私たちの恋愛模様

恭利

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1.狂愛~ゆかの恋~ 第7話

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第7話

結局、私は恐怖から深夜にお寺に行くのは一旦断った。
『ゆかちゃん、やっぱりこんな時間から行くのは危ないから
お昼に一緒に行くから今日はやめとこう!』と何度言っても
ゆかちゃんは『もういい!ゆか1人で行くから!』と言いだした。
さすがに、1人で行かすわけにはいかない事ぐらい分かってる...
これはもう怖くても、私がついて行くしかないと自分に言い聞かせた。
でも興奮してるゆかちゃんが運転する車で行くのは絶対に嫌だ!
そう思った私は、先に言わなくてはと思い『今からゆかちゃんの所に
迎えに行くから出る準備してて!遅い時間だからインターフォンは
鳴らさないから、車の音が聞こえたら窓から見て外に出てきてね。』
と伝えて私もすぐに家を出た。

ゆかちゃんの家の前に着いて、2階のゆかちゃんの部屋のカーテンが
少し開いてゆかちゃんの顔がチラリと見えた。
すぐにカーテンが閉まり、しばらくすると玄関のドアが静かに開いた。
音をたてずにゆっくりとゆかちゃんが出てきて私の車に急いで乗り込んだ。

私はゆかちゃんが車に乗り込んだと同時に車を走らせた。
早くお寺に着いて、早く帰りたい一心で車を走らせた。
いつも見慣れている道路なのに夜中は本当に別世界のようで不思議だ。
車も歩行者もいない静まり返った街並み...
真っ暗な道路沿いで信号機の明かりと街灯の明かり、店先の照明だけが
照らされていて普段はそんなこと思わないけど、どこか不気味に感じる。
こんな時間にお寺に行きたいって言うなんて、正気の沙汰ではない。

それでも今からお寺に行くと思うと気が重いから、ドライブと思おうと
気持ちを切り替えて、軽快に普段聴いているFMラジオを聴きながら
車を走らせていた。
ラジオからは楽しい笑い声や音楽が流れて、私達はしばらく会話も無く
ラジオに耳を傾けていた。
正確には私達ではなく、私だけかもしれない...
助手席のゆかちゃんにチラッと目を向けると、人形のように前だけを
じっと見ていて何を考えているのかまったくわからない。

そうこうしているとナビから『目的地周辺です。』という音声が流れた。
私の中で一瞬、緊張感が走ったがすぐに車を止める場所を考えていた。
本来ならお寺の駐車場か近くのコインパーキングに止めなければいけないが、
怖さもあってお参り後にすぐ車に乗れる様に、できもしないのにお寺の中に
車を乗りつけたい気持ちでいっぱいだった。

それでも少しでも近いところっていう思いから、昼間は絶対にできない
神社の鳥居の前に車を停めて、『こんなところに停めてすみません!』
と言いながら、ふたりで真っ暗な参道に薄っすらと灯されている灯籠の
明かりを頼りに歩きだした。
その薄明かりで余計に恐怖心が増して、背筋がゾクゾクした。
しばらく歩いたところで、カサッと音が聞こえた私は『わぁ~っ!』と
何も確かめず、ゆかちゃんの手に力を入れて握って自分に引き寄せて
出口の方向に体を向けた。
その時ゆかちゃんが『痛い!』と大きな声で言ったのがスタートの
笛の役割になって、ゆかちゃんの手を握ったままダッシュで車に戻った。

私はゆかちゃんに『車の中から拝んでもいいと思うよ!赤ちゃんは
解ってくれる!赤ちゃんもいいよって言ってくれるよ大丈夫!
どうしてもっていうなら、また昼間に一緒に来るよ!』
と恐怖から頭に浮かぶ言葉をひたすら、ゆかちゃんに言った。
私も自分で何を言ってるのかわからないけど、もう一度お寺に行くのは
避けたい一心で、とにかく早く家に帰る事しか考えていなかった。

取りあえず、ゆかちゃんを説得した私は行きと違い車内の無言が
恐怖心を掻き立てるから車のハンドルを強く握り締めながら
無我夢中で、ひたすらしゃべり続けていた。
反応がないなって思って、ふと隣を見ると黙って前だけを見ている
ゆかちゃんの頬に涙がつたっていた。
その姿を見て、怖さで自分のことだけしか考えてなかったかな?
今、ゆかちゃんはどんな気持ちで、隣にいるのかな?と思い
信号待ちのタイミングで少し前に乗り出してゆかちゃんの顔を覗き込んだ。

その瞬間、鼓動が激しく打ちなんだこのドキドキは、ゆかちゃんを
抱きしめたい気持ちを抑えて、ゆかちゃんの太ももをトントンとつつき
ゆかちゃんの顔がこちらを見た時に私は笑顔を向けた。
私は変なドキドキの意味が分からず疲れているのかな?と思った。

