公爵令嬢は破棄したい!

abang

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公爵令嬢と幼馴染2

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その後は、クロヴィスは何事も無かったかのようにいつもの優しく甘い彼の雰囲気のままでセシールと世間話をして解散した。


ニヤニヤと顔を緩ませて、セシールを見つめるエイダとエイミーに咳払いを一つして誤魔化し、メーベル邸へと馬車を進めた。



結局上着は突き返され、セシールの肩にかかったままである。


メーベル邸へ着くと、執事に案内されご両親は不在なだったので、お兄様にご挨拶をしてマチルダの部屋へ案内してもらった。



「セシール、来てくれて嬉しいわ!」



「マチルダ!心配をかけてしまったようね、ありがとう…!!」



2人は強く抱擁しお互いの無事を喜んだ。




「セシール!驚いたのよ、魔力の底がほぼない事を知らなかったから、死んでしまったらどうしようかと…!!」



怒ったように、その燃える瞳を潤ませてセシールの背中を叩いた。


「痛い、っほんとうにありがとうマチルダ。」クスクス



セシールはマチルダの気持ちが嬉しくて、笑顔が溢れてしまい止められ無かった。





「もう、笑っちゃって…!そういえば…その紋章は、」




セシールはギクリと肩を跳ねさせて、固まってしまい小さな声でマチルダに困ったように言った。




「クロに会って…その、これは薄着だからと貸してくれたのだけど…幼い頃の事を母から聞いてその話を…そしたら、」




マチルダは物知り顔でなるほどねぇ~と笑って、続きを促す。





「そのっ、クロったら気持ちは昔と同じだと、愛していると言ったの」




顔を真っ赤にして言うセシールを見て、今までマケールやノーフォードの者達が過保護な事もあり、無知で純粋であるセシールを知っているマチルダは、うんうんと首を縦に振りセシールの頭を撫でた。


「気付いて居ないのは貴女だけよ、クロがあんなに優しいのは貴方にだけだし、幼い頃は殆ど許嫁のようなものだと他の家には思われていたそうよ?」




セシールはそんな事は全く聞かされておらず、元々その話を聞いて、セシールとクロヴィスが婚約してしまう前に、我先にと権力欲しさにまだ5歳に満たないセシールへ縁談の話が国中から絶えなかったという。



一つは、権力の偏りでの争いを避ける為に、もう一つは王家の力を王族であるノーフォードと手を組むことでより確固たるものとする為に、セシールとテオドールの婚約が5歳という早さで、結ばれたのだというものそのせいだった。




「まぁ、私もお父様から聞いた話なんだけど。不思議だったのよ、子供の頃を少しだけど覚えているから私、」




大きな背もたれの回る椅子に腰掛けながら、マチルダは真っ赤なふわふわのソファに座ったセシールに言った。




「でもこうなってしまったのだし、ゆっくり恋を知るのもいいんじゃない?アルベーリアでは恋愛結婚が主流なんだし。」




侍女が運んできてくれた紅茶を優雅に飲みながら、微笑んだ。




「マチルダは、恋をしているの?」

 

