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伯爵令嬢は邪魔したい
しおりを挟む実技の軽いテストが終わり順位と適正、簡単なアドバイスをした教師は「これにて解散とします」という言葉と同時に演習場から消えた。
それぞれ着替えを済ませ次の授業までの休憩時間を過ごしていると、クロヴィスがいる隣のクラスを挟んだ、テオドールとエミリーのクラスから悲鳴が聞こえた。
行ってみると人だかりが出来ており、その真ん中にはエミリーが床に座りこんで真っ青な顔で涙で濡らした空色の瞳を見開いていた。
セシールが後列の生徒に何があったのかと尋ねると、どうやらエミリー嬢の机の上にネズミの死骸が置いてあったらしい。
するとセシールの声に気付いたエミリーが憎々しげに指をさして怒鳴った。
「あなたの仕業でしょうっ!嫉妬に狂って等々アタマがおかしくなったのね!!!」
ゆっくりと瞬きをし、伏せ目がちに溜め息をつくセシールは美しく皆が目を離せないまま彼女の次の言葉を待つ。
弁明する理由はないが仕方なく。といったように濃紺の星空のような扇子を開き静かに話し出した。
「デボラ伯爵令嬢。どうしてそうお考えになったのかは分かりませんが大きな勘違いをしているようですね……」
「は」
「私があなたを貶める理由はありません。それが殿下のお考えであれば、愛妾や恋人を持つ事を許さないほど狭量ではありませんので」
セシールの言葉に立ち上がり声を上擦らせながら憤るエミリー。
「あ、あい、愛妾ですって!?汚らわしいわっ!セシール様は私を馬鹿にし見下しておられるのですねっ!!」
(この女馬鹿にしてるの?私が王妃になってアンタはここで終わりなのよ!)
等々セシールを悪者だと言わんばかりに泣き出してしまったエミリーに同情する声が所々に聞こえ始め、セシールはすっかり容疑者候補として巻き込まれていた。
「いったい何が起きた?」
聞き慣れた低めの落ち着いた声がして、皆が其方を振り返る
「クロ様……っ、セシール様が私の机にこのような事を!テオ様と親しくしているからとしっと……」
「いい。聞く必要は無い」
「でも、クロ様……私、怖くて……」
言わなくても分かってくれたのよね?と言わんばかりにクロヴィスを見つめるエミリー。
「デボラ伯爵令嬢。勿論セシール嬢が貴方の机にソレを置いたという証拠があるのでしょうね?」
「え"っ!?そ、それは……テオ様の事で嫉妬して……」
「それは証拠ではなく貴方がセシール嬢に対して後ろめたいことがあるというだけでは無いのか?」
「そんな事ありませんっ!!先程も私を愛妾などと汚らわしいものに例えて陥れようもしましたっ」
「かつてより王宮には公妾が居た。我が国では側妃を認めておらず世継ぎの問題のため公式に認められる愛妾が時に例外として存在する。汚らわしい等、その方達を侮辱し貶めているのは貴女の方ではないのか?」
「」前に立ち守るように話すクロヴィスにセシールは心が温かくなる。
(私を信じてくれる人がちゃんと居る……)
「何事だ?」
うっすらと汗ばみ、走ってきたのか息を切らしたテオドールが護衛を連れて教室の扉の前にいた。
「クロヴィス、なにがあった?」
エミリーと机を目視したあと、
彼の背に守られたセシールをチラりと見て強い眼差しでクロヴィスに聞いたくテオドール。
今だと言わんばかりに泣き始めたエミリーはテオドールに信じて欲しいと震え、声を上げて泣いた。
「っ……ひっく、テオ様ぁ、私の机の上にっ……私、てっきりテオ様と親しくしている事にっセシールさまがっ……と思って…っ」
「よい。説明はクロヴィスに聞こう」
「でもっ」
「以上だ。皆は必要以上に騒がず、速やかに教室へ戻ってくれ」
護衛に耳打ちをし、セシールを心配し集まったクロヴィスとマチルダを横目にテオ様、テオ様と泣き喚くエミリーに手を貸し、護衛に医務室に連れていくように命じた。
(クソッ!テオ様はなんでっこっちに来ないのよ!)
「テオ様っ……」
「ミリィ嬢、あとで見舞いにいこう。ひとまず医務室で休むといい」
エミリーに優しく微笑むテオドールに正気か?と言いたげにクロヴィスは視線を送るが、分かっているというような視線にとりあえず黙ってついていく事にした。
「セシール、大丈夫だった?」
テオドールが心配そうにセシールを覗き込み、そっと頷いたセシールに安堵する。
「何か知っているのか、テオ」
「ああ、これを知ったのは偶然なんだが、」
「誰がやったのかは分かっているんだ」
訳がわからんと言いたげにするクロヴィスと後から聞きつけてきたマチルダは首を傾げ顔を顰めた。
「では、どなたがこのような事を……?」
「セシール、君達がここに居たのは予想外だったのだが……事情は別室で話すよ」
授業を出来る状態ではないので許可を取り別室にてテオドールの話を聞くことになった。
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