ゆかを無事に自宅に送り届け車から降りたゆかちゃんは、私に
『ありがとう...バイバイ!』と言って車のドアをしめた。
ゆかちゃんが家の中に入るのを見届けてから帰路に就いた。

ゆかちゃんは中絶をしてから、ずっと複雑な精神状態で
竹林と別れてからは自分を否定する発言も多くなって私はダメ人間だ!
と酔っぱらっては口癖の様に繰り返していた。
竹林と付き合う前の天然でいつも無邪気に笑って、
たまに唇をアヒルの様に尖らしている、ゆかちゃんに戻って欲しい!
いや戻らなくても、せめて前を向いて成長して欲しいと私は願った。

月日が経ち、ゆかちゃんのお母さんと道でばったり会った。
少し会話をして別れ際に、『明日、おばあちゃんの命日やねんけど
みんな都合が悪くて、うちも子供はゆかと弟だけで、
お坊さんにお経読んでもらうねん!だから遊びに来たって。』
と声をかけられた。
私は『は~い』とは答えたものの、明日は予定もないけど少し
面倒だとも思った。
でも久しぶりに、ゆかちゃんの顔でも見にいくか?と思い
9時30分にお坊さんが来ると言ってたので、少し前に行こうと
ゆかちゃんを訪ねて家に行ったら、お母さんが伝えていたのか、
ゆかちゃんは笑顔で玄関に出てきて、私を仏壇のある部屋に連れて行った。
座る場所を教えてもらったら、『なに飲む?』と聞いてくれた。
私が『アイスコーヒーある?』と聞くと、『うん!アイスコーヒーね、
分かった!』と言って台所に行った。

しばらく、ゆかちゃんの弟と話をしていたらアイスコーヒーを持って
ゆかちゃんが表れた。
そのゆかちゃんは、あの夜中にお寺に行った時とは全く違う人物に見え、
さっと効率的に動く大人の女性だった。
少し見とれていると、お坊さんが来て、お経を唱え始めた。
しばらくしたら正座の足がしびれてきて、これはいけないと、
足を少しずつずらしながら、しびれと戦っていた。
そうこうしているうちに、お経が終わりお坊さんも帰られて、ゆかちゃんが
部屋に行こうと言ったので、2人でゆかちゃんの部屋に移動した。
何をするでもなくタバコを吸いながら、ゆかちゃんの仕事の愚痴を聞いていた。
ゆかちゃんが手伝っているレストランに、最近アルバイトで入ってきた
女の子に周りのおじさん達が親切すぎるらしい...
私が思うに、ただのゆかちゃんの嫉妬だ。

今までは店の中では、ゆかちゃんが一番年下で社長の娘だから、
そりゃみんな、ちやほやするよ!と思いながらも私は相づちを打っていた。
ゆかちゃんはいろんな事がありすぎるから余計な事は言わないようにして
私は今はゆかちゃんの横に、寄り添うだけにしようと思っていた。

しばらくして1階からゆかちゃんのお母さんが、ゆかちゃんを
呼ぶ声が聞こえてゆかちゃんが『はーい』と返事をしながら
部屋から出て行った。
すぐにゆかちゃんが戻ってきて、『ひなちゃん、お母さんがお昼ご飯
うどん屋さんに注文するから何にする?』と聞いてきた。
『えっ!』と私はゆかちゃんの顔を見ると、『昼ごはん!』と言った。
そこまで居てる気はなかったのだが、帰るとも言えず..
結局、『じゃあ、きつねうどん!』と答えた。
ゆかちゃんのお母さんが、法事が終わってから仕事に行っていたのに
私たちのお昼ご飯を頼むために抜けて来てくれたみたいだ。
出前が来るまで、弟も呼んで3人でトランプゲームをして待っていた。

トランプゲームを何回かやったところで出前が来た。
それぞれに自分が注文したものをテーブルに運んで行った。
私とゆかちゃんは、ゆかちゃんの部屋に運んだ。
ふたりで、うどんをすすりながら穏やかにすごしていたら
急にゆかちゃんの声が低音に変わり『お前は誰だ!』と言った。
目が吊り上がって怒っている顔だ。
私は驚き『えっ...』しか声が出なかった。
すると今度は2、3歳ぐらいの子供の言葉遣いになり、
『うろん(うどん)あちゅい~』とシクシク泣き出したり
食べられないと急に駄々をこねて私は戸惑いながらも、
慌ててうどんをゆかちゃんに食べさせると
『おいちい~』って言われたりしてわけが分からないまま
何とか食事が終わり、何だかこれは何かが憑依したのだと思った。
でもふたつの人格がでたから多重人格かとも思った。

ゆかちゃんは、私の膝に寝てきた。
するとまた、あの日の様に私の胸が熱くなりドキドキと鼓動を打った。
ゆかちゃんは気持ちよさそうにスヤスヤと寝ている
誰も不幸になる為に生まれてきているわけではないから
幸せな夢でも見てくれていたら良いなと思いながら
私は静かにゆかの頬にキスをした...





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