暴君に相応しい三番目の妃

abang

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第二妃のお願い

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不機嫌そうな陛下の元に、最近では見なかった余裕のある表情のアエリ妃が謁見に来た。


いつも通り陛下の近くで控えている私に色目を使うような妖しい視線で笑ったアエリをやはり苦手だと感じつつも、頭を下げるだけの挨拶をした。


「陛下、本日は謁見を許可して下さって嬉しいですわ」


「用件は何だ?」


「ドルチェ妃殿下のことですわ」



あぁやはりな、私から見た陛下はそう言いたげな表情に見えた。

それでも、少なからず反応を見せた事が嬉しいのかアエリ妃は口角を上げる。相変わらず蛇のような人だ。


だが陛下にとっては彼女はただ利用価値のある数ある内の一人で、蛇どころか土の中で生きる虫よりも捻り潰すのは簡単な人。


けれど、それをしないのは今までは一番だったからだ。自分で生き残る術を持つ彼女は煩わしい上に善良とは言い難いが強かった。


けれど行動が目に余るようになって来ていたのも事実。
先程からの不機嫌である陛下が彼女を勢い余って殺してしまわないかが不安で目を離せない。


丁度、不機嫌の理由であるドルチェ様が皇妃宮で今どう過ごされているかの情報が部下から入ったので、陛下に耳打ちすると、案外普通だったことに安心したのか陛下は少しだけ目元を緩めた。


(よかった……)



陛下曰く「拾い物が好き」なドルチェ様は、案外、価値を見出せれば身分関係なく皇妃宮へ引き入れているようで昨日の昼には街で詐欺師の女を懐柔しメイドにしたとまで聞こえているが、ドルチェ様の情報管理は徹底していて陛下でも簡単には皇妃宮のことは調べられない。


それ程に彼女の「拾い物」たちは優秀で忠実だという事だろう。
彼女の見る目が肥えているということでもある。


(金ばかり使うどなたかとは違って、素晴らしい方だ)




考えている内にも会話は進んでいる。
陛下は片眉をあげてアエリ妃に聞き返す。




「ドルチェの事だと?」



「はい、正式に皇妃となりましたので祝宴を開いてはいかがかと思いまして。どうやら彼女はデビュタントもまだのようですの」



「本人と話しておく」



「良ければ、私が皇妃殿下の準備をお手伝いします」



人の良さそうな笑み、鋭い瞳の奥、これこそがアエリ妃だ。
蛇のように人を巻いて飲み込む。



(ドルチェ様は今度も上手くやるだろうか……)



陛下が妃同士のこういう争い事に口を出すことはあまりない。


使用人の雇用や、騎士団の件、その他にも皇妃となったばかりで引き継ぐ執務が多い筈のドルチェ様は皇妃宮の改装や公務に忙しい。



ドルチェ様を気遣っているのだろうか、陛下は少し考えてから

「その件はドルチェに任せる、だが祝宴は開く」
 
とだけ言った。




それを聞いたアエリ妃の目は嬉しそうに弓形に細めて「じゃあ……早速」と口を開きかけた所で、陛下が厳かな声色で待ったをかけ、涼しげな表情でドルチェ妃へ時間を与えた。



「だが、皇妃宮の改装が終わってからだ」


「どうしてそこまで気遣うのですか?各国の王族や貴族達は皇妃様が気になって仕方がない様です、早めに開催するべきかと」


「皇宮の一部である皇妃宮が未完成で、皇妃の準備が万全でないとなると皇帝の威厳に関わる。レントン……」


「はい、皇妃宮の完成には魔法を駆使しておりますのでそう時間は掛から無いかと」


「そう言う事だ」


「……っ、分かりましたわ」




何か策があるのだろうか、不服そうではあるが落ち着いた様子で謁見を終えようとしているアエリ妃を不気味に感じる。


けれど、珍しく時間を稼ぐ程度だとしても、妃に手を貸すヒンメルを見て家臣としてだけでなく友人としても少し安心もした。


「あの、陛下……」

「まだ何かあるのか?」

「今夜……寝室にいらっしゃいませんか?」

(私だって魔力は強いし……耐えれば……)

「たわけ、お前には無理だ造りが違う」



私もどちらかといえばなので陛下の言っていることは理解できる。


自信とプライドだけが空回りするアエリ妃にはどう聞こえたかは知らないが……素直に聞き入れておくべきだろう。

それにきっとヒンメルはもう……



(俗な表現だが、彼女しか抱けないだろうーー)



あんなにも愛おしそうに彼が誰かを見つめるのは、両親を含めて初めてなのだから。

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