黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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27章

ドラゴンハーレム13

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『大会のルールでは、大将を倒されると負けです~。団体六名同士で掛かるもよし、一人ずつ戦うでも良しとなりますが~……今回は、六人で総攻撃戦でお願いしますね~』

 テンのルール説明がされている間に、すでに試合場ではそれぞれが位置についていた。
 試合場はバスケットコート二つ分という所だろうか? 
 確か、バスケットコートのサイズは一つで縦二十八メートル横十五メートルだったかな?
 戦いにおいて、それが広いのか狭いのかは分からないけどね。

「温泉大陸はやはり、他種族の集まりのようだな」

 ベルドラ国の男性にそう言われて、温泉大陸側は「あー、確かに」という顔を今更している。
 大会は中継魔法で見える為、会話も筒抜けで、今回はその音声や画像のテストも兼ねた事前試合だ。

「でも、オレ等は家族だからね。皆、親戚!」
「俺は微妙だけどな」
「何言ってんの! ハガネもオレ等の家族でしょ!」
「まぁ、保護者ではあるな」

 そういえば、今、試合場に居るハガネ以外は親戚同士ではある。
 シュトラールとキリンちゃんは元より、リロノスさんもナルアの義父になるわけだし、イルマールくんも然り。
 種族で言うなら、獣人、エルフ、魔族とバラバラ。
 
「統一感のない奴等だ」
「種族が一緒なら統一感があるって、考えるのは時代遅れだよ。オレのお嫁さん精霊族だしね! オレ自身も獣人と人族が半々だもの。娘達も可愛いし!!」

 ベルドラ国側はどうも挑発したいらしいのだけど、うちのシュトラールにそういう挑発って、効かないのよね。
 こういう挑発で頭に血が上りやすいのは、実はリュエールの方だったりするから、リュエールが参加しなくて良かった……と、いうべきかな?
 
「シューは冷静なのか聞く耳持たないだけか、分からん奴だな」
「ふふっ、そこがシューちゃんの良いところなのよ」
「何事においても、頭に血が上った方が動きが鈍るから、この点では有利か」

 ルーファスは顎に手を当ててじっくり観察中ではあるけれど、我が家の息子さんはただ単に、マイペースなだけ。

「いけー! シューやっちゃえー!」
「ボッコボコにしちゃえー!」
「こらぁ。あなた達、うちのシューちゃんを悪のりさせようとしないで」
「だってアカリ。私達だって、シューの家族だもの。馬鹿にされたら怒るよー」
「そうだぞ! 嫁。ここは先制攻撃あるのみだ!」
「ボッコボコよー!」
「アルビー、スピナ、グリムレイン。あなた達は~、もう!」

 三人を叱りつけて、シュトラールに視線を戻せば、戦闘開始となっていたらしく、一番初めに動いたのはハガネだった。
 
「【防御上昇】【速度上昇】【攻撃力上昇】っと、こんなもんで良いか」
「ありがとー! ハガネは後は下がっててよ」
「ほいほい。俺は見学しとく」

 ハガネは魔法で全員の身体強化をすると、早々に降参して試合場から出てしまう。
 なんともハガネらしいというか、やる気が無いというべきか……

「あーっ! ハガネの根性無しー!」
「うっせー! だから、本番前に全力でやるかっつーの!」
「テンは全力でって、言ってるだろー!」
「知るかー! 俺は、元々全力でやっても後衛だから関係ねぇー!」

 野次を飛ばす外野にハガネが拳を上げて文句を言えば、倍返しで返ってきている。
 困った外野の応援団だ。 

「ふざけた奴等だ」

 ベルドラ国の人も呆れ気味で、手に持っていたシャムシールを振りかざした。
 シャムシールは、半月刀といわれる刃が月のようにカーブを描いた細身の剣。
 東北の国ではそうした形状の剣が多く、ミシリマーフ国出身のイルマールくんの武器もシャムシールなので、私達としては見慣れた武器だ。
 イルマールくんのシャムシールと違ったのは、ベルドラ国の人達のシャムシールは魔法が付与された剣だったことだ。
 彼等の剣は火をまとっていた。

「うわぁ……魔法剣は初めてかも!」
「シューくん! 感心してないで!」

 キリンちゃんがシュトラールを叱りつけ、手に持っていた弓矢を素早い速度で三本ずつ連射していく。
 キリンちゃんの矢が届く前にシャムシールの一振りで、矢は黒焦げになってしまう。
 しかし、うちのお嫁さんは不敵な笑みを浮かべている。

「わたしの矢は、特別なんだから!」

 キュルキュルと風を切るような音がすると、燃え落ちた矢の矢じり部分だけは残り、相手の肌をかすめていく。
 
「ここはアタシが!」

 ベルドラ国の紅一点だった女性が飛び出し、まるで踊るようにシャムシールでキリンちゃんに襲い掛かる。
 キリンちゃんもまた踊るように避けるのだから、エルフの身軽さには目を見張るものがある。

「女は女同士、やり合いましょうね!」
「エルフは森に帰って、木の実でも齧ってなさいよ!」

 弓本体を攻撃武器として振り回すキリンちゃんに、弓ってそういう風に使うものじゃないよね!? と、野暮な事を叫ぶのはやめておこう。
 女性陣が戦う周りでは、男性陣も戦い始めている。
 シュトラールが一番体格のいい男性を相手にし、リロノスさんとイルマールくんが残りを受け持つ感じだ。
 それぞれが白熱した戦いを見せ、相手に押され気味になるとシュトラールの全体回復で回復してしまうものだから、相手が持久戦に負けてしまった形だ。
 結果としては、温泉大陸の勝ちは勝ちだったものの……ハガネが実は大将だったものだから、それはどうなの!? と、ブーイングがあり、勝敗は無し!

『もっと派手に会場を壊したりして欲しかったですねぇ~』

 テンが残念そうなアナウンスをして、第一回戦の事前試合は終わった。
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