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3.奴隷の狼お姉さん
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切り替わるように映りこんだ景色は、爽やかな森林。見たことの無い木、草、虫、獣の臭い、断末魔まで聞こえてくる――って断末魔!?
「誰か、戦ってるみたい……」
人の匂いはするけど、血の匂いは獣のものしかしない。怪我は負っていないということなので、心配する必要もなさそう。
そんなことより、
「この指輪に……リスト、オープン」
脳に直接送られる情報。
それは、指輪に付与された空間魔法により物を収納出来るという、いわゆるアイテムボックス的なあれ。脳に送られたのは転生者セットとして貰った物の一覧。
ちなみに、カグラ様のお手製なので普通の転生者が渡される指輪より何百倍も物が入るらしい。
それを聞いて、「……プロポーズ?」とふざけてみたら、「それと同等の品を作れたなら、考えんでもない。……付与のみでな」と本気なのか冗談なのか分からない挑発的な笑みでそう言った。
付与のみなのは、指輪としての美しさも兼ね備えているからである。わたしにそういうセンスは無いと知っての優しさが沁みる。いつか本当に作ってみたい。
話が逸れたけど、内容物は鋼の剣が一本、ナイフ、治癒と魔力のポーションがそれぞれ十本ずつ、黒いドレスと着物が五着ずつデザインの違うもの、下着、しっぽ用高級ブラシ、無限水筒、干し肉、パン、果物、銀貨百枚……というラインナップ。
おかしい。数が多いというのは勿論、どうして黒いドレスと着物しか無いのか。白い肌と黒のコントラストが眩しい、みたいなのは理解出来る。
だからって、わたしの服をそうすることはないんじゃないかと思います。可愛いけど、着物も少しアレンジされてて可愛いけど、これで戦うの?
動きやすくはしてある。
でも、これは目立つ。
服の質とか、見た目とか、色々と。
「うーん、カグラ様のプレゼントだし……」
迷った結果、これは着て、でも別のやつも普通に着るということにした。今着ているのは普通に白いワンピース。ただ、ガーターリングが付いててエッチな感じがする。
白と黒、『極端だなぁ~』と思いつつ、『別にそれでもいっか』とも、お洒落にこだわりの無いわたしは思う。
それはともかく、何かに襲われる前に移動した方がいい。
剣を取りだして警戒しながらゆっくり歩く。
転生場所はランダムだと聞いていたので、こういうこともあるかなとは思ってた。
まずは、獣――空気中の魔素という、魔力に似たものから生まれる生き物、魔物。それと戦っている人に道を聞こう。
確かこっちに――
ガッ!
方向転換した瞬間、目の前を刃物が通り過ぎ、そのまま木に刺さった。
「ぴっ!?」
思わず鳥のような声を上げつつへたり込む。
今、一歩でも踏み出していたら、命は無かった。……この世界は、死と隣り合わせなんだね。
もっと、優しく教えて欲しかったです。
遠い目をしているわたしの元に、一人の少女……と言ってもわたしよりは歳上の女の子がやってきた。
「あ……も、申し訳ありません! こちらに人が居るとは思っていなかったもので……」
「あ、いえ、大丈夫ですよ? 怪我もしてませんし……」
「ですが、その……」
言い難そうしながらも、チラチラとわたしの下半身に視線を向ける。……ん? 下半、身?
