もふもふ狐のTS少女、美少女達に可愛がられてます~異世界も地球もファンタジー? それより男に戻りたい~

ナギ@にわか

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異世界×TS少女=大波乱

第1話 不穏な異世界召喚

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 ここは、二人が出会った夢の世界。

 ――いない……わたしには、誰も……

 全てを諦めたの君。

 ――助けてくれる人なんか……

 泣きそうな、

 悲しそうな、

 辛そうな……そんな君の声。
 だから僕は、膝を抱えた君を放っておけなかった。

「だったら……」

 これは、幼い頃の大切な約束。

「だったら、僕が君を攫いに行くよ」

 驚いた君の顔は何よりも綺麗で。
 僕が笑わせてあげたいって思えたから。

「どんな所にいても、絶対に攫ってみせるから」

 ――うそつき。

「嘘じゃない」

 ――なら、どうやって来るつもりなの?

「どうしても辛い時、この鍵が僕と君を繋いでくれるよ」

 ――本当?

「うん、本当」

 ――本当の本当に?

「本当の本当に」

 繰り返す度に〝本当〟の数は増え、それに比例して君の瞳は光を宿していく。

 ――約束だよ?

「うん、約束する」

 ずっと、ずーっと、忘れたりしないから。例え君が忘れたって、死ぬほど辛い時には僕が迎えに行く。それが僕達の約束。

 ……ああ、この夢を見るのは何度目かな。
 いつもは君の顔がよく見えなかったのに、今回はハッキリ見えた――つまり、そういうことなんだろう。

 やっと約束を果たせる――

 ◇◇◇

「にゃー?」

 ……起こしてくれてありがとう。
 心の声で答えると、家族でもある白い子猫は「褒めて褒めて!」と言わんばかりに顔を擦りつけてくる。凄く可愛い。

「所で……先生、ここはどこですか?」

 丁度頭上に見えた先生に質問する。
 確か……寝る前は教室だったはず。今は見覚えがないどころの話ではなく、鎧に周りを囲まれた状態という人生初の体験。先生や同級生の様子を見るに命の危機……ではなさそうだ。

奏多かなた……ようやく起きたのね?」
「そんな露骨に呆れたような目で見なくても……」
「何か問題でも?」
「いえいえ、日頃の行いが悪いのは自覚してますから」

 周りから「じゃあ直せよ」と言われているような気がする奏多。きっと気のせいではないのだろう。
 しかし、眠い時は眠るのだ。

「はぁ……そちらの王女様が言うには、地球よりもの異世界だそうなんだけど」
「……上位の異世界」
「ええ、異世界っていう証拠もあるのよ」

 あんなものを見せられたら、と指差す方向には檻に入った3メートル程度の生き物。

「魔物って言うらしいわ」
「それはまた……」
「よく見るあれね」

 先生がゲームやラノベに詳しい可能性が浮上した。非常にロリロリした顔がニヤついている。
 うむ、俺は何も見ていない。

(それにしても、パッと見は小学生にしか見えないなこの人。言ったら怒られるだろうけど)

 その王女様の話を聞いていると、奏多達にやらせたいのは〝魔王の討伐〟だと判明した。
 テンプレ極まっているが、普通の高校生に何を求めているのか。更に、テンプレ通りなら……

「勇者様には特別な力があると聞いています」

 直接は知らないようだ。
 そしてこの王女様、どことなく人形のような印象を受ける。心がない訳では無いのに意志を感じない。きっと何かがある、と奏多は目を細めた。
 三十何名かの生徒たちは、「ふざけるな」「家に返して」と抗議するも、騎士(恐らく)達に剣を向けられて怯む。
 勇者と呼んでる割には随分と乱暴だね。
 王女様は止めない。むしろそのまま話を続ける。

 この世界にはステータスというものが存在しており、IからSSSまでの十二段階に別れているらしい。レベル1ならH辺りが普通で、勇者ならF以上が当たり前なのだとか。
 Iは1~19まで、Hは20~59までという風に細かく決まっている。見方は簡単。右手にある紋章に触れるだけ。

 ……厨二臭い。どうしようか、先生が凄く喜んでる……いや、どうしようもない。そう、知っているのは奏多だけでいい。

 伝家の宝刀――

「そっとしておこう」

 面倒事に巻き込まれたくなかったらこれ!

