暴君に相応しい三番目の妃

abang

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優先順位を常に寄越せと

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どこで見かけても一緒にいるドルチェとリビイル。



厳密に言うと、ララと護衛達も一緒なのだがヒンメルにはリビイルと一緒にいるドルチェだけが見えていた。



本人でこそ気付いていないが、ヒンメルはどうやら嫉妬深いようだとレントンは思っていたがそれこそヒンメルの知る由もないことだった。




「北の島国、ホウリアはどうなった?」


「制圧しました。魔法ではなく技術的な武器で大陸へと撃ち込んで来ていたようです」


「良くやった、戦後処理は慎重に行う」


「はい……ところで陛下」




ジロリと視線を向けたヒンメルにレントンは慣れているとは言え思わず「うっ」と声を洩らす。



レントンの様子を訝しく思って眉を顰めるとレントンは遠慮がちに「殺気を抑えましょう」と内緒話でもするかのように口元に手を添えて言ってきた。



「殺気立ってなどいない」


「……そんなに気になるなら会いに行かれては如何ですか?」


「下らん」



そうは言っても、今までの妃の中で一番長く生き残ったアエリにすらそんな姿を見せた事はないではないか。と言いたげなレントンは後の事を考えてやめたようだ。




ヒンメルとて分かっている。


けれどもこれが恋や愛の類のものなのか、珍しいペットを手に入れた時の愛着のようなものなのか、どちらにせよ経験のないヒンメルには判断し難いのだ。


皇后なんて、此処に嫁いだ者ならば誰もが喜ぶ筈なのにドルチェは冗談でもそれを蹴った。


(長生きしたいから、だと)


思い出すとおもわず表情が緩む、あの心底興味の無さそうな愛想笑い。その癖に膝に乗せると自然に身を寄せる甘えるような仕草。



(この俺が振り回されるなんてな)


「レントン」

「はい」

「第三妃の宮へ行く、今夜だ」




結局行くん癖にと言うレントンのニヤニヤした顔を無視して、懐かない猫に餌付けでもするような気分でドルチェへの贈り物を思案した。




宝石やドレス、

どれを贈っても喜ぶが、どれも手応えがない。


なのに、初めて庭園を見せたときに「美しいですね」と言ったドルチェの表情が思い浮かんでいつもヒンメルを綺麗だと言う彼女の細められた瞳と長い睫毛がすぐに思い出せた。



まるでこれでは自分がドルチェに会うのを楽しみにしているみたいではないかと思わず手を止める。



「……はぁ」


「どうなさいました?」


「いや、ドルチェには首輪でも付けた方が良さそうだな」


「は……、あぁ、ネックレスですね」




(それにもう首輪なんかよりもっとえらいモノを付けたでしょうに……)


ドルチェの薬指の誓紋を思い出して哀れに思うレントンを余所に無意識にぽつりと言葉を落とす。



「強制召喚の印もつけてしまおうか……」

「陛下」

「冗談だ」

「冗談を言う人でしたか?」

「さっさと仕事をしろ」



一見、あの品のある微笑みと余計なことを話さない口で従順に感じるドルチェだが、妃となってから今まで思い通りにいったことなど一度もない。


「そうですね」「そうですか」「わかりました」


この三つの言葉はヒンメルへの肯定にも聞こえるが返事が良かったからと言って彼女が言うことを聞くわけでも無かった。


だから彼女の形式的な返事を封じる為にも「楽に話せ」と命じたヒンメルはそれが功じてほんの少しだけ口数の増えたドルチェとちょっとした言い合いや駆け引きをするのが楽しいと感じている。




「ふ」



生意気なドルチェを思い出してつい笑ってしまうと、まるでこの世の終わりでも見ているかのような表情のレントンと目が合ってイラッとしたので魔法で少しばかり痺れさせておいた。



「早く仕事を終わらせろ」

「理不尽だ……!」







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