黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
916 / 960
26章

ドラゴンマスター4

しおりを挟む
 ヒルルクが再び我が家にローランドと一緒に来たのは、一週間程してからだった。
 屋敷の居間で二人を座らせて、お茶菓子を出してお茶を淹れつつ、繁々しげしげと様子をうかがう。
 今、この屋敷には私一人だけで、ルーファスはコハルを連れて買い物に行っているし、ハガネもスクルードとピスターシュを連れて、いつもの魔法の練習に神社に行っている。
 ローランドは全体的な赤い色をしたドラゴンだけど、ヒルルクは赤茶色で何というか……トカゲというかイグアナっぽい感じの顔をしている。

「なんだか、この間よりも丸々としているね?」
「爺様に色々食わせてもらって、なんとか糸ミミズからは抜け出した感じだよなー、ヒルルク」
「うっせーなぁ。俺っちは、謝んねぇぞ!」

 ペシンとローランドに叩かれて、ヒルルクがベシャッと床に転がる。
ヒルルクの口調って、子供っぽいというか独特な感じだわ。ローランドも割りとヤンチャな口調ではあるんだけど、今までにないタイプかも? ありすさん寄りの口調かな?

「謝るって言うから、連れて来てやったんだぞ? 爺様の所に戻してやろうか?」
「うっせーなぁ。あそこはガキ共がピィピィ鳴いてて眠れないんだから、仕方ねぇだろ!」
「まぁ、そんなに大事は無かったから大丈夫よ。でも、ここは温泉大陸だから、お客さんも多いし、ああいうのは困るのよ。もうしないで欲しいわね」

 私が少し大袈裟に溜め息を吐き、チラチラとヒルルクを見ていると、「わかったよ。ったく、でも、俺っちに気安く話し掛けんなよ!」と悪態をついてくる。なかなかに気難しそうだ。
 玄関の方から音がして、バタバタと騒がしい音がし始めた。誰かしらが帰ってきたのだろうと立ち上がると、尻尾を全力で振っているピスターシュが走り込んで来た。

「ピイッ! ピピピィ~!!」
「ピスターシュ、おかえりなさい。お外は楽しかった?」
「ピピイ」

 よしよしと頭を撫でると、丸い一つ目がパチパチ瞬きをしながら、嬉しそうに細くなる。続いて居間に上がってきたのはスクルードで、私にしがみ付くとニッコリ笑う。

「スーちゃん、おかえり。今日は早くお勉強終わったんだね。今日はどうだったかな?」
「アメふらせるー!」
「おお、雨が降らせるようになったの? 凄いね! 流石、私のご自慢の息子さんだよ~」
「んふーっ!」

 スクルードの頭も撫でて、可愛い子ちゃん二人分ゲットだわーと、喜んでいるとハガネがありすさんを連れて居間に上がってきた。

「アカリっちー、相談があるんだけどさー……って、うわっ! トカゲ!」
「ありすさん、一応その子もドラゴンなのよー」
「誰がトカゲだよ! そこの一つ目の方がよっぽど変だろうが!」
「ピイイ~……」
「コラッ! 小さい子は苛めちゃダメッしょ! うちも悪いけど、あんたも悪いかんね!」

 ビシッとありすさんがヒルルクに指を差して怒ると、ヒルルクとありすさんの睨み合いが始まって「まぁまぁ」と、二人の間に入ったものの、久々にありすさんにアルビー以来の好敵手ドラゴンが現れてしまったようだ。

「えーと、ヒルルクもこんなチビッこいので、許してあげてほしいなー……なんて」
「チビとか言うな! お前だって人族にしてはチビだかんな!」
「ムッ! この、口が、悪いことを言っしょ!」

 ムギィと、ありすさんがヒルルクの頬を引っ張り上げ、私達はありすさんの手を心配したんだけど、全然平気のようだ。

「やめほ! ふぁふぁおんふぁー!(やめろ! バカ女ー!)」
「まだ言うっしょかー!!」

 今度は両手で頬を摘まみ上げるありすさんに、こちらとしてはヒヤヒヤしつつ「手は平気?」と聞くしか無かった。

「別に何ともないっしょ」
「ヒルルクは今は魔力が安定してるからね。そう簡単には、熱は出さないって。俺も居るし、俺は火竜だから熱竜のヒルルクの熱を押さえられるから安心しろって!」
「そう言う事は早く言ってよ。ローランドは、もぅ」
「いーから、放せっ! ったく、何なんだよ! この女! 俺はドラゴンだぞ!」
「そっちがドラゴンなら、こっちは聖女だし! フフーン。崇めたてまつるがいいっしょ!」

 ヒルルクもありすさんも、一向に引かない辺り凄い。ハガネがありすさんの分のお茶を淹れてくれて、とりあえず座ってもらったんだけど、ありすさんはヒルルクを指でうりうり弄りながら、楽しそうに笑っている。
これは意外と相性が良いという事だろうか?

「あの、ありすさん。相談というのは?」
「そうそう。実はうち三人目を授かっちゃったしょ!」
「あらまぁ! おめでとうございます!」
「うんうん。それでなんっしょ。どうもリリちゃんも二人目が出来たらしくて、出来ればアカリっちに少しお世話になりたいなぁって……」
「任せてって言いたいんだけど。うちはコハルも居るし、ミルアもフィリアちゃんも妊婦だから、優先的に自分の家の子になっちゃうと思うのよ。それでも良ければ、手伝うよ」
「うん。それはまぁ、仕方がないし、うちもそこら辺は了承済みっしょ! アカリっち、宜しくね!」

 ありすさんに手を握られてブンブンと上下に振られ、少し困り笑いで私はルーファスに怒られそうだなぁと思っていた。
今年の蜜籠りは十人目って張り切っていたし、すでに何回か濃密なのをしているから、妊娠していないとも言えないのが何とも言えない。この世界に妊娠検査薬が必要かも? と、思ってしまうのよね。

 ハガネには「お人好しだな」と言われたけど、ハガネもしっかり「来年は大忙しだな」と、言っている辺り動いてくれる気満々なので天邪鬼あまのじゃくなんだから仕方がない従者だ。
十分過ぎるぐらいハガネの方が、お人好しなんだよね。

 ヒルルクは温泉大陸の熱源のありそうな場所を探しに行くと言い出て行き、ローランドはナルアはちゃんと魔国でも友達も出来ているから心配ないと言って、当分はヒルルクの面倒を見るついでにピスターシュの成長を見るみたいだ。
新しいドラゴンはまだ言語が作られていないので、他のドラゴンを冬眠させないようにして、ピスターシュに言葉を発しないでも会話を出来るように皆で教えるそうだ。

 ちなみにヒルルクがピスターシュを「変なヤツ」呼ばわりしたのは、ピスターシュが私を「母上」と呼んでいるからだそうだ。
卵が孵った時に近くに居たからだろうか?
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。