 そうだ、ステータスでも見ようかな(目を逸らしながら)。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

名前:ひいらぎ 奏多かなた
種族:妖狐
性別:女
年齢:16
天職:unknown

レベル:1
魔力:B
体力:D
筋力:E
耐性:F
敏捷:D
器用:E
精神:E

◆スキル◆
『言語理解』『鑑定Lv1』
『刀術Lv6』『体術Lv5』
『魔力操作Lv48』

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 性別が……気にしたら負けである。スルー。
 妖狐……奏多は何も見ていない。スルー。
 天職がunknown? なんの事やら。スルー。
 勇者らしい特別な能力が無い。やっぱりスルー。

 今日はスルーが多い日だ……(遠い目)。

「にゃー、にゃー!」

 可愛い。がしかし、奏多には伝えたい事が理解出来た。

「……シロちゃん、どうして居るのかしら……」

 先生は、首を傾げて学校に居るはずのないシロを見る。
 ごめんなさい、俺が連れて来ました。
 そんなことを考えているとシロが『見た目はシロが誤魔化してるんだよ!』と言う。奏多にしか分からない内容。

 ちなみに、先生は奏多と暮らしている。……正確には、先生が奏多の保護者なのである。幼い頃に両親が離婚し、母親と過ごしていたものの、とある事件に巻き込まれて帰らぬ人となった。
 父親がどこに居るか分からないせいで親戚の先生に預かって貰う必要が出てしまったのである。ただ、千夜ちやさん(先生の本名)は普通に歓迎してくれていた。

「にゃにゃにゃにゃー♪」

 ごーまーだーれーな感じで自分のステータスを確認するシロ。当然ではあるが普通の猫ではない。
 詳しくは後ほど分かる。

 王女様がクラスメイトのステータスを確認していると、ある生徒のところで目を見開く。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

名前:一条いちじょう 夏輝なつき
種族:人間
性別:男
年齢:16
天職:勇者

レベル:1
魔力:D
体力:D
筋力:C
耐性:D
敏捷:D
器用:D
精神:C

◆スキル◆
『言語理解』『剣術Lv1』
『魔力操作Lv1』『聖魔法Lv1』
『身体強化Lv1』

◆ユニークスキル◆
『聖剣召喚Lv1』『永遠の束縛Lv1』

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「素晴らしいです、一条様!」
「お、俺に勇者なんて務まらないと思いますけど……」
「いいえ、一条様ならきっと大丈夫です」

 天職が勇者とは……それって職業?
 一条の手を握る王女様は、やはり感情の起伏を感じない瞳。表情だけを取り繕ったかのような、操られているかのような、ほんの少しの違和感。
 それなのに、何故か奏多の胸がザワつく。

(それより、俺のステータスはどうなの?)

 ユニークスキルは無いが、『魔力操作』だけ高いし、魔力も勇者より上。一条は万能型で、奏多は魔力が高い。敏捷と体力も高い。

 ふむ……よく分からん。

「シロ、見られると困るからこっちには来ないようにしてくれ」
「にゃっ」

 だが、返事をしただけで何も起こらない。
 そして、奏多たちの番が来ると、何故か王女様は通り過ぎていく。誰も何も言わない。千夜さんでさえも。
 何故なら、それがシロの魔法だから。

 こちらに来てから使えるようになった、という訳ではない。奏多たちが魔法と呼んでいるだけで、実際はどんなものか理解すらしていない。
 原理が分からないから魔法でいいや、という感じである。

