もふもふ狐のTS少女、美少女達に可愛がられてます~異世界も地球もファンタジー? それより男に戻りたい~

ナギ@にわか

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異世界×TS少女=大波乱

第2話 これからの事

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 夜。何をするにしても店が開いていない。
 街の外に出るのも危険だし、と泊まる場所を探し始めた。お金はある。瑠美だけでも金貨10枚。奏多は騎士から奪った白金貨1枚、金貨2枚、銀貨36枚だ。
 単位なんて知りもしないが、これだけあれば大丈夫だろうと思う奏多。根拠はない。

 選んだ宿は比較的綺麗な所。安宿や高級宿は空いてなかった。食堂も併設されているのだが、遅い時間なのもあってかなり空いている。

 少し待つと冴えない感じの中年男性が出てきた。

「一泊お願いします。出来れば二部屋で」
「……2000リルになりますが、よろしいでしょうか?」

 言いたいことは分かる。「そんな金を持ってるのか?」という事だろう。瑠美がムッとしているのを横目に金貨を1枚取り出す。
 一応金貨なら足りているとは思うが、足りていないのなら足せばいいだけのこと。

「お食事は如何なさいますか?」

(そういえば、お昼前だったからお腹減ってるな。状況が状況だったから忘れてたけど……)

「あー、部屋で食べたりは?」
「問題ありませんよ」
「じゃあそれで。……何が食べたい?」

 急に話を振られてビクッとした瑠美。
 メニューを差し出されたから食べたいものを聞いただけなのだが。
 奏多の手を握ったまま背中に隠れているような状態なので、相当な人見知りなのかもしれない。……あるいは、殺されかけた事で異世界の人間が怖くなった可能性もある。

「えと……これがいい」
「俺はこれと……これで」
「……そんなに、食べる?」
「ん? ああ……まあ、育ち盛りだからさ」

 納得いかないという顔だが、追求はしてこないようなのでそのまま進める。……納得されないのもそれはそれでおかしい。

「10000リルお預かりで、お釣りは7360リルになります。お食事はすぐに用意しますか?」
「はい」
「では、こちらがお部屋の鍵になります」

 瑠美が頷くのを確認してから返事をすると、奏多に二つの鍵が渡された。
 部屋番号が並んでいるのでどちらでも大差ないだろう、と片方を瑠美に渡して2階の部屋に向かう。

「魔法がある分、中世って程じゃないんだよなぁ……灯りも魔法関係みたいだし、まんまファンタジーの世界だ」
「……ん」

 覇気が無さすぎて扱いに困る。
 部屋の前に来ても手を離さないので、仕方ないかと同じ部屋に入る事に。食事はこちらに持ってきてもらえばいいだろう。

 途端、瑠美が口を開く。

「カナ、ごめんなさい……」
「? ……もしかして、巻き込んだとか思ってるのか?」
「ん……それと、助けて貰って、ここまで連れて来てもらった。……なのに、私は怖くて何も出来てない……」

 やっぱり怖いんだな、と考えてから、むしろ女子高生がこの状況で冷静なだけでも十分だと気づいた。
 奏多は生まれつき普通ではないので当てはまらないが。

「いや、気にしなくていいよ。俺が勝手にやったことだし、大した手間でもないからさ」
「でも……」
「どうしても気になるなら、頑なにステータスを見せなかった理由を教えてもらえないか?」
「……ん、それくらいなら」

 いいらしい。呼び方も含めて心の距離が近い少女である。
 そして、理由を聞いていたのに瑠美はステータスそのものを見せた。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

