13 / 99
品のない情婦?
しおりを挟むウエストの両端に、切れ目。
ドレスの裾から膝あたりまでギザギザで、胸元は元よりも深く切れ込みが入れられた独創的なデザインのドレスが届いて、ドルチェは流石に「してやられた」と思った。
アエリが急に夜会を開くなんて言うから何か魂胆があるとは思っていたが……
「まさか、業者を買収するなんてね」
けれど裾なんて切り取って仕舞えば問題は無いし、ウエストもいっそコルセットを外してくびれの部分をあえて見せれば、それはそれで斬新で良さそうな気さえしてくる。
ドレスを作る人達はこんな気分なのだろうか、急遽開かれることになった明日の夜会の為にこのドレスを修復するのが少しだけ楽しみになった。
「あなた達、裁縫はできるかしら?」
意気揚々と返事をした侍女、メイド達に紙におおよそのイメージを描いて説明していくと優秀なこの子達はすぐに作業に取り掛かった……
皆で夜遅くまで作業して、やっと出来上がったドレスを今度はもう安全だとカバーを掛けて解散したのが深夜。
翌朝、鏡の前でくるんと回ると支度を手伝ってくれた皆から口々に称賛を受けて、ドルチェもまた皆の手腕を称賛した。
「ありがとう……!うん、素晴らしいわ」
「皆のおかげよ。行ってくるわ」
皇宮で行われるこの夜会にはきっと国中から貴族達が集まる。
そんな場で恥をかかせるのが目的だったのだろう。
悲惨だったドレスを着て会場へ急いだ。
皆、知りたがっているだろう、他国から来た皇宮の端に引き篭もる三番目の妃がどんな人なのか……
「何よ、あれ……!?」
「なんて甘美なんだ……」
「あの方が……お美しい人ね」
「でもちょっとドレスが斬新じゃなくて?」
先ず目を引いたのはドルチェの引き締まった白い脚、身体にぴたりと沿った膝までのスカートのドレス。
「脚を出すなんて……」
「それに、コルセットは着けてないの?」
初めこそあまりに甘美で美しいドルチェに失敗したと思ったアエリは混乱する貴族達に内心にやりとした。
「あんなの、まるで本当に情婦だわ……」
アエリの言葉に皆が口々に戸惑いを表し、これでは面子の立たないヒンメルは激怒するだろうとほくそ笑む。
ドルチェと目が合うが、特に傷ついた様子もなければ気にした風でも無いのが憎たらしくて席に着いたままのヒンメルを盗み見る。
(早く、ドルチェの鼻をへし折るのよ)
早く、早くとドルチェの破滅の始まりを願うアエリの思いが届いたのかヒンメルはゆっくりと席を立ってドルチェに向かって進んだ。
チョーカーから胸元までのシースルーで辛うじて隠れている谷間も、露わになった腰元の肌も、脚も、全部が貴族どころか大陸中を探しても居ないだろう斬新なファッションは、保守的な貴族にはにわかには受け入れ難いだろう。
そして、自らの名を汚したドルチェをヒンメルは無能だと判断するだろう……そう予想していたのに……
ヒンメルと目が合ったドルチェは怯える様子もない。
ゆっくりと距離の縮まった二人、会場の空気はこの先どうなるのかと皆息を殺して傍観している。
アエリはドルチェに主役を奪われた気分で気持ちよく無いが、これでドルチェの鼻を折ってやれるなら良いかとも考えていた矢先、
何を思ったかヒンメルは上着を脱いでドルチェの腰に巻きつけると、そのまま横抱きにして席まで歩き出した。
「ちょっと、陛下……!?」
声を上げるアエリを無視して、珍しく呆気に取られたような表情のドルチェを膝に乗せて座ると彼女の肩に口付けた。
「陛下?」
「ヒンメル」
「……ヒンメル、どうしてこんな事」
「美しいが、生憎全部俺のものだ」
「……嫉妬深いのね」
「嫉妬?馬鹿なことを言うなお前は」
黄色い歓声、驚愕、祝福、会場は予想外のヒンメルの行動に盛り上がってドルチェを「寵妃」として受け入れる。
とうとうレントンの上着まで剥ぎ取ってドルチェの肩にかけた暴君に人々の想像は盛り上がるばかりで、
アエリの予想とは裏腹に、ドルチェを嫉妬するほどに寵愛するヒンメルを焼き付けただけの失敗に終わった。
「ーっ!良いわ、この程度は通用しないって事ね」
ならもっと、痛めつけてやるわドルチェ……
アエリの視線を感じながら、ドルチェはそのままヒンメルの首に手を回した。
472
あなたにおすすめの小説
結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?
ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十年目。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる