公爵令嬢は破棄したい!

abang

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公爵令嬢と紅の魔女




王族には危険が多い為、着替えや食事などに使う特別な部屋が用意されている。


王家の血を引くノーフォード家であるセシールにも勿論用意されている。

セシールはそこにマチルダを招き入れ一緒に着替え、演習場に向かっていた。


「揃いましたね」


長めの緑みの黒髪を後ろでゆるく結び、モノクルを掛けたいかにも魔法使いといった風貌の彼のマントの下は案外動きやすそうなものを着ていた。


「揃いましたね。私はオースティア・グラシアンです。魔法科を選択された方々の教師となります」



静かだがよく通る声でその教師がゆっくりと説明を始める。


「まずは皆様の魔法の実力と戦闘においての身体能力を軽い実戦形式でテスト致します。怪我人が出た場合は速やかにそこの治癒班へ。負けだと認めた場合、戦闘不能になった場合のみ勝利とし、命の取り合いは反則とします。実力を知るテストなので引き分けでも結構です」



「では、二人一組のチームを組んで下さい」彼がそうが言うと、セシールとマチルダは自然に顔を見合わせ頷いた。


エミリーはギデオンと、ダグラスはテオドールと、クロヴィスはリシュと言う蜂蜜のような髪色と瞳の子柄で可愛らしい青年と組んだようだ。


テオドールのチームは問題なく勝利。

ダグラスは魔法にはあまり長けていないが持ち前の頭のよさでテオドールの背中をうまく守っている印象だった。

とはいえテオドールの魔法はセシールと並ぶ程なので結果は一瞬で決まった。


クロヴィスに関しては魔法もかなりの実力だが、彼はセシールを追って魔法科に入っただけなので実は剣の方が得意なのだ。

それに相反してリシュは身体能力はあるとは言えないが、遠近両方の魔法での戦闘に優れていてこの二人の結果もまた余裕で上位にめり込んだ。


エミリーとギデオンにあたっては、エミリーに魅了以外の魔法は無くギデオンはダグラスと共にテオドールの側近兼、護衛として同じ科に居るだけなので、魔法の才能が無いのと不慣れなのとで結果は下位で終わった。



テオドールやクロヴィスのときもかなりの盛り上がりであったが、本日の目玉だといわんばかりに人が集まったのはセシールとマチルダの模擬試合だった。

魔法を得意とする成績上位の女性徒二人組との手合わせということもあり注目を浴びていたのだ。


マチルダは紅の魔女、灼熱の魔女などと呼ばれており、鮮やかで燃えるような髪と瞳はかつて恐れられた魔女の末裔の証だと社交の場では距離を置かれていた。
 

すらりと高い身長にキレ長のつり目がちな目。白すぎるほど白い肌とゆるいカーブの赤髪にかきあげた無造作な前髪。
黒のローブがよく似合っている。


セシールだけは彼女と初めから仲が良かった。


マチルダの隣には色素の薄いプラチナブランドの髪にアメジストの瞳、透き通るような肌に儚げな雰囲気、小柄だがメリハリのあるスタイルを覆う真っ白のパンツと濃紺の上着の騎士服のセシールが並ぶ。


高い位置でひとつに纏めた髪がキラキラと揺れるたびに光ってあまりにも美しかった。


「月の女神と、灼熱の魔女だぞ?勝てる者はいないだろう」

「それにしても美しいな……」

「きっとセシール様が勝つわ!」

「きゃーお美しいわ~!!」


皆がこの手合わせに注目している。


「マチルダ、まず相手の様子をみましょう」

「セシール、あなた悪趣味よ?ふふっ」

「心外だわ」


(様子見だなんて、結局セシールには誰も勝てないっていうのに)



二人で呑気に作戦会議をしていると先手必勝と言わんばかりに周りがドーム状の炎で包まれそのまま二人を閉じ込めた。


「セシール様、マチルダ様。どうぞ降参をして下さい。私は火を得意としております。燃える炎は太陽の如く中の物を焼き尽くしますのでお怪我をなさらない内に早々に降参すべきかと……」


「私は結界魔法を得意としています。応用として技の内側から焼き付くすまで対人に対してのみ発動致しますので降参なさるまでそこから出られません」


礼儀正しく説明する女生徒達の余裕に皆がざわめく。


「こんな簡単に囚われてしまうなんて……!」


皆が心配する中、当の二人は炎の中からいつもの調子で堂々と何かを話しながら歩いて出てくるではないか。

「「なぜ!?」」


驚く対戦相手をよそに、セシールは真面目な顔で相談している。


「全員のほうが早くて良いのではないかしら?」

「そうね!じゃあ手っ取り早く首位狙っちゃおうかセシール。あなたやっぱり悪趣味よ」


笑顔で頷き合ったふたりに美しいと見惚れている内に、その場のほとんど全員の足元に黒い穴が現れる。

這い出た複数の黒い手に囚われてしまい抜け出せなくなってしまった。


セシールの魔法は正確なコントロールを広範囲で使える。
魔力の多いセシールの特権であり、その範囲は王国中を覆える程だった。


それを確認するとマチルダはふっと笑って振り返り、あろうことが炎の燃える大きなドームに軽く口付けて、紅茶のように軽く吸い込んでしまった。


世間話をしながら余裕で怖いことをやってのける二人に、闇の沼に沈む足元に畏怖しながら思っている事を皆が思わず叫ぶ。



「「やりすぎです!!」」



そんな中エミリーだけは恐怖で震えながら悔しそうに、憎々しげに二人を睨みつけていた。

セシールはちゃんと全員の魔法を解いて首位を取ると満足そうに微笑み「クロと殿下にはかけませんでしたわ」とマチルダに話しかけていて、テオドールはそんなセシールを眩しそうに見つめていた。

そして、クロヴィスがそんなテオドールとセシールを切なげに見ていたからだ。



(セシールがなんだっていうの。ほんとムカつくわ!テオ様だって渡さないんだから)




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