暴君に相応しい三番目の妃

abang

文字の大きさ
46 / 99

優しい姉などもうとうにいない

しおりを挟む


アイオライトの瞳に見下ろされる。

家族で一人だけ違う色の瞳を怖いと思ったのはこれが初めてでは無かった。だからこそ姉を押さえつけて貶めたのだから。


どう見積もっても有能、容姿だって一目見れば分かる。
姉が魔力に恵まれた人物だってこと。

だからこそ気に入らなかった。

 
兄は唯一の跡取りで、姉はズバ抜けた魔力を持っている。
私には常に劣等感が付き纏った。

だがそれは母も同じだった。

外から嫁いで来たヴァニティの血を持たぬを持つだけの令嬢だった母は息子にも娘にも劣等感を抱いていた。


だからこそ自分に似た私だけを猫可愛がりした。

けれどそれすらも気に食わなかった。
母親がやけに情けなく感じてならなかったが、都合が良かった。



母を愛して止まない父も、私と同じように姉の潜在能力を畏怖する父や兄も、情けない母も全てが私の味方だった。


そして、そんな家族にと願うドルチェお姉様もまた好都合だったのにーー



(この人は、本当にお姉様なの?)



「シェリア?」

「ぁ……、ぇ……っと、その」

「可哀想に、こんなに震えて」


お姉様を見守るように佇む皇帝もまた、近寄れば近寄るほどに禍々しい魔力が触れて肌がピリピリとする。


直感的に、絶対に勝つことの出来ない強者に感じる恐怖。


お姉様は今までそれを必死で抑え込んで来たのだろうか。今は惜しみなく放つソレがお姉様を絶対的な君主として暴君の妻に相応しい皇妃たる姿にしている。


差し伸べられた手に思わず肩を揺らせた私をくすりと笑ったお姉様が憎たらしくてぎゅっと拳を握りしめた。



(お姉様如きが、調子にのらないで……っ)


「お姉様っ、私、第二妃殿下はお姉様ととても仲良しなのだと思って……!信じていたのに……っ!」


泣き崩れた私に形の良い唇が寄せられる。



「お掃除手伝えて、偉いわシェリア」

「ーっ、」


わざとらしく哀しげな表情を披露したドルチェお姉様に皆が丁度を合わせるように「お可哀想に!」「姉妹の仲を引き裂くなんて」とアエリ妃をチラチラと見ては責め立て始める。



「側妃ともあろうお方が皇妃殿下の妹君を貶めるなんて……」と言った言葉に触発されたようにアエリ妃が攻撃魔法を放つ。


チャンスだと思った。


震える脚で、目一杯の見栄を切って瞬間移動の魔法を最速で使い、その者の前に庇うように両手を広げて自らをある程度の力で防御しながアエリ妃の魔法をわざと受けた。




これでお姉様は、実質に身体を張って協力した私を無碍にはしないだろう。


そして……



「皇妃の親族を攻撃するなど、とち狂ったか第二妃」

「はっ……陛下、私は、私があなたの寵妃だった筈……っ」

「そんな事を言った覚えは無い」

「でも……っ」

「お前を側妃の座から降ろし、公爵家へと帰す」

「嫌よ!陛下!私達上手くやって来たじゃ……っひぃ!!」



恐ろしい目でアエリ妃を見下ろした陛下に正直身震いしたが、ヴァニティの血がそうさせるのか強い彼の魔力がひどく魅力的に見えた。




「あ、の……それなら側妃候補として私を此処に置いてくれませんか?」


「……シェリア」

「ドルチェの好きにするがいい」



「お姉様の役にも立ちます、多くは望みません!ただお姉様が心配なだけなんです……!!」



他国の見知らぬ貴族を庇い負傷し、

姉の恋敵に利用され、

それでも姉の心配をする愛らしくも健気な令嬢を世間は同情の目で見るだろう。


姉のモノを全て奪うまでは国に帰らない。

そう決めた。



ドルチェお姉様の青ざめた顔が見たくて、わざわざ涙目で顔を上げて見てゾクリとした。


口角を上げ、狂気的に笑う姉が見下ろしていたからだ。

まるで「待っていました」と言わんばかりに愉しそうに笑うドルチェを愛おしげに見守る皇帝にも寒気がした。


「あ、やっぱ……」

「いいわよ」

「へっ……あのっ私、」

「おいでなさいシェリア」

「……はは、嬉しいわお姉様」



くすくすと笑うドルチェお姉様は腰に添えられた皇帝の手に指を絡めて見上げると「側妃の宮を用意してあげてもいい?」とまるで気楽に尋ねる。



「ああ、好きにしていい」

「ありがとう、ヒンメル」



「栄誉にあずかり、光栄です……皇妃殿下」



「気を付けるのよシェリア」

「……」

(さっきから偉そうに……けど震えて動けない)




「此処では自分の身は自分で守らなきゃならないから」


ーーきっと、殺される


そう感じて、私の意識は暗転した。


けれど何処かでまだ自信が残っていた。

私はお姉様よりも愛される才能があるのだと。




















しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...