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思わぬ刺客は麗しの皇妃
しおりを挟む道中の長旅を考慮し、最悪の場合を予想して、万が一の際に皇妃宮迄の転移を使えるリビイルと、レン。そして女手としてララを同行者に選んだ。
メイドのライアージェは元々は生活する為に詐欺師だったが、今は立派な皇妃宮のメイドとして務めてくれている。
魔法こそあまり使えないが、体術や武器を使う事に長けている彼女は何故か私にすごく好意的で今もしっかりと他のメイド達と共に皇妃宮を守ってくれている筈だ。
ハンセンもまた、自らの能力を効率よく使った戦い方を教わり自らの能力の底上げに成功しているし、
フェイトは母の血筋が混じった所為か魔力の質も量も申し分なく、レイやフィア同様に天才だと言わざるを得ない。
それだけでも十分安心できる要素なのだが、皇妃宮では皆それぞれ得意分野を持っており住居区があることもあって宮の守りは私達が少し宮を開けた所で全く弱体化しないようになっている。
我ながらいい部下たちだと満足気に考えていると、港に付けられたあまりにも大きな船に思わず足を止めた。
「何故、こんなにも大きな船を?」
(軍艦ならまだしも、これじゃ客船よ)
まるで船内はちょっとした邸のように綺麗で、人数よりも余る部屋数。ホールや客室、食堂や簡易調理場まで設置されているこの豪華な船には既に操縦士まで律儀に乗っていた。
「陛下が皇妃を安宿や、船の硬いベッドで寝かせるなと」
「ヒンメルが……?」
「はい、必ずこれで行くようにとも」
「仕方ないわね。騎士を数人だけ呼んで頂戴」
仕方なく、人員を増やして船を出すと魔力を動力に早く進むこの船は海では大きさの割には素早く小回りが効いた。
船で数日、アンドラが目視できた所で一旦船を付ける場所探す。
街から離れた海岸の岩陰に……と言ってもこんなに大きければ隠れもしないが、とりあえず船を停めた。
リビイルとレンだけを連れてアンドラへ上陸した。
「ララ、船はいつでも出せるようにお願いね」
「はい、ドルチェ様。……お気をつけて!」
「……! ええ。ありがとう」
(心配されるってこんな気分なのね)
船が派手な所為か、直ぐにアンドラの騎士達が駆けつけてきて道を塞ぐ。けれどもドルチェが帝国の皇妃であると知ると通さざるを得ない。ヒンメルはこの大陸と近隣の島国を統一しているのだから。
形式上、各国は独立しているがあくまで帝国に属する国々だ。
けれどもアンドラの王はこれをチャンスだとも考えていた。
愛娘をあのように痛めつけた借りを返すのだと息巻いている彼は、王太子をで迎えに行かせてドルチェを油断させる算段だった……が、
「何をだらしない顔をしておるのだっ!!」
「皇帝の情婦があんなにも美人だったなんて……」
「妹を傷つけた女だぞ!!」
「あぁ……だからこそ欲しいなぁ、酷くシてやりたい」
「また悪癖か……、やめろ!なるべく静かに準備して的確に殺すんだ!!」
「父上はつまらないな……」
すっかりとドルチェに夢中な王太子のリカルドは父の指示を全く聞かず、初日からドルチェにべったりと付き纏う。
本人は笑顔こそ崩さないが、情婦なんて比喩が似合わぬほど隙が無い。その上に連れている騎士と従者もまた表情こそ普通の筈なのに「指一本でも触れたら殺す」とその瞳がそう圧力をかけていて、国王はドルチェをやり込める前に次は息子が酷い目に遭うのでは無いかと気が気じゃなかった。
「皇妃殿下、良ければお茶をしませんか?」
「リカルド卿……私は街を見てみたいのだけど……」
「でしたら是非!案内致しますよ!」
(これで、自然に宿にでも連れ込めれば……)
リビイルが不服そうにドルチェを見つめる。
レンが「ドルチェ様」と言うと彼女は笑った。
「ちゃんと知っておきたいの、留守の間は頼んだわよ?」
「……仕方ありませんね」
「ドルチェ様、くれぐれもお気をつけて下さい」
「ありがとう、レン、リビィ」
リビイルの頭を撫でてからレンと目を合わせたドルチェを見て、王太子リカルドはニヤリと笑う。
「やっぱりな……」
(この女はイケる、二人きりになれれば……)
「さ、行きましょ。リカルド卿」
「もちろんです!皇妃殿下!」
枯れかけた土地、アンドラは確かにもう水晶石は採れないだろう。けれど他の使い道がある筈だとドルチェは考えていた。
此処でこれからも過ごすであろう国民の様子を見ておきたかったのだ。その上で「どうやるか」考えようとしていた。
「国王と王女をきちんとお守りして」
(私達を守るだと?)
ドルチェの言葉に違和感を覚える国王だったが、その違和感の理由はすぐに理解することになる。
「では、ドルチェ様先ずは王室所有の劇場を貸し切りましょう」
「まあ!それは……嬉しいわ」
ふわりと香るドルチェの甘い香りにリカルドはくらりとした。
その所為で目を細めて笑ったドルチェの悪い笑顔には気付かないーー
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