名前:神崎かんざき 瑠美るみ
種族:人間
性別:女
年齢:16
天職:鍛冶師

レベル:1
魔力:D
体力:E
筋力:E
耐性:F
敏捷:F
器用:E
精神:E

◆スキル◆
『言語理解』『鍛治Lv3』
『錬成魔法Lv1』『魔力操作Lv1』
『隠密Lv2』

◆ユニークスキル◆
聖魔のラブソウル二重奏・デュエットLv1』

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

『聖魔の二重奏Lv1』
 ・聖武具、魔武具の作成が可能。
 ・聖魔武具の作成が可能。
 ・等級が最低で伝説級以上。
 ・効果は作成時の感情により変化する。

『聖魔の二重奏』の詳細については、奏多が『鑑定』を使って見たものだ。そのお陰で瑠美が隠した理由も判明した。

「毎日武器とかを作らされるな、絶対。下手をすると外に出ることすら……」
「そう……だから見せなかった」
「ああ、ナイス判断だと思う」

 しかし、奏多に見せることもリスクがあるのは理解しているはずだ。それでも見せたのなら、奏多を信頼しているという事なのだろう。
 信頼される覚えは全くないが。

「俺だけ見るのはフェアじゃないな」
「見ていいなら、見る」

 こう言うのだから見せるしかない。
 問題だらけのステータスを瑠美を見せる――と、先程の戦闘でレベルが2になっていたらしい。
 正しく、経験値を稼いだということだろうか。生き物を殺さずともレベルを上げられると分かったのは収穫である。

「………え?」

 奏多とステータスに視線を十回以上も往復させてからの発言である。理解不能といった様子だ。
 驚かれなければ逆に奏多の方が焦るのだが。

「シロ、解除していいよ。あと、いつもの姿になってくれる?」
「うにゃっ!」

 待ってましたと言わんばかりに奏多の肩から跳ぶと、白い何かに包まれながらベッドの中心に着地……瑠美が振り返ると、そこには猫耳の美少女が座っていた。

「……え?」
「うわぁ、視点が低い……というか声が高い。肌と髪は無駄に白いし……圧倒的女の子だわー……」
「……えっ!?」
「かなたー、シロとお揃いだねー!」
「しゃ、喋った……!?」

 瑠美、目の前の非常識に混乱中。
 奏多に抱きついているのを見ていることしか出来ない。そもそも、奏多からしておかしいのだ。髪は白く、瞳は青いし、身長は瑠美よりも低いかもしれない程。体型についてはぶかぶかの制服でよく分からないものの、控えめに言って美少女である。
 そう、控えめに言って、だ。

「色は確かにお揃いだなぁ……耳も尻尾もあるし。んー、これは狐っぽいかも?」
「えー……猫にしようよー」
「それは俺に言われても困る……」

 混乱を加速させるのは、奏多とシロの頭、そしてお尻の部分にある狐と猫の象徴だ。
 シロの尻尾はご機嫌そうに揺れている……

「ど、どういう、こと……?」
「どうもこうも……こっちに来たらこうでした、って事しか分からないんだ。あ、シロのことだった?」

 シロは猫であって猫ではない。
 数年前に猫だと思っていたシロを拾って、その実、人にもなれるよく分からない生き物だと知った。
 認識阻害などの力は生まれ持った力。

 また、奏多も普通とは言えない。
 幼い頃の記憶は無いが、覚えている限りではずっと持っていた力……いや、体質とでも言うべきか。
 生き物の心を視ることが可能で、自分にどんな感情を抱いているのか大雑把に分かる。
 そして、一番重要なのは……

「信頼関係を築くと、その分相手と心が繋がる」
「……心が、繋がる……?」
「分かりやすく言えば、相手の能力を一部借りられる」
「……ずるい」
「まあ、それにはお互いが信じ合わないといけないし、借りられるのはほんの一部なんだよ」

 シロの身体能力も少し借りている。
 借りているとは言っても、シロの身体能力は変化しない。それ所か、奏多の身体能力も若干加算されていたりする。
 認識阻害なども使えるが……シロにやってもらう方が確実だ。

 という説明を受けた瑠美は、

「日本もファンタジー……」
「否定は出来ない!」

 力のせいで面倒に巻き込まれる事も多々ある。
 しかし、この力がなければ奏多とシロは出会わなかったかもしれない。シロは元々、力を扱えていなかった……という話は、今必要ないだろうか。

