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婚約と解消
煌びやかなシャンデリアは派手というよりもシックでどこか落ち着きすら感じる。
王宮の大ホールも今日ばかりはウィクトル大公家の為だけに飾り付けられ、テンタシオンとルージュの為に国内外から多くの王侯貴族達が集まっている。
それほどまでにウィクトル大公家とアザール伯爵家の力が王国において大きいことを表しているが、勿論アルベルトとメーデアの二人がそれに気付くことはない。
それぞれの期待を抱きながら婚約パーティーに参加していた。
華やかなドレスに身を包んだ貴婦人達、その中でも一際目を惹く余程の者じゃない限り手が届かないと見るだけで分かる純白のドレスを纏うルージュ。
隣に立つテンタシオンが目に入らないのか、アルベルトは彼女を見つけると少し俯いて口元を覆った手の平の中で口角を上げた。
あまりに美しいルージュが気に入らないのか、二人を囲み持て囃す人々の様子が気に入らないのか、メーデアはあからさまに舌打ちをした。
「なにあれ、どうせ今日だけでしょう」
美しさでは劣る訳がない。自身にそう心の中で言い聞かせてメーデアはこれから社交会で人脈を作る為にルージュに近づこうとした。
けれどもどういった訳か、一度も目が合わない。
それどころか、あれほど噂の渦中に居た自分たちに誰も見向きもしない。そこに存在しないかのように集団に紛れるだけ。
アルベルトに関してはそれが余程気に入らないのか唇を噛み締めて落ち着かない様子だ。
「お二方、ご婚約おめでとうございます」
「ありがとうございます。来てくださって光栄です」
「まさか、私の婚約者ともお知り合いだったとは…」
「こちらもまさか、公子殿とルージュ嬢が婚約とは……なんて朗報でしょうか!」
和気あいあいと普段なら会うこともできないだろう高貴な者達がテンタシオンとルージュを囲み言葉を交わす。
人と人の間から二人を覗き見ていることに苛立ちが募ったのかアルベルトは集団を強引にかき分けてルージュの目の前に飛び出た。
「ちょっと!アルベルト様……っ!!」
「ルージュ……っ!!」
(さぁ望み通り迎えに来た。泣きながら俺がいい仲直りしたいと懇願しろ……!)
「そろそろ式典が始まる。行こうルージュ」
一瞬、アルベルトはルージュと目が合った気がした。
目の前の自分を確かに見たはずだ。
なのにそれを遮るようにルージュの手を取り腰を抱いたテンタシオンによって彼女からの言葉を聞くことが出来なかった。
「あと、マルグリス侯爵とは式典の後別室で話があるのですが」
人の良さそうなテンタシオンの笑みに決して温度は宿っていない。けれど頷いたルージュと目がちゃんと合う。
アルベルトはルージュを取り戻したい一心で頷いた。
メーデアの表情は浮かないものだったが、彼女もまた野心のためにアルベルトお同じく頷くしかなかった。
「お呼び致しますので、それまでは式典後のパーティーをお楽しみ下さい」
そう言って背を向けたルージュが憎たらしいが、メーデアは辺りを見渡し、参加する面々を見てだらしなく顔がゆるんだ。
(きっと私も侯爵夫人として扱われるはずよ、それにどんな出会いがあるかわからないものね)
落ち目のマルグリス侯爵家の名ばかりの婚約者。
後ろ盾も権力も持たず、能力も不十分なメーデアは自分がどう見られているのかだなんて考えもしていなかった。
子供のように自己主張ばかりで力量が追いつかないアルベルトに関しても同じだった。
皆に祝福されながら壇上へ登る幸せそうなルージュとテンタシオンを見て苛立ちを抑えるように給仕係からシャンパンを取った。
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