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26章
ドラゴンの谷②
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洗濯日和り……とは言い難い秋空を、ピクニック気分のドラゴン達は楽しそうに飛び、私は木竜ケルチャの作った木の籠の中で獣化したルーファスのお腹の中で毛布に包まれていた。
ケルチャとケイトはコハルが癇癪を起した時に出す花を始末する為に、居残り組になっている。
ルーファスが行くからニクストローブも行くと言ったんだけど、卵孵りで幼竜になっている為に、大変だろうという事で居残り組になった。
木の籠は四畳ぐらいの広さで、ルーファスに私、エデン、アクエレインが乗っている。
エデンは命を司る竜なので、成長がとても遅い。その為にあまり大きい竜サイズでは無いから、飛行するには少しばかり大変なので籠の中にいるのである。エデンが大きなサイズになるには、二百年はかかるそうだ。
アクエレインは今現在、大型犬くらいの大きさになったかな? 若干まだドラゴンと言うより、龍に近い。
大分ドラゴンのフォルムらしくはなってきたけどね、ドラゴンの谷に行ける距離を飛べるほどの大きさでは無いからこちらも、私達と一緒に籠の中組みなのだ。
「ドラゴンの谷って遠いの?」
「んーっ、遠いというより、壁を突破する助走をつけている感じかなぁ?」
「助走……なんか嫌な予感しかしないんだけど……」
エデンの説明に頭を過ったのは、戦闘機が音速を超えた速度を出す時に白い雲が出るソニックブームだった。
うちのドラゴンならやりそうだから怖いのよね。
スピナもいるから、音速を超えそう……でもそうしたら圧が凄い気がするんだけど……と、思っていたら、『そろそろ行くぞ!』と、グリムレインの声がしてアクエレインが籠いっぱいに水を張る。
溺れる―!!! と、騒ぐ暇もなく水の中に居るのに、押し流されそうな圧力がかかり、後ろに押されて「ひぃぃぃ」と騒いだ次の瞬間には、前に押されて「ぎゃふーっ!」と変な悲鳴を上げてパンッと全身を弾けるような感覚がして、籠から水がザバーッと落ちていく。
「アカリ、大丈夫か?」
「あー、うん、グルグルしたけど平気」
ルーファスに乾燥魔法をかけて貰い、籠から外を見ると、真っ赤なキノコが見えた。
エノキ? でも、大きさが高層ビル並みに大きいんだけど……周りを見れば、まるで自分が小人になったように、全ての草木が大きい。
私の予想では谷と言うから……幻想的なクリスタルとかがいっぱい生えた谷とか、綺麗な滝を想像していたんだけど……なんだかちょっと違う感じがする。
「随分と植物が大きいな」
のしっと私の頭の上にルーファスが顎を載せてきて、外を覗きながら私と同じ意見を述べると、エデンが「果物も大きいから食べ応えあるよー」と笑う。
確かに物が大きいなら食べごたえはありそうだ。
「嫁御寮、世界で唯一のドラゴンの楽園だぞ」
アクエレインが楽しそうに声を上げ、エデンもキャラキャラとした笑い声をあげてくるくると飛び回る。
グリムレインが茶色い大きな傘のキノコの上にボフンと降りると、白く光る胞子がブワッと広がって飛び散っていく。
「うわぁー……キノコの胞子が雨みたい」
「嫁、そろそろ昼飯にしよう」
「はぁーい」
籠から出ると、ルーファスが獣化を解いて腕を回しながら肩をほぐし、手の平から鍵を出すと空間に差し込み、異空間倉庫からお弁当のお重箱を出す。
お重を包んでいた大きな風呂敷をレジャーシートの代わりにして、各自好きに座るとスピナが「少し待ってねー」と飛んでいったかと思うと、三角に切り取った大きなオレンジを持って帰ってきた。
「大きいから、粒を突いて飲むと丁度いいのよ! うふふ」
「スピナありがとう~」
スピナからオレンジの粒を一粒千切って貰うと、薄皮がゴム風船のように弾力があって歯で上の細い部分を齧って穴を開けて飲むと、瑞々しいオレンジジュースに感嘆の声が出てしまう。
「美味しいねぇ」
「コレで果実酒でも作れば、美味いものが出来そうだな」
ペロッとルーファスが舌でオレンジの粒を舐めて、グリムレインが「それだ!」というような顔をしている。アルビーがお酒が好きな理由も少しここら辺にあるかも?
果物は美味しいのはいいことだ。うんうん。
「飲み物もそうだけど、私の作ったお弁当も食べて」
「ああ。アカリの弁当はいつも通り美味そうだ」
「フフッ、ルーファスには、コハルが握ったオニギリあげるね」
いびつで小さなオニギリをルーファスの手に乗せると、口を押えてルーファスが「カメラを持って来るべきだった……ッ」と打ち震えている。
「そのうちまた作ってくれるよ」
「しかし、初のコハルの手料理だぞ?」
「あらあら、お父さんは拘りますねぇ。ふふふっ」
手料理と言うより、泥団子を握る感覚で握っただけとも言うんだけどね。やりたがったからやらせてあげたけど、手の平にお米の粒が付きすぎて、凄い顔をしていたんだけどね……
眉間にしわを寄せるところはルーファスによく似てるかなー? と、父娘の絆を垣間見た気がする。
感激しながらのルーファスの食事を私としては、カメラに収めてしまいたいところだ。
コハルがお嫁に行く時にでも見せたら、きっと両方が泣くんじゃないかな?