嫌な予感と、妙な温かさを感じて……確認してみると、案の定と言うべきか、下着が若干湿っていた。何も飲んでいなかったおかげで、黄金水を垂れ流さずに済んだ様子。
彼女がこれに気づいたのは、アンモニア臭が原因。
女の子の頭には立派な狼耳がついているので、恐らくは嗅覚もわたしと同じくらいいいはず。
「本来なら弁償させていただくべきなのですが……奴隷の私には、1ユーラたりとも手にすることは叶いません」
「奴隷……あっ……」
首に付けられた細い首輪。
あれは隷属の首輪と言って、とある技能を使用することで人を従わせる為の道具になるとカグラ様から聞いた。
よく見れば、女の子の髪は少し汚れているし、服もボロボロ、防具もない。なのに、そんな状態でも綺麗な女の子だと分かる。
銀髪の髪はわたしと似た色で、耳は犬っぽさが出た立ち方、胸に関しては相当な巨乳。Fは確実にある。
惜しげも無く晒された太ももはむっちりしていて、膝枕をしてもらったら気持ちよさそう、なんて考えてしまう。
「それと、私に敬語は不要です」
「あ、うん、分かった……って、あれ? じゃあ、他の人が居ないのは?」
「ご主人様から夕方まで狩りをしてくるように、と言われました」
「えぇ……それは、普通なの?」
「どうなのでしょう……私は借金奴隷ですから、犯罪奴隷に比べれば易しいと思いますが……」
「ヤサシイ」
つい片言になるわたし。
それっていい方なんだねぇ……つらみ。
借金奴隷とか犯罪奴隷とかは予想しか出来ないけど、借金を返せば解放されるってことかな。
……返せる額なら。
んと……太陽の位置を見た感じ、今は午後2時くらい。
「お金が絡まなくて、命令にも反しなければいい?」
「はい。とはいえ、何をすれば……」
「狩りの仕方を教えて貰う、なんてどう? ちょっとした家出少女みたいな感じで、狩りどころか武器の扱いも知らないけど……」
「……危険が伴いますし、肌に触れる必要がありますが……よろしいのですか?」
「うん、いいよー」
あながち間違いでもないよね……?
日本人なんて、ここでは箱入り娘のお嬢様と何も変わらないし……ううん、下手をしたら、覚悟や危機意識の面では劣るかもしれない。
一人で魔物と戦える強さを持った、女の子。
襲われる心配もなく、教わる相手としては理想的。
一応鑑定をしてみた。
熟練度が低過ぎてステータス全部は見られず、名前と種族、メイン職業しか表示されなかったけど。
─────────────
名前:ルナ
種族:銀狼族〈Lv28〉
職業:剣士〈Lv16〉
─────────────
この時点でわたしよりは強い。
怪我ひとつ無いのを考えると技術もある、と思う。
「という訳で、わたしはカグヤ。よろしくね?」
「あ……わ、私はルナです。気になることがあれば、なんでもおっしゃって頂いて構いません」
「……どうかした?」
「いえ、何もありません」
「そっか」
慌てて名乗るところを見るに、間違いなく動揺していたと思う。
でも、話したくないなら無理に聞くのも可哀想だしなぁ……。
「ルナさん、行こ?」
「はい。……あの、呼び方――」
「呼び捨てにはしないよ。敬語はまあ、奴隷に対してっていうのはあるかもしれないけど、呼び捨ては……照れくさいかなって」
「そう、ですか?」
「そうなの!」
内心では〝ルナ〟と〝さん〟で月と太陽だ!
……なんて下らないことを考えて笑いそうになっていた。間違っても本人には言わないけど。
呼び捨てが照れくさいのは本当。
歳上のお姉さんを呼び捨てだなんて、いきなりは恥ずかしいもん。
まずは、倒した魔物を解体するそうなので、ルナさんが来た方向に進み……顔を顰めた。口に手を当てる。
血の臭いもそうだけど、首を落とされた人型の魔物や、内蔵が飛び出ているイノシシのような魔物、その他諸々がグロテスクな死に方をしているせいで。
……ルナさんが心配そうにしてるし、生き物の死体を見た程度で立ち止まってちゃいけない。
散々、動物の肉を食べてきた。
わたしは暫く旅をするつもりだから、お金も必要になる。
「……よしっ! もう大丈夫。見て覚えるから、面倒かもしれないけど説明しながらやってもらえる?」
「分かりました」
一番最初は、わたしに気を遣ったのか小型の魔物。そして、少しづつ大きなものになり、最後は人型。かなり慣れているようで、それほど時間をかけずに終わらせていく。
ルナさん曰く、この人型の魔物はゴブリンというらしい。群れで行動することが多く、武器を扱えるほど頭がいい。
解体の手順を覚えるのに集中し、話を聞きながらも、表情を変えないように嘔吐感を堪え続けていた。動物はまだ平気でも、人型はきつい。
終わる頃には軽く目眩すら……。
「本当に大丈夫ですか……?」
