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似てない二人
しおりを挟む公務というのは便利なもので、セント伯爵を筆頭とする貴族派の者達の協力で様々な所で問題を起こし、王太子である殿下は勿論王宮からの救いの手を遠ざけた。
勿論、王宮が問題処理に多忙となれば裏を担うサンスネッグや、フォンテーヌも自然と処理に追われるのだ。
突如活発化した、過激派の謀反者達や、貴族派の者達の動き、行き詰まった貿易に、流通、それぞれの家門の得意分野で問題を引き起こした。
上手くいけば、ローズモンドがグレーシスをシヴァから奪ったように、
メルリアを王太子妃に出来るのではないかという、扱いやすい彼女を持ち上げようとする貴族派たちの画策であった。
平常時より手薄になった王宮に駆り出されるのは少数精鋭のスカンダ家の者達であった。
混乱を防ぐ為、秘密裏に進められる中、学園内ではいつも通りの平和な日常が過ぎていた。
ただ、変わった事と言えば皆が念の為にいつもは殆どの時間を学園内の別室で待機させている侍従または護衛を連れている事だった。
「ユス、今日のお昼は一緒にできそうね。」
「そうね。あら…ふふ、せっかちな事。」
「あの!グレーシス様ッ!」
「メルリア嬢…どうされたのですか?」
「えっとずっと嫌な態度を取ってごめんなさい。仲直りしたくって、」
グレーシスは勿論貴族派の動きについてや、メルリアの作戦を把握している。その裏にミハイルが居ることを除いては。
皆がそれを伏せたのは、何も同情等ではなくその方が上手くいくからなのだ。
「ええ…私もそう出来たらいいと思っていたわ。」
「此処ではちょっと…場所をかえませませんか?」
「そうしましょう。ユス…御免なさい少し待っててくれる?」
ユスフリードはそう言って意味深な微笑みをしたグレーシスを見送った。
「ええ、いってらっしゃい。」
メルリアは部屋の前に着くと態とらしく声を上げた。
「あっ!忘れ物をしました…仲直りの贈り物を用意したんです…取ってきてもいいしょうか?先に部屋でお待ち下さい。」
グレーシスは和かに「わかったわ。」と返事をしてドアに手を掛けた。
(ふ、馬鹿ね。その中には私が用意した子息が居るわ。せいぜい楽しんでねグレーシス。)
部屋に入ったグレーシスを見届けて、メルリアは事が終わるまで時間潰しに、ほかの子息との逢瀬に向かった。
本来ならば、ここで予めミハイルに買収されている体格のいい子息はグレーシスを捕まえた所でミハイルと交代する算段なのだが。
グレーシスが部屋に入ると既に子息はユスフリードによって拘束されていた。
「遅すぎるわよ。」
「時間をかけて来いと言ったでしょう、ユスやりすぎよ。」
「いいのよ、さぁグレーシスコイツを連れて隣の部屋で待機よ。」
グレーシスにはここから先は伝えていなかった為に訳がわからないと顔に出した彼女にユスフリードは
「信じて。と、殿下からの伝言よ。」
と、軽い調子で伝えて男を引き摺るようにして隣の部屋へと移った。
「さ、ゲストを迎えに行くから待ってて。ついでにコイツを突き出してくるわ。」
「ユス、シヴァは…皆は、無事なの?」
「馬鹿ねぇ、こんな些細なイザコザで奴らの誰も死なないわよ。」
「….なら、いいわ。」
そして、ユスフリードが再度部屋に戻って来て暫くした後に響いたのは聞き覚えのあるよく通る声だった。
「うわぁあ!ッ!許してっ!!!!」
「え…ミハイル様?」
軽く驚いたように言ったグレーシスの頭を撫でながら、ユスフリードは心配そうな表情で伝える。
「あのね…あの男は腕の立つ貴女を拘束するまでが仕事。貴女を襲って既成事実を作る為に此処まで事を大きくしたのはミハイルよ。」
