、コロコロちゃんが赤ん坊だと尻尾を振って教える。
「小さいな。リューの生まれた時の小ささぐらいだろうか?」
リュエールより少し小さいかもしれない。狼の体に合わせてくれているのか、赤ちゃんは小さい。
でも、狼の赤ちゃんで考えるなら順調に育っている大きさで、割りと大きい方だから産む時痛いかもしれないと、周りに言われて、私としては脅さないで欲しいと思っているところでもある。
「どんな子が生まれるんだろうな」
獣化しているから、狼族で生まれるのは間違いないかな?
胎動……と、呼んで良いのか分からないコロコロ動く赤ちゃんは元気である。
多分、一人だけだと思う。どうもコロコロ動くから判り辛いのと、私のお乳がお腹にあるのでそれで少しわかりにくい。
「女の子だと嬉しいな」
あっ、ルーファスまだ性別を気にしていたんだね?
まぁ、男の子でも女の子でもどーんと構えておきましょう。
子供用の部屋もルーファスが準備してくれて、たまにスクルードがお手伝いという名のお邪魔虫もしていたけど、二人の頑張りで可愛いお部屋もあるしね。
白い物いっぱいのお部屋なので女の子を全力で欲しがっているイメージが強い。
まぁ、男の子でも白なら大丈夫だろう。
「今回、女の子じゃなかったら次も頑張ろう」
ルーファス、諦めないんだねぇ。まぁ、私もそれならそれで協力してあげましょう。
今はとりあえず、お腹の子供が無事に生まれることを先に考えるべきだけどね?
多分、三月半ばで六十日になるので計算上はそんな感じだ。
お腹がそんなに大きくなるほどでもなく、胸が張ってるかなー? くらいで、少しぽっちゃり狼な座敷犬と化している私である。
食欲は少なかったのが最近はよく食べてしまっていて、ぽっちゃりに拍車をかけてしまったかも? 人の時と違ってお腹が張り過ぎて痛いとか、足が吊るとかはないんだけどね。
あとは相変わらず、クローゼットの中に入りたい症候群が凄い。
暗いところが落ち着く為に、私は穴倉から布団を咥えてはクローゼットの中に入り込んで寝ていることが多い。
ふんふんふーん。と、鼻歌交じりに今日もクローゼットに布団を持ち込む私。
ビバッ! 私の快適空間!
布団を手でふみふみと踏み、寝心地が良いように広げていく。
犬や猫が布団を踏みまわったりする意味がようやく実感できたという感じで、私も狼生活に慣れてきたかも?
「最近、アカリは狼に近くなりすぎていないか?」
そう心配するルーファスの声に、私は片耳をパタッと動かす。
そんなことは無いと思うけど、声が出せないから、どうも最近一人で居ることを好んでしまう。
クローゼットを開けてルーファスが心配そうな顔をして見下ろしている。
「今日はこのクローゼットが良いのか?」
私は尻尾を振って「ここが良い」と伝えて、へらっと笑うとルーファスは「仕方がない」という顔をする。
クローゼットはそれなりに大きいけど、服が多く入っている為にルーファスと二人で入るには狭く、心配性なルーファスはクローゼットの近くで私を見守ることが多い。
そんなに心配しなくても、ただ寝ているだけなんだけどなぁと申し訳ない気分もあるけど、クローゼットの居心地の良さに止めるに止められないでいる。
「アカリは狼の姿だとシューに似てるな」
そうだろうか? 首を傾げると、ルーファスは私の口元を触って頬を撫でる。
「獣化した時に、口元を笑ってみせるのはシューくらいだからな。アカリも笑っているからよく似ている」
んーっ、そういえば、シュトラールは獣化しても狼というより犬みたいに見えちゃうのは、口元がへにゃっと笑って見えているせいかも?
ルーファスやリュエールは口元を引き締めていることが多いから、狼って感じに見えるし、黙って近付かれると怒っているのかな? と、思うこともある。
ミルアやナルアが獣化する時は、危険が差し迫った時だけなので、そういう時の二人は常に怒った顔で走っている為、口元が笑っていることはないかな?
長年一緒に居て、その表情が怒っているわけでは無い事を知るけど、自分の顔まではわからなかったなぁ。
やはり、私は犬寄りの座敷狼ってところかな?
「アカリ、なにか食べたいものはあるか?」
「クゥーン?」
首を傾げる私に、ルーファスがギュッと抱きついて「声が聞きたい」と囁く。
抱きしめ返すことも出来ない私は、ルーファスに頭を摺り寄せて目を閉じる。
子供が生まれれば元に戻るようなことを精霊は言っていたらしいので、もうすぐ戻れるとは思うのだけど、意思疎通は多少図れても、伝えたいことすべてが伝えられるでもなく、もどかしさもあるし、本当に私なのかも不安なのだと思う。
姿かたちが変わって、私だと証明出来る物は匂いだけ。
確証が無いのに完全に信じるというのは大変だろう。もし、私が匂いと記憶だけを入れられているただの狼で、本物の人間の私はどこか別の所に閉じ込められたままだとしたら、この一ヶ月半以上の時間は無駄になる。
最悪、人間の私は餓死したりして死んでいるかもしれない。
そう考えると怖いかな?
まぁ、私は私なので大丈夫だよ。と、思うんだけど、自分でも最近は狼っぽい仕草に慣れてきているから、少し人間に戻った時に、大丈夫かな? ちゃんとお皿から直接食べたりしないように注意しなきゃと思う。
「すまない……アカリが不安な時に、オレがしっかりしないとな」
「フゥーン」
ポテッと座ってケープを口に咥えてお腹を出して尻尾を振ると、ルーファスが「触っていいのか?」と聞いてきてコクコクと頷くとお腹を撫でてくる。
人間のお腹と違って、少し赤ちゃんが分かりにくいし、コロコロ動くのでルーファスも手探りで探している感じで結構くすぐったい。
「これか?」
そうですよー。ルーファスの手より小さい、コロコロちゃんが赤ん坊だと尻尾を振って教える。
「小さいな。リューの生まれた時の小ささぐらいだろうか?」
リュエールより少し小さいかもしれない。狼の体に合わせてくれているのか、赤ちゃんは小さい。
でも、狼の赤ちゃんで考えるなら順調に育っている大きさで、割りと大きい方だから産む時痛いかもしれないと、周りに言われて、私としては脅さないで欲しいと思っているところでもある。
「どんな子が生まれるんだろうな」
獣化しているから、狼族で生まれるのは間違いないかな?
胎動……と、呼んで良いのか分からないコロコロ動く赤ちゃんは元気である。
多分、一人だけだと思う。どうもコロコロ動くから判り辛いのと、私のお乳がお腹にあるのでそれで少しわかりにくい。
「女の子だと嬉しいな」
あっ、ルーファスまだ性別を気にしていたんだね?
まぁ、男の子でも女の子でもどーんと構えておきましょう。
子供用の部屋もルーファスが準備してくれて、たまにスクルードがお手伝いという名のお邪魔虫もしていたけど、二人の頑張りで可愛いお部屋もあるしね。
白い物いっぱいのお部屋なので女の子を全力で欲しがっているイメージが強い。
まぁ、男の子でも白なら大丈夫だろう。
「今回、女の子じゃなかったら次も頑張ろう」
ルーファス、諦めないんだねぇ。まぁ、私もそれならそれで協力してあげましょう。
今はとりあえず、お腹の子供が無事に生まれることを先に考えるべきだけどね?
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