公爵令嬢は破棄したい!

abang

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公爵令嬢は憤慨している

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セシールが部屋を出ると、ダンテと目が合う。

逃げるように部屋を出た為、潤んだままの目と赤くなった頬のセシールがいつもの余裕のある表情を崩しているその姿を、ダンテは見てはいけないような気がして目を逸らして、セシールの肩にガウンを掛けた。

「セシール様、夜は冷えますので…」

セシールは弱ったように笑って、

「世話をかけるわね、わたくし少しだけ遠回りしたいのだけど、」

眉を下げてお願いするセシールにリアムに真っ直ぐに部屋までお連れするようにと釘を刺されていたダンテは、ゔっと言葉をつまらせたが、すぐに、手を差し出した。

「…少しだけ、お供しましょう。」


「ありがとう、少し頭を冷やしたいの。」


中庭の東屋のベンチに腰掛けて、夜空を見上げるセシールの横に立つダンテは月に照らされた彼女の美しさに息を呑んだ。

「貴方は…いえ、なんでもありません。」

彼女の隣に居るのが自分なら、もっと甘やかしてあげられるのに。
もしそうなら、セシール様はもっと穏やかな心でいてくれるだろうかとダンテはもどかしくなった。

彼女はもう少し弱さを見せても良いのではないかと言いかけて、やめた。

部屋まで送り届けた私を見送る、ほどけた笑顔が私を信頼してくれているのだと感じた。

「居てくれてありがとう、また明日。」

(この笑顔を知るのが私だけならいいのに。)


ーー翌日 AM 11:00

セシールは公務を終え、外出の支度をしていた。

「なるべく、動きやすいものを、後で市井を回るの」


「お嬢様、本日は馬車でしょう?」

「でも、日傘はお忘れなく、」

エイダとはセシールの髪を梳かしながら、

エイミーはドレスを、あれでもない、これでもないと悩みながらセシールに忙しく声をかけていた。

結局選ばれたのはのアイボリーのオフショルダーに首から胸元までが黒のレースのタートルになっている肩は露出されているが、レースの黒の手袋は肘の上まであり、全体的にシンプルな作りの上品なドレスであった。

髪は黒のレースのリボンと一緒に緩く編み込まれ、
うしろふわりとまとめられている。


「よし!これで完成です!」

「ありがとう、2人とも。」

テオドールとどんな顔で会おうかと悩んだが、いざ会うと向こうは、いつもと変わらぬ態度で接してくれていたので安心した。

「今日も美しいよ、セシール。」

手の甲に口付けて言うテオドールに、セシールは扇を開いて照れた顔を隠した。

「ありがとうございます。テオもとても素敵よ。」

今まで感じたこともない甘い雰囲気を出すテオドールに落ち着かないセシールであったが、目的地には直ぐに到着し、すぐに店の個室へ案内されたのだった。

「殿下、ご足労頂き感謝いたします。」

綺麗に礼をしたダグラスは、続けてセシールに頭を下げた。

「学園での無礼な態度、大変申し訳ありませんでした。
事情は追ってお話致しますが、私の不足でございます。」

セシールは急な謝罪で驚いたが、表情には出さずに、すぐに返事をした。

「謝罪を受け取りましょう。ですが、わたくしではなく他に謝罪するべき方が居るはずです。」

「セシール様…」


「過ちを認め、謝罪をする事にも勇気が必要となったでしょう。ありがとう、ダグラス様」

「…っ!寛大なご対応に感謝致します!」


リアムにエスコートされて席へ向かうセシールが、一瞬だけ、ほんの一瞬テオドールを見たのだ。


テオドールの時間は止まったような感覚であった。
自分がセシールに何ひとつ言葉で伝えていないこと、謝罪をしていないこと、セシールの目線はそれを非難するようにも見えたからである。


「遅くなって申し訳ない。」

クロヴィスが案内されて部屋に入ってきた。


「クロヴィス、貴方も呼ばれていたのですね。」

「ああ、構わないだろうか?」

「いや、居てもらった方がいい。」

「殿下?」

ダグラスの声でテオドールも我に返り、皆が席についた。


「まずは、皆様に詫びなければなりません。」



皆は、ダグラスの次の言葉を待ったが次に出てきた言葉は予想とは違うもので驚愕した。



「私は、エミリー嬢によって魅了にかかっておりました。そして、ギデオンもきっと同じですが、まだ解けておりません。」



テオドールは、心当たりがあるのか表情でこそ分からないものの、少し考えるような仕草をして、静聴した。


セシールは、表情を崩さぬまま話を促したが、クロヴィスは眉を顰てダグラスに問うた。




「待ってくれ、エミリー嬢の魔力は殆ど無いと言っても良い程、少ない。その上、彼女の魅了の魔法は国の審査により、他人に殆ど影響を与えなかったはずだが…」



「そうです。エミリー嬢の魔法は、皆が無いに等しいと思っておりましたので、油断をしてしまいました。

どのような仕掛けがあるのかは解りませんが、彼女の弱い魅了の魔法を効果的に使う術を、彼女は知ったのかもしれないと、共にエラサに来た、リシュが申しておりました。」



魅了に気づいたのも彼です、とダグラスは続けた。



クロヴィスは眉間にシワを寄せて、リシュがここに?と驚いた素振りを見せたが、テオドールの心境はそれどころではなかった。


セシールの表情からは何も読み取れなかったが、ダグラスの言葉により、それは隠しきれない怒りのこもったものに変わった。



「そして、エラサ到着後、彼女は平民の者を手にかけました。ですが証拠が無く、私とリシュもその場面をこの目で見たわけではありません。」



セシールは膝の上で手を強く握りしめ、小さく震えながら、平静を装ってダグラスに聞いた。



「そう、その者の名は、わかりますか?」



「確か…ニルダと言ったような…」



セシールは眉間皺を寄せ、涙を堪えた様子で目を閉じた。



「そう…ニルダが、領民の皆様とは全員ではありませんが、いい関係を築けていると思っております。ニルダはこの街の商人の子です。」


セシールは、憤慨していた。

そして、エラサの領民が彼女によって殺されたという事実が悲しかった。

(きっと、あなたを裁くわ。)
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