 その効果は認識阻害や幻影。実体のある幻影までも見せられる。今、奏多の姿を偽っているのは実体のある幻影。
 王女様が通り過ぎたのは認識阻害だ。

「にゃ~?」
「相変わらず凄いね、シロ」

 ドヤ顔で「凄いでしょ~?」と伝えて来るシロを撫でながら褒める。千夜さんに「マイペースねぇ……」と呆れられるが、褒め言葉という事にする奏多。
 誤魔化すように見ると、千夜さんのステータスもFより下は無かった。それが普通のようで、けれどBなんて人は1人も居ない。
 見せなくてよかった、と安堵。

 あそこで隠れてる女の子も同じかもしれない。

 隠れているのが分かったのは魔力の流れで……魔力なのはさっき知ったが、この感覚自体は知っている。そのお陰で『魔力操作』のレベルが高いのだろう。

「皆様は素晴らしいステータスとスキルをお持ちです」

 そう言って微笑む王女様。
 奏多には響かなくとも、かなりの人数がやられている。女子はさすがというべきか、嘘くさいと勘づいている様子。

 それを証明するように、

「……ですが、残念な事に勇者様とは呼べない方がいらっしゃったようなのです」

 悲しげな顔をしても騙されないから。

「ステータスを見せて頂いていた間、私を避けていましたよね? 何か、後ろめたい事があるのでしょう?」
「……こやつ、やりおる……」

 小声でふざける少女。状況を考えればある意味凄い。
 この少女、クラス内では無表情で有名だったが、意外と面白い子なのかもしれない……

 隠れていた子は絶体絶命のピンチかも。
 助けたい、助けたいけど今は見守る。

「選んで下さい」
「?」
「ここでステータスを開示するか、一般人としてここを出るか、です。当然、勘違いであれば謝罪致しますが」
「出る」

 即答だった。それだけ、見られたら困る内容だったのだろう。
 王女様も身一つで追い出すほど鬼畜ではなかったらしく、この国の通貨である金貨を10枚渡していた。

 え? 追い出す時点でおかしい?
 そんなの当たり前である。奏多もそう思ってはいるが、誰も文句を言わないせいで言い出せないのだ。何かを言いたそうにしてる様子もない。
 一応、奏多は理由も知っていたり。

 皆を部屋に案内するそうなので、奏多は付いて……行かずに残る。素直に案内されるクラスメイト達を見送り、幻影だけ残して出て行った少女を追う。
 断じてストーカーではない(ストーカーは大体そう言う)。

「あ、千夜さん……別にいいか。俺が居なくても大丈夫だろうし。今はこっちの方が危ない」
「にゃ……」

 視線の先には城の外へ出ようとする少女――名前は神崎かんざき 瑠美るみだったか。
 外は暗い。あまりにも静かで、大声を上げても気づかれないだろうというくらいに。

 だから、こんなことも起きてしまう。

「? ……通って、いいですか?」

 瑠美が声をかけたのは鎧を纏った二人の男。
 出口を塞ぐように立っている事に怪訝そうな顔をする。
 不穏な雰囲気を感じ取ったのだろうか、身構えながら少し後ずさる。

「残念だが、それは出来ない」
「どういう、こと……?」
「無事にここを出られては都合が悪いということだ」
「っ!」

 恐らく騎士であろう男に背を向けて走り出す。危険を感じるどころか、今すぐ逃げなければ殺されると思ったのだ。
 しかし、騎士がレベル1の瑠美より遅いはずがない。走り出してから数秒後には背中に剣が迫っている。

「くっ……」

 瑠美を切り裂くかに思われた剣。

(まあ、させませんけど?)