いくらなんでも彼がその様なことまでするとは考えもしなかったグレーシスは驚きと、そして…悲しんだ。
「何の為に….」
「ミハイルは貴女が居ないと公爵になれない。後は…子供じみた独占欲よ。」
「そう…彼はどうなるの?」
「さあ?家の事は家の者に処理してもらわないとね。」
「メルリア嬢は…」
「もう捕まってるわ、……ヒリス夫人にも手は打たれてある。」
「…ッ!?そう…。彼女はとても良くしてくれたわ。」
「優しさにも種類があるのよ。傷つかないで頂戴。」
「いいえ、大丈夫よ。」
そう気丈に振る舞ったグレーシスのいる隣の部屋では、ミハイルが顔面を蒼白にし震えながら地面に両膝と両手を着いていた。
そしてそんな彼の前に、ソファに座って長い脚を組んで座るのは…
「ち、父上……ッ、どうして此処に…。」
「そんな事はどうだっていいよ。ほんとに、ミハイル‥.お前は私には似なかったようだね。」
「そんな事はっ、もう少し時間を下されば上手くっ今から、っ」
「ミハイル…その話はこの間終わったはずだよ。」
「そうそう…ヒリスは我が領地の最端の島、ロドンドで療養する事になったんだ。お前がついて行ってやりなさい。」
「ロドンド!?それは…、そんな、あそこは…!!」
「田舎だがいい所だよ。迷惑をかける人も居ない、何…生活に不自由はさせないさ。近くの島国出身の使用人とそれなりの邸は用意してある。ヒリスを頼んだよ。」
「嫌です!!!父上!!!!あんな無人島に!あそこは罪人を送る施設を作る為の土地だって……!」
「なら、残念ながら合っている。だが愛する家族とは困ったものだ…お前達はあそこにいる限り今日の責任をそれ以上問われない。」
(そして…不本意ながら私も…)
ミカエルは今度の事態をきちんと把握し、先んじて国王に謁見していた。
なので処理は早く。駆り出されたシヴァ達はもう王都に向かっている。
ミカエルは責任を取ると食い下がったが、国王の下した命は違った。
「お前の命を奪う等、私にとっても罰になろう。お前達は私の戦友でもある。ただ…見逃す事は出来ん。夫人と子息には然るべき処置を当主として取りなさい。彼女達は二度と王都には立ち入れないが…。それ以外の処罰はお前に預けよう。」
「陛下!このような事態を引き起こしたのは私の責任でもあります!」
「なあに、グレーシスは何もそこまで望まんだろう。」
「よく知っているような口ぶりですが…」
「ああ。娘同様に可愛いさ。」
「……申し訳ありません。」
「ふ、もう過ぎた事だ。今はこの騒動を早急に収める事が優先。」
「御意。」
国王との会話をふと思い出して、ミカエルは溜息をついた。
こうして彼への不義理を背負い続ける事こそ、最大の罰だと感じた。
目の前の頭が空っぽなのか、訳の解らぬことを言い始めた息子に自らの無能さを感じた。
「父上!既成事実さえあればグレーシスはきっと…!」
「…馬鹿者が。」
ミカエルに頬を打たれたミハイルは地面に尻もちをついたまま、ひどく驚愕した。
「な、なんで。父上だってグレーシスを気に入って…!」
「だれがそんな犯罪者紛いの手法で手に入れろと言った!彼女がこの国にとってどんな存在なのか理解しているのか!それにお前が無闇矢鱈に手を出したあの令嬢とて、ただではすまんぞ。」
「なら、メルは僕の愛妾にすれば…」
「ああ、命があればもう好きにすればい。ロドンドにでも連れてけ。」
「…なっ!それは一体…!!」
「時期にわかる。お前も、あの娘も自分の浅はかさがな。」
シヴァ達が到着したのか騒がしくなって来た部屋の外に気付いたミハイルは自分がどうなるのかと不安で震えが止まらなかった。
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