「…っゴホッ!な、なにを言うのよ急に!!」



「その反応だと、想い人がいるのね?」クスクス




「そんなんじゃ無いわ、ただしつこいのが居るの。でも意外と嫌じゃないわ。……その、話が合うからなだけよ?」




勘違いしないでよ。って不貞腐れるマチルダにセシールはポッと頬を染め、瞳をキラキラさせた。



「とても、いい人なのね!マチルダは婚約者をずっと作らなかったけどやっとね!いつか、会ってみたいわ…!」



「そんな、気が早いわよ…。貴女も知っている人よ?」


「あら、どなた??」



「リシュ様よ…。」



「ええっ!!彼は宰相様の御子息だと言うし、エラサでもとても活躍してくれていたわ!問題なく婚約できるのでは??」




嬉しそうに言うセシールからマチルダは目を逸らして、そっと言った。




「彼、見た目は可愛いのだけれど、積極的すぎてつい逃げてしまうのよ、」




「積極的に話しかけるのは良い事だわ!素敵ね!」




キラキラとマチルダを見るセシールにそう言う意味の積極的ではないと言えないマチルダであった。




ーーコンコンッ


2人がドアの方を見ると、ドアを開けてからノックしているマチルダと同じ燃えるような赤色の髪をした少し癖毛のキツめだが端正な顔立ちのマチルダの兄が立っていた。




「可愛い妹達の邪魔をしたく無かったんだが…最近物好きな子がよく訪ねて来るんだ、セシールとも友達らしいね…マチルダお客様だよ。」




「お義兄様、ありがとうございます。…失礼致します、お二方。お邪魔じゃなければ少しだけご一緒しても?どうやら、僕は積極的なもので。」ニコリ




セシールは両手で口元を覆い「まぁ!」と言ったがマチルダは顔を赤くしてリシュの頬をつねっていた。




「リシュ!盗み聞きしてたのね?毎度、来るなら言いなさいよ!」



「マチルダ、君は今日も美しいね!」



怒るマチルダを物ともせず、マチルダの美しい紅い髪をひと束とり、口付ける。



「ちょっと!何するの!!」



マチルダの兄であるマリウスはやれやれといったように、リシュとマチルダのやりとりを真っ赤な顔で、ぼーっと見ているセシールに声をかけて部屋を出る。




「父も母もかなり乗り気でね、マチルダも満更でもないように見えるんだが…まぁ、見守ってやってくれ、」



「ちょっと、お兄様!セシールに何を言うの、まずは正式な縁談を頂かないと話にならないわっ」




「だめだよ、マチルダ。周りから固めるんじゃなくて、僕はまずマチルダに求めてほしいんだ。君の全てが欲しい。」



ただの家同士の決めた婚約だというのは嫌だからね、とリシュがマチルダとそう変わらない身長だが、照れて俯くマチルダの額に軽くキスをした。



「あ、あいしてるわよ…っ!!!」




マチルダは諦めたかのように大きな声でリシュに言った。
彼は時が止まったかのように動かななくなり、マチルダは恥ずかしいのと不安でその紅い瞳を揺らす。


「マチルダ…エラサに行ったときからずっと、ずっと君に愛してると言い続けてやっとだ…君が僕を愛してると…?」


確認するように言ったリシュに、マチルダが投げやりに頷くとリシュはセシールの目を気にする事もなく、マチルダを引き寄せて思い切り口付けをした。



「ちょっと、だめよ!セシールが見てるのに…っ」




「あ、あの…!とても嬉しいわ!っおめでとう!」


真っ赤な顔をして扇で顔の殆どを隠したまま、言うセシールにリシュは悪びれもなく「ありがとうございます」と嬉しそうに言ってマチルダに深く口付けた。



(キスってあんなに…初めて見たわ、きっと見てはいけないものよね、お邪魔だし早く出ないとっ)



キスですっかり抜けた力でリシュをガシガシと叩きながら抵抗し、セシールに謝るマチルダに、


わたくしなら大丈夫よっ、でも、そ…そろそろリアムが迎えにくるので、お暇するわ、マチルダにリシュ様、本当におめでとうっ!」


見送りは要らないわよ。といって侍女達とメーベル家の筆頭執事に謝られながら案内されセシールは逃げ帰るように邸を出た。


「リシュ、貴方!ほんとうにいい加減にしなさいよっ…んっ」



「抑えられない言い訳なんだけど…セシール様には丁度いい刺激になったんじゃない?」ニコリ



「やだっ、リシュ…っ」



キスの嵐を受けながらマチルダはリシュの言葉の意味を考えていた。


(セシールは本当に知らなすぎるのよ、けしかけたって無駄よ…)




(クロヴィスの上着だったよね…)


リシュはセシールの上着を思い出してセシールの相手がクロヴィスならばなんて面白いのだろうと内心ニヤリとした。

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