「だ、大丈夫……」
若干ふらふらしているわたしに、真剣な顔でルナさんが言う。
「無理はしないで下さいね。それが、カグヤ様の命を奪う結果になることもあるのですから」
……そうだよね。
わたしだけじゃない。
ルナさんまで危険に晒してしまう。
わたしの考えが足りてなかった。
「……少しだけ、休んでもいい?」
「勿論です」
真剣な顔をお姉さんらしい微笑みに変える。
その綺麗な笑みに見蕩れていたことは、休む場所を探していたルナさんには気づかれていないようだった。
よかった、見られなくて。
と思ったのも束の間、
「ふっ!」
力の籠った声が聞こえ……直後、木が傾いていく。
ルナさんの手に握られた短剣。それで木を切ったのだと分かっても、なかなか信じられない。
木は明らかに短剣よりも太く、簡単に切れるとは思えなかった。
「い、今のって、それで切ったんだよね?」
「はい、何か変でしたでしょうか?」
「う、ううん、凄いなって」
「……ありがとうございます」
嬉しそうなルナさんも綺麗だったけど、今度は頑張って見惚れないように目を木に向けた。
態々、座るところを作るなんて……凄いね。
わたしが座ると、ルナさんも座……らなかった。
「ルナさんも座ろうよ」
「いえ、私は奴隷ですので……」
「そんなこと、気にしなくていいの。わたしは、ご主人様でもなければ偉い人でもないんだから」
「……で、では、失礼します」
「うん」
2人で座ると距離が10センチもない。
そして、下着を変えてないことに今気づいた。
どうしよう。気にしない方向で?
ちょっとだけ、ずるをしよう。
指輪――異界倉庫に湿ったパンツを直接収納。スースーする状態からの、直接新しいのを穿く!
やった、成功。
で、そっちが気にならなくなると、今度は解体済みの肉やら骨やらが気になってくる。
多くない? 2桁はあるんだよ?
「あれって持って帰れるの?」
「はい。荷車を森を出てすぐの所に置いてきたので、まだまだ運べます。ただ、血の臭いに誘われて魔物が集まってきますから、解体する度に戻らなければいけません」
「それだと、かなり時間が無駄になっちゃわないかな?」
「そうですね。でも、それ以外に方法がありませんから」
荷車とか、それだけで重労働……。
方法、あるんだよねぇー。
何度も往復したくないし、使っちゃおう!
……この指輪の価値も知らずに。
「誰か、戦ってるみたい……」
人の匂いはするけど、血の匂いは獣のものしかしない。怪我は負っていないということなので、心配する必要もなさそう。
そんなことより、
「この指輪に……リスト、オープン」
脳に直接送られる情報。
それは、指輪に付与された空間魔法により物を収納出来るという、いわゆるアイテムボックス的なあれ。脳に送られたのは転生者セットとして貰った物の一覧。
ちなみに、カグラ様のお手製なので普通の転生者が渡される指輪より何百倍も物が入るらしい。
それを聞いて、「……プロポーズ?」とふざけてみたら、「それと同等の品を作れたなら、考えんでもない。……付与のみでな」と本気なのか冗談なのか分からない挑発的な笑みでそう言った。
付与のみなのは、指輪としての美しさも兼ね備えているからである。わたしにそういうセンスは無いと知っての優しさが沁みる。いつか本当に作ってみたい。
話が逸れたけど、内容物は鋼の剣が一本、ナイフ、治癒と魔力のポーションがそれぞれ十本ずつ、黒いドレスと着物が五着ずつデザインの違うもの、下着、しっぽ用高級ブラシ、無限水筒、干し肉、パン、果物、銀貨百枚……というラインナップ。
おかしい。数が多いというのは勿論、どうして黒いドレスと着物しか無いのか。白い肌と黒のコントラストが眩しい、みたいなのは理解出来る。
だからって、わたしの服をそうすることはないんじゃないかと思います。可愛いけど、着物も少しアレンジされてて可愛いけど、これで戦うの?
動きやすくはしてある。
でも、これは目立つ。
服の質とか、見た目とか、色々と。
「うーん、カグラ様のプレゼントだし……」
迷った結果、これは着て、でも別のやつも普通に着るということにした。今着ているのは普通に白いワンピース。ただ、ガーターリングが付いててエッチな感じがする。
白と黒、『極端だなぁ~』と思いつつ、『別にそれでもいっか』とも、お洒落にこだわりの無いわたしは思う。
それはともかく、何かに襲われる前に移動した方がいい。
剣を取りだして警戒しながらゆっくり歩く。
転生場所はランダムだと聞いていたので、こういうこともあるかなとは思ってた。
まずは、獣――空気中の魔素という、魔力に似たものから生まれる生き物、魔物。それと戦っている人に道を聞こう。
確かこっちに――
ガッ!