「……私の家も、普通じゃなかった」
「そうなのか?」
「ん……家では刀を打ったりしてたから」
「だから『鍛治Lv3』なのかぁ……」

 その刀をどうしていたのか、それは分からない。案外、日本は普通などではないのかもしれない。

 少しの沈黙。
 すると、扉をノックする音が聞こえた。

「あ、俺出れないじゃん……」
「私が行ってくる」
「お願いします……」

 扉から見えない位置に隠れる奏多とシロ。
 やはり食事を運んできたようで、瑠美が2回に分けて運んできた(3つあるから)。

「……その子の分?」
「正解」

 多かったのはシロの分なのか?
 という意味だ。奏多はそこまで食べない。どちらかと言うとシロの方が大食いなくらいである。

 暫し無言で食事をする。
 異世界初の食事は中々悪くない味ではあったが、箸が無いのを見て日本のことを思い出したり、知らない食材があったりと2人とも複雑な心境なのだ。
 なお、シロは凄い勢いで食べているだけで、特に何かを考えているわけではなさそうだ。

「……私たち、帰れる?」
「ああ、今は無理だけど暫くしたら行けるんじゃないかな」
「そう、だよね。無理に決まって――え? 帰れる、の?」
「かもってだけだから期待はしないで欲しいけど」

 難しい話でもないので説明すると、奏多と心で繋がっている生き物――人も含む――はそこそこ居る。こちらの世界に来てからもそれは途切れていないのだ。
 とは言え、世界を繋げられる程ではない。
 それなら奏多のレベルを上げればいい。
 奏多から相手に加算される能力は、奏多の合計能力に比例する。つまり、奏多が強くなるほど向こうに行く分も増えるという訳だ。

 ならば話は簡単ではないか。
 駄目だった時に落胆させたくないので「かも」ではあるが。

「……私も手伝う。戦えるかは、分からないけど……刀なら打てる。相性、バッチリ」
「えーと……そうなのか?」
「絶対、バッチリ」
「そ、そうかも?」
「間違いなく、バッチリ」
「そ、そうですね」
「ん」

 言いながらずいっと迫られて顔を背ける。前髪で目が隠れていたために分からなかったが、よく見れば整った顔立ちをしているのだ。
 美少女に関してはシロで慣れている奏多も、至近距離で見つめられるのは恥ずかしい。

(相性はそんなに重要か……?)

 とは思ったが、余計なことは言わない。

「じゃ、やることは……」

 一、この街から出る。
 二、別の街で仕事を見つける。
 三、鍛治が出来る環境を整える(家を買う?)。
 四、本格的にレベル上げ。

 その他(出来れば)。
 ・男に戻る方法を見つける。
 ・仲間を増やす。

「……男の子に、戻りたい?」
「まあね。女の子になったからって男は好きになれないし。しかも、こんな耳が生えてたら日本で暮らせないって……」
「仲間は?」
「それはほら、料理だったり一緒に戦える人だったりだ。……神崎さん、実は料理が出来るとか?」
「ない」

 即答だった。奏多も出来ないので人のことは言えないが。

「……でも、ずっと女の子かもしれない」
「え、もしもそうなったら困るけど……それがどうかした?」
「ん……口調は、変えた方がいい。せめて、人前に出る時だけでも」
「あー……」

 考えてみて欲しい。
 普通の女の子――奏多は美少女だと気づいていない――の一人称が『俺』というのは悪目立ちするのではないだろうか。筋肉隆々だったりするのならともかく、奏多はかなり華奢だ。
 全くと言っていい程似合わない。

(でもなぁ、〝私〟はさすがにキツいだろ)

「僕とかいいんじゃないか?」
「ダメ。ちょっと男の子感がある。もう少し、イントネーションを……それと話し方も――」
「あ、はい……(変なスイッチが入ったな)」

 瑠美による口調の指導は1時間に渡って行われた。
 シロはやる事を考えている間に寝ていたが、そのせいで問題なく進んでしまったのである。……進んでしまったのである!(大事なことだから二回言いました)

 その夜、寝言でこう言っていたのをシロは聞いた。

「女の子らしくするから……ゆるして……うぅ……」

 異世界転移初日、なんとか終了――
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