元カレの今カノは聖女様

abang

文字の大きさ
21 / 56

武闘大会 3

しおりを挟む

「なんで……また面倒な奴と」


「カミルさん……」


レイノルドに向かい合うカミルの表情は嬉しそうではない。

皆、対戦相手と本気で戦ったり普段対戦できないような先輩方と腕試しするのを楽しんだりとしながら優勝を目指すのだがカミルはもう、確信している。


(レベルが低すぎる、俺かディートが獲るのに問題は無いし……どうせなら楽しみたいけどレイノルドは……)


「カミルさんは何故、イブを放置するんだ!」

「……俺がイブを?」


「貴方がセリエを虐げる彼女を注意すべきだったっ!」


「ほんと、疲れるよお前達は」


「はっ!?」

珍しくその気になったそのよく通る声はある程度の階の席の者にははっきりと聞こえている。

赤々と燃えるように光る魔力は、アカデミーの実習で見た事があるイブリアのものとよく似ていて当時を思い出して身震いする。

豪快だが、ちゃんと計算された攻撃魔法は学年最強とも言われていた彼女は紛れもなくバロウズ公爵家の、彼の妹なのだと思い知らされる。


「人の本質がわからない、お前達はいくらでも知る手段があるのにだ」


「分からないのはカミルさんと、イブだろう!セリエは……っ」


「持つ才を腐らせて、その脳みそは飾りにしてる……」


「いくらカミルさんでもそれ以上は……っ」


「妹だからじゃない。贔屓目を抜いても彼女は……」


(カミルさん、怒ってる……?まずい)

チラリとセリエを見たレイノルドは驚く。

自分を心配するのではなく、カミルをキラキラとまるで恋する乙女のような瞳で頬を染めて見つめているのだ。

「え……セリエ」


「っは!気味が悪いよ。あれは一体


一瞬、近づいてレイノルドに耳打ちすると顔を顰めたまま離れたカミル。


その言葉にハッとしたようにカミルを見たレイノルド。


「俺は……マルティナ一筋なんで!」

悪戯か、魔力で赤いハートを沢山浮き上がらせるとしまいには魔力で文字を浮かび上がらせる。



『マルティナ、愛してるよ』



不安そうに見つめていたマルティナは、吃驚した様子だったがとても嬉しそうに微笑んで彼女の柔らかい淡い紫の光で「私も愛してる、カミル」と浮かび上がらせた。



高貴な二人の愛し合う様子に盛り上がる会場。

呆れるイルザ、微笑むディートリヒに愛する人を一途に愛し、自分を信じてくれる兄に胸が温かくなるイブリア。


「カミルさん、貴方は相変わらず……僕間違ってたのかな?」


「さぁ、信じたい方を信じれば?」


「でも……彼女は今貴方を見つめてるんだ」


「すぐに崩れる程度でイブリアを傷つけたのかお前達は」


「……うっ」


「お前達はずっと……


セリエの口元は確かに凄いわっ!と嬉々とした表情で動いた。


イブリアやマルティナ達の居る方を見ると、イブリアは表情を崩さなかったが胸に手を当てて「カミルお兄様、ありがとう」と口元を動かしたような気がした。


彼の魔力で作ったハートが爆発音を立てる中、レイノルドは冷静だった。


どの道なけなしの魔力で使う防御などカミルの攻撃には意味が無いだろう。


(きっとセリエが泣きながら、治癒してくれるんだ)


カミルの攻撃を成す術なく受け入れながらもそう考えたものの浮かぶのは、昔のことだった。

"私の真似をしようとしないで、レイ"

"だって……"

"私治癒は簡単なものしか使えないのよ……手当てしてあげるわ"



(ああ、イブはいっつも僕に怒ってたなぁ)

懐かしかった、イブリアを尊敬してた。好きだった。

彼女やカミルのようになりたくて真似をしては怪我した。

その度に駆けつけてくれたのはイブリアだった。

なのにいつからだろう、

セリエを愛してしまったのは、





そう考えてハッとした。


自分の本音に驚いた。

セリエを疑ってしまってもいつも、愛そうと何故かそう考えていた。




「今回もきっと、彼女はお前の元に来ないよレイ」


「うん、もう分かってるんだ本当はずっと前から」


何故だか頭が、身体がスッキリしていく気がした。




「ごめん、イブ」



「死にはしないが、早く治癒してやれ。必要なら妹が診るだろう」

もう限界で崩れ落ちる中、そう言ったカミルの声だけが聞こえた。


(イブは苦手な治癒魔法も克服したのか、流石だなぁ……)






しおりを挟む
感想 209

あなたにおすすめの小説

「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?

綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。 相手はとある貴族のご令嬢。 確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。 別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。 何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?

悪役令嬢に転生!?わたくし取り急ぎ王太子殿下との婚約を阻止して、婚約者探しを始めますわ

春ことのは
恋愛
深夜、高熱に魘されて目覚めると公爵令嬢エリザベス・グリサリオに転生していた。 エリザベスって…もしかしてあのベストセラー小説「悠久の麗しき薔薇に捧ぐシリーズ」に出てくる悪役令嬢!? この先、王太子殿下の婚約者に選ばれ、この身を王家に捧げるべく血の滲むような努力をしても、結局は平民出身のヒロインに殿下の心を奪われてしまうなんて… しかも婚約を破棄されて毒殺? わたくし、そんな未来はご免ですわ! 取り急ぎ殿下との婚約を阻止して、わが公爵家に縁のある殿方達から婚約者を探さなくては…。 __________ ※2023.3.21 HOTランキングで11位に入らせて頂きました。 読んでくださった皆様のお陰です! 本当にありがとうございました。 ※お気に入り登録やしおりをありがとうございます。 とても励みになっています! ※この作品は小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

⚪︎
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

最強の薬師、婚約破棄される〜王子様の命は私の懐の中〜

岡暁舟
恋愛
代々薬師として王家に仕えてきたボアジエ公爵家。15代当主の長女リンプルもまた、優秀な薬師として主に王子ファンコニーの体調を整えていた。 献身的に仕えてくれるリンプルのことを、ファンコニーは少しずつ好きになっていった。次第に仲を深めていき、ついに、2人は婚約することになった。だがしかし、ある日突然問題が起きた。ファンコニーが突然倒れたのだ。その原因は、リンプルの処方の誤りであると決めつけられ、ファンコニー事故死計画という、突拍子もない疑いをかけられてしまう。 調査の指揮をとったのは、ボアジエ家の政敵であるホフマン公爵家の長女、アンナだった。 「ファンコニー様!今すぐあの女と婚約破棄してください!」 意識の回復したファンコニーに、アンナは詰め寄った。だが、ファンコニーは、本当にリンプルが自分を事故死させようと思ったのか、と疑問を抱き始め、自らの手で検証を始めることにした……。

いいえ、ただ私は婚約破棄されたいだけなんです!

鏡おもち
恋愛
伯爵令嬢ロニエ・エヴァンズには、ささやかな野望があった。それは、ハイスペックすぎて重すぎる愛を持つ婚約者、第一王子アレンから「婚約破棄」を突きつけられ、実家の離れで一生ダラダラと昼寝をして過ごすこと。 ロニエは学園入学を機に、あの手この手で「嫌われる努力」を開始する。

嘘つきな婚約者を愛する方法

キムラましゅろう
恋愛
わたしの婚約者は嘘つきです。 本当はわたしの事を愛していないのに愛していると囁きます。 でもわたしは平気。だってそんな彼を愛する方法を知っているから。 それはね、わたしが彼の分まで愛して愛して愛しまくる事!! だって昔から大好きなんだもん! 諦めていた初恋をなんとか叶えようとするヒロインが奮闘する物語です。 いつもながらの完全ご都合主義。 ノーリアリティノークオリティなお話です。 誤字脱字も大変多く、ご自身の脳内で「多分こうだろう」と変換して頂きながら読む事になると神のお告げが出ている作品です。 菩薩の如く広いお心でお読みくださいませ。 作者はモトサヤハピエン至上主義者です。 何がなんでもモトサヤハピエンに持って行く作風となります。 あ、合わないなと思われた方は回れ右をお勧めいたします。 ※性別に関わるセンシティブな内容があります。地雷の方は全力で回れ右をお願い申し上げます。 小説家になろうさんでも投稿します。

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

処理中です...