方向転換した瞬間、目の前を刃物が通り過ぎ、そのまま木に刺さった。
「ぴっ!?」
思わず鳥のような声を上げつつへたり込む。
今、一歩でも踏み出していたら、命は無かった。……この世界は、死と隣り合わせなんだね。
もっと、優しく教えて欲しかったです。
遠い目をしているわたしの元に、一人の少女……と言ってもわたしよりは歳上の女の子がやってきた。
「あ……も、申し訳ありません! こちらに人が居るとは思っていなかったもので……」
「あ、いえ、大丈夫ですよ? 怪我もしてませんし……」
「ですが、その……」
言い難そうしながらも、チラチラとわたしの下半身に視線を向ける。……ん? 下半、身?
嫌な予感と、妙な温かさを感じて……確認してみると、案の定と言うべきか、下着が若干湿っていた。何も飲んでいなかったおかげで、黄金水を垂れ流さずに済んだ様子。
彼女がこれに気づいたのは、アンモニア臭が原因。
女の子の頭には立派な狼耳がついているので、恐らくは嗅覚もわたしと同じくらいいいはず。
「本来なら弁償させていただくべきなのですが……奴隷の私には、1ユーラたりとも手にすることは叶いません」
「奴隷……あっ……」
首に付けられた細い首輪。
あれは隷属の首輪と言って、とある技能を使用することで人を従わせる為の道具になるとカグラ様から聞いた。
よく見れば、女の子の髪は少し汚れているし、服もボロボロ、防具もない。なのに、そんな状態でも綺麗な女の子だと分かる。
銀髪の髪はわたしと似た色で、耳は犬っぽさが出た立ち方、胸に関しては相当な巨乳。Fは確実にある。
惜しげも無く晒された太ももはむっちりしていて、膝枕をしてもらったら気持ちよさそう、なんて考えてしまう。
「それと、私に敬語は不要です」
「あ、うん、分かった……って、あれ? じゃあ、他の人が居ないのは?」
「ご主人様から夕方まで狩りをしてくるように、と言われました」
「えぇ……それは、普通なの?」
「どうなのでしょう……私は借金奴隷ですから、犯罪奴隷に比べれば易しいと思いますが……」
「ヤサシイ」
つい片言になるわたし。
それっていい方なんだねぇ……つらみ。
借金奴隷とか犯罪奴隷とかは予想しか出来ないけど、借金を返せば解放されるってことかな。
……返せる額なら。
んと……太陽の位置を見た感じ、今は午後2時くらい。
「お金が絡まなくて、命令にも反しなければいい?」
「はい。とはいえ、何をすれば……」
「狩りの仕方を教えて貰う、なんてどう? ちょっとした家出少女みたいな感じで、狩りどころか武器の扱いも知らないけど……」
「……危険が伴いますし、肌に触れる必要がありますが……よろしいのですか?」
「うん、いいよー」
あながち間違いでもないよね……?
日本人なんて、ここでは箱入り娘のお嬢様と何も変わらないし……ううん、下手をしたら、覚悟や危機意識の面では劣るかもしれない。
一人で魔物と戦える強さを持った、女の子。
襲われる心配もなく、教わる相手としては理想的。
一応鑑定をしてみた。
熟練度が低過ぎてステータス全部は見られず、名前と種族、メイン職業しか表示されなかったけど。
─────────────
名前:ルナ
種族:銀狼族〈Lv28〉
職業:剣士〈Lv16〉
─────────────
この時点でわたしよりは強い。
怪我ひとつ無いのを考えると技術もある、と思う。
「という訳で、わたしはカグヤ。よろしくね?」
「あ……わ、私はルナです。気になることがあれば、なんでもおっしゃって頂いて構いません」
「……どうかした?」
「いえ、何もありません」
「そっか」
慌てて名乗るところを見るに、間違いなく動揺していたと思う。
でも、話したくないなら無理に聞くのも可哀想だしなぁ……。
「ルナさん、行こ?」
「はい。……あの、呼び方――」
「呼び捨てにはしないよ。敬語はまあ、奴隷に対してっていうのはあるかもしれないけど、呼び捨ては……照れくさいかなって」
「そう、ですか?」
「そうなの!」
内心では〝ルナ〟と〝さん〟で月と太陽だ!