 横から手を突き出した奏多は、気づかずに通り過ぎようとする騎士の首へ正面から手刀を叩き込んだ。騎士が気絶し倒れ込む。
 骨の折れる感触はあったものの、気絶しただけで死にはしていない様子。さすが異世界と言うべきだろうか。

 その光景に思わず立ち止まった瑠美。
 立っていたのがクラスメイトだったのだから当然である。

「………」
「……あー、助けに来たんだけど」
「……ありがとう」

 ……剣を持った相手に武器が無いのは辛いので、倒れた騎士の剣を頂く。奏多が片手で扱える剣で助かった。そうでなければ素手で戦わなければならなかったのだから。

「た、戦うの……?」
「ああ、すぐ終わるから見て――」

 言い終わる直前に飛び出した。
 話しているから攻撃はしてこない――と油断している隙を狙った卑怯とも言える作戦。
 予想通り、虚をつかれて防御が遅れる。それでも受け止められてしまった辺りはさすが騎士である。力比べでは勝てないので一旦引く――のではなく、剣を滑らせて騎士の背後に回る。
 そして、振り返る暇もなく剣の柄を後頭部に叩き込んだ。

 流れるような動きに瑠美は唖然とする。
『刀術』のスキルレベルで分かる通り、奏多は素人ではない。油断している相手ならば身体能力が上の相手を瞬殺出来るほどに。

(んん? なんか、ぞわぞわって……)

 奏多、謎の感覚に困惑。
 体に異常はないし、嫌な予感がする訳でも無いので、「後で考えればいいか」と別のことに意識を向ける。

(よし……この剣とお金は貰っておこう。殺さなかっただけ感謝してくれよ? ……殺したらだろうけど)

 今度――洗脳(暫定)している誰かを倒した後。
 明らかに不自然だ。勇者を殺そうとするのも、召喚の時に王女様だけが話していたことも。洗脳されている、操られていると考えれば王女様の態度にも説明がつく。極めつけはクラスメイト達に放たれていた魔力。明らかに怪しい。

 いや、今はそんな事を考えている場合ではない。

「神崎さん、今すぐ逃げるぞ」
「……あ、わ、分かった。見つかったら、大変」
「話が早くて助かるね。さ、行こうか」

 瑠美の手を取って外へ急ぐ。
 すると、外には兵士が二人居た。こちらは門番であって、瑠美を殺すために配置されたのではないのだろう。

「……気づか、ない?」
「どういう理屈なのかは俺も知らないけど、この子の能力で見えないようにしてるんだ」
「猫……?」

 ずっと肩に乗っていたシロである。

「一応言っておくと、ただの猫でもないっていう。あ、声もある程度は大丈夫だけど、大きい声は出さないでね」
「ん」

 説明してる間に通り過ぎるが、やはり気づいた様子はない。
 ちなみに、手を繋いでいるのにも理由はある。
 シロの認識阻害は二人に効果があるものの、離れた相手に使うと魔力の消費が増えてしまう。
 奏多と手を繋ぐことで間接的にシロとも繋いでいるのだ。

 街に出ると、人はそれほど多くない。全く居ない訳でも無いが。建物はテンプレファンタジーにありがちな中世に近いもの。
 道を照らす灯りも所々にしかない。

「シロ、ここまで来たら隠すのは剣だけでいいと思う」

 騎士は同じ剣を使っているらしく、二本とも全く同じ意匠なので人に見られるのは避けたい。

「隠れなくて、いい?」
「大丈夫。神崎さんを殺したくても、犯罪者として指名手配なんてしたらクラスメイト達にバレる。追っ手は気にした方がいいけど、周りの人が全員敵になるって訳でも無いんだ」
「ん……なるほど。それなら、安心」

 言葉とは裏腹に繋がれた手に力が篭もる。
 手を繋いでいる必要はもう無い。ないが……怯えているのが分からないほど奏多は馬鹿ではない。

「きっともうすぐだ……」

 その声はシロに聞こえるかどうかという小さなもの。
 誰に聞かせる訳でもなく、遠くを見つめる奏多はあの王女を思い出す。

 昔見た少女に似ている。けれど、少し違う彼女。
 手がかりはそこにある。けれど、まだこの手は届かない。

 再度前を向いた時、

 ――待ってるからね――

 そんな声が聞こえた気がした。
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