ケルチャとケイトはコハルが癇癪を起した時に出す花を始末する為に、居残り組になっている。
ルーファスが行くからニクストローブも行くと言ったんだけど、卵孵りで幼竜になっている為に、大変だろうという事で居残り組になった。
木の籠は四畳ぐらいの広さで、ルーファスに私、エデン、アクエレインが乗っている。
エデンは命を司る竜なので、成長がとても遅い。その為にあまり大きい竜サイズでは無いから、飛行するには少しばかり大変なので籠の中にいるのである。エデンが大きなサイズになるには、二百年はかかるそうだ。
アクエレインは今現在、大型犬くらいの大きさになったかな? 若干まだドラゴンと言うより、龍に近い。
大分ドラゴンのフォルムらしくはなってきたけどね、ドラゴンの谷に行ける距離を飛べるほどの大きさでは無いからこちらも、私達と一緒に籠の中組みなのだ。
「ドラゴンの谷って遠いの?」
「んーっ、遠いというより、壁を突破する助走をつけている感じかなぁ?」
「助走……なんか嫌な予感しかしないんだけど……」
エデンの説明に頭を過ったのは、戦闘機が音速を超えた速度を出す時に白い雲が出るソニックブームだった。
うちのドラゴンならやりそうだから怖いのよね。
スピナもいるから、音速を超えそう……でもそうしたら圧が凄い気がするんだけど……と、思っていたら、『そろそろ行くぞ!』と、グリムレインの声がしてアクエレインが籠いっぱいに水を張る。
溺れる―!!! と、騒ぐ暇もなく水の中に居るのに、押し流されそうな圧力がかかり、後ろに押されて「ひぃぃぃ」と騒いだ次の瞬間には、前に押されて「ぎゃふーっ!」と変な悲鳴を上げてパンッと全身を弾けるような感覚がして、籠から水がザバーッと落ちていく。
「アカリ、大丈夫か?」
「あー、うん、グルグルしたけど平気」
ルーファスに乾燥魔法をかけて貰い、籠から外を見ると、真っ赤なキノコが見えた。
エノキ? でも、大きさが高層ビル並みに大きいんだけど……周りを見れば、まるで自分が小人になったように、全ての草木が大きい。
私の予想では谷と言うから……幻想的なクリスタルとかがいっぱい生えた谷とか、綺麗な滝を想像していたんだけど……なんだかちょっと違う感じがする。
「随分と植物が大きいな」
のしっと私の頭の上にルーファスが顎を載せてきて、外を覗きながら私と同じ意見を述べると、エデンが「果物も大きいから食べ応えあるよー」と笑う。
確かに物が大きいなら食べごたえはありそうだ。
「嫁御寮、世界で唯一のドラゴンの楽園だぞ」
アクエレインが楽しそうに声を上げ、エデンもキャラキャラとした笑い声をあげてくるくると飛び回る。
グリムレインが茶色い大きな傘のキノコの上にボフンと降りると、白く光る胞子がブワッと広がって飛び散っていく。
「うわぁー……キノコの胞子が雨みたい」
「嫁、そろそろ昼飯にしよう」
「はぁーい」
籠から出ると、ルーファスが獣化を解いて腕を回しながら肩をほぐし、手の平から鍵を出すと空間に差し込み、異空間倉庫からお弁当のお重箱を出す。
お重を包んでいた大きな風呂敷をレジャーシートの代わりにして、各自好きに座るとスピナが「少し待ってねー」と飛んでいったかと思うと、三角に切り取った大きなオレンジを持って帰ってきた。
「大きいから、粒を突いて飲むと丁度いいのよ! うふふ」
「スピナありがとう~」
スピナからオレンジの粒を一粒千切って貰うと、薄皮がゴム風船のように弾力があって歯で上の細い部分を齧って穴を開けて飲むと、瑞々しいオレンジジュースに感嘆の声が出てしまう。
「美味しいねぇ」
「コレで果実酒でも作れば、美味いものが出来そうだな」
ペロッとルーファスが舌でオレンジの粒を舐めて、グリムレインが「それだ!」というような顔をしている。アルビーがお酒が好きな理由も少しここら辺にあるかも?
果物は美味しいのはいいことだ。うんうん。
「飲み物もそうだけど、私の作ったお弁当も食べて」
「ああ。アカリの弁当はいつも通り美味そうだ」
「フフッ、ルーファスには、コハルが握ったオニギリあげるね」
いびつで小さなオニギリをルーファスの手に乗せると、口を押えてルーファスが「カメラを持って来るべきだった……ッ」と打ち震えている。
「そのうちまた作ってくれるよ」
「しかし、初のコハルの手料理だぞ?」
「あらあら、お父さんは拘りますねぇ。ふふふっ」
手料理と言うより、泥団子を握る感覚で握っただけとも言うんだけどね。やりたがったからやらせてあげたけど、手の平にお米の粒が付きすぎて、凄い顔をしていたんだけどね……
眉間にしわを寄せるところはルーファスによく似てるかなー? と、父娘の絆を垣間見た気がする。
感激しながらのルーファスの食事を私としては、カメラに収めてしまいたいところだ。
コハルがお嫁に行く時にでも見せたら、きっと両方が泣くんじゃないかな?
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