……なんて下らないことを考えて笑いそうになっていた。間違っても本人には言わないけど。
呼び捨てが照れくさいのは本当。
歳上のお姉さんを呼び捨てだなんて、いきなりは恥ずかしいもん。
まずは、倒した魔物を解体するそうなので、ルナさんが来た方向に進み……顔を顰めた。口に手を当てる。
血の臭いもそうだけど、首を落とされた人型の魔物や、内蔵が飛び出ているイノシシのような魔物、その他諸々がグロテスクな死に方をしているせいで。
……ルナさんが心配そうにしてるし、生き物の死体を見た程度で立ち止まってちゃいけない。
散々、動物の肉を食べてきた。
わたしは暫く旅をするつもりだから、お金も必要になる。
「……よしっ! もう大丈夫。見て覚えるから、面倒かもしれないけど説明しながらやってもらえる?」
「分かりました」
一番最初は、わたしに気を遣ったのか小型の魔物。そして、少しづつ大きなものになり、最後は人型。かなり慣れているようで、それほど時間をかけずに終わらせていく。
ルナさん曰く、この人型の魔物はゴブリンというらしい。群れで行動することが多く、武器を扱えるほど頭がいい。
解体の手順を覚えるのに集中し、話を聞きながらも、表情を変えないように嘔吐感を堪え続けていた。動物はまだ平気でも、人型はきつい。
終わる頃には軽く目眩すら……。
「本当に大丈夫ですか……?」
「だ、大丈夫……」
若干ふらふらしているわたしに、真剣な顔でルナさんが言う。
「無理はしないで下さいね。それが、カグヤ様の命を奪う結果になることもあるのですから」
……そうだよね。
わたしだけじゃない。
ルナさんまで危険に晒してしまう。
わたしの考えが足りてなかった。
「……少しだけ、休んでもいい?」
「勿論です」
真剣な顔をお姉さんらしい微笑みに変える。
その綺麗な笑みに見蕩れていたことは、休む場所を探していたルナさんには気づかれていないようだった。
よかった、見られなくて。
と思ったのも束の間、
「ふっ!」
力の籠った声が聞こえ……直後、木が傾いていく。
ルナさんの手に握られた短剣。それで木を切ったのだと分かっても、なかなか信じられない。
木は明らかに短剣よりも太く、簡単に切れるとは思えなかった。
「い、今のって、それで切ったんだよね?」
「はい、何か変でしたでしょうか?」
「う、ううん、凄いなって」
「……ありがとうございます」
嬉しそうなルナさんも綺麗だったけど、今度は頑張って見惚れないように目を木に向けた。
態々、座るところを作るなんて……凄いね。
わたしが座ると、ルナさんも座……らなかった。
「ルナさんも座ろうよ」
「いえ、私は奴隷ですので……」
「そんなこと、気にしなくていいの。わたしは、ご主人様でもなければ偉い人でもないんだから」
「……で、では、失礼します」
「うん」
2人で座ると距離が10センチもない。
そして、下着を変えてないことに今気づいた。
どうしよう。気にしない方向で?
ちょっとだけ、ずるをしよう。
指輪――異界倉庫に湿ったパンツを直接収納。スースーする状態からの、直接新しいのを穿く!
やった、成功。
で、そっちが気にならなくなると、今度は解体済みの肉やら骨やらが気になってくる。
多くない? 2桁はあるんだよ?
「あれって持って帰れるの?」
「はい。荷車を森を出てすぐの所に置いてきたので、まだまだ運べます。ただ、血の臭いに誘われて魔物が集まってきますから、解体する度に戻らなければいけません」
「それだと、かなり時間が無駄になっちゃわないかな?」
「そうですね。でも、それ以外に方法がありませんから」
荷車とか、それだけで重労働……。
方法、あるんだよねぇー。
何度も往復したくないし、使っちゃおう!
……この指輪の価値も知らずに。
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