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二十、何処で間違えたのかしら

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「少し考えさせて」と言ったアランの言葉の意味が分からなかった。


(何を考えると言うの?)


その日から皆が変わった。

まるで私だけの為に出来た世界かのように、選択肢を間違えても勝手に上手く行っていたのに急にそれが上手くいかなくなった。


ユウリは怯えるような目で私を見るし、ちょっと強引に誘っただけだし初心なユウリが可愛くて激しくしちゃっただけなのに。


イスキエルはゲームのシナリオどおり、アランの感情に左右され易いから戸惑っているようで盲目的に私に心酔していたあの騎士感が優越だったのに。


リズは最近、家門を継ぐ勉強で大変なのか会っていないしレアもまた何処か考え込んでいるような仕草が増えた。



一番はアランだ。

イヴァンが落ちない今、アランが婚約者として一番有力株なのに何か悩んでいるような、尻込みしたような態度は嫌な予感がする。



(強制力ってそもそもシナリオが終わる卒業式までなの?)



この世界にいる限り、私は神に愛されていると思っていたがやっぱり登場キャラとはいえこの世界では生きているからか中々思う通りに行かない。



そもそもはシシーリアがシナリオ通りに動かないからだ。

彼女も転生者なのか?

でも、そんな素振りもなく上手く陥れられてくれた。



「よし、シシーリアに会いに行ってみるしかないわね」


大抵彼女がどの時間どこにいるかは公式設定で知ってる。


イヴァンが居ないだろう時間を狙って会いに行くことにした。



「シシーリア様っ」

「アイラ……」

「私、仲直りしに来たんですっ」


見つけたシシーリアを引き止めたのは階段だった。


「仲直りも何も、仲違いしていな……ッ!?」


(この際誰もメインキャラが目撃していなくても噂でいい、イベントを起こさなきゃ!)



「キャアぁぁぁぁ!!!!」


(あれ、痛く無い?)


「アイラ、怪我は?」

「アラン……っ!」


「シシー!」

「言っておくけど、勝手に堕ちたわよ」

「……分かってる、見てた」



「!!」

「なら、言い掛かりはやめてね」



「すまなかった、シシー……俺は君を誤解して……」

「あ、アランっ!私が勝手に転んだの、シシーリア様の言葉に驚いて!」

「シシーの言葉?」

「イヴァンは私のものだって!皆復讐してやるって!」



軽く目を見開いたアランにシメたと思った。

けれど、彼は浅くため息を吐くと悲しげに言った。


「アイラ……もう、やめよう」


「は……」


「もしそうだとすれば、逆だ。シシーがイヴァンのものになったんだ。それほどの人だよ彼は……愛する者の為なら犠牲を厭わないのもきっと彼だ」



「そ、そんな事……っ確かに言ったわ!」



「何を信じるかは貴方次第よ、いつもそうしてきたでしょう」

「シシー……俺は」

「アラン、信じて?シシーリア様は危険なの、もう変わったのよ」





アランの首にぎゅっと腕を回したアイラ、

付き合っていられないと、背を向けて階段を登るシシーリア。



「アイラ、すまない。ずっと見てたんだ初めから」

「……なら、分かるでしょ?」

「俺の所からだと君はシシーリアの三段も下から落ちた、触れる事も小さな声で耳打つこともできない距離だ」

「そんなの聞こえなかっただけ……」

「いや、ありえない。そう遠くないずっとこの下にいたんだ」


「う、嘘よ…‥.アランどうしたの?私の味方でしょう?」




「君は何がしたいんだ?何故敵と味方に分けたがる?」

「……え」

「ずっと幸せだった前の俺と、今君を好きな俺が居る」


「感情に素直になってよ、アラン」


「だとすれば」


「……」



「シシーリア!!!」


「……また、足止めですか?」


「やっぱり、君が好きだ!!!」



「はぁ!?」


理解できなかった。何故アランがこのタイミングでシシーリアへの想いを取り戻すのか、


「……もう終わった話よ」

「それでも俺の中で、どうしても君が消えない……」

「アランっ、やめて!」

「……アイラを好きな筈なのに、何故か君を愛してる俺が違うと訴えかけて来るんだ。ただ君より劣るのが情けなくて怖かった。でも愛してた」



「やめましょう、アラン」


「愛してるんだ、シシー」



アイラとアランの距離はいつのまにかすっかりと離れていて、アイラは地団駄を踏んで「何でよ!!アランの嘘つき!!」と叫んだ。


「愛してたわ、アラン」

「過去形……なんだな」

「あの時の私は、貴方に一番信じて欲しかった」

「……っ!シシー」

「でも、もう過去よ。誰も恨んで無いわ」

「イヴァンが好きなのか?」

「そうね……」


「シシーリア!アンタってほんとうに邪魔ッ!!」



アイラの放った光魔法がシシーリアに向かうとアランは驚いて声を荒げた。

流石に魔法の才能を見出されただけあってアランは間に合わない。



その瞬間ゾクリとする雰囲気がして、その根源が強すぎるシシーリアの力だと気付くと見慣れた表情をしたシシーリア。


その表情は彼女の顔で知ったものではなく、イヴァンがよくする顔でもう彼女達はこんなにも深く繋がっているのかと考えて落胆した。



「や、やめてよ!離して!!!」

白く光る竜のようなものがアイラの胴体に巻き付いて締め上げていく。


持ち上げられた身体は他の支えを失ってただ浮遊感と痛みに顔を歪める。


シシーリアに握り潰されたアイラの攻撃を見てアランもアイラも驚愕した。



「これくらいで騒いでみっともないわね」

「ほ、ほらアラン!シシーリア様はやっぱり……!」

「シシー、やめるんだ……」

「事情は知らないけれど、国家転覆でも計っているの?」

「そんな訳無いじゃないっ!!降ろしてよ!!」

「何をしたいか分からないけれど、私の周りを掻き回さないでこれ以上」


「シシー……」

「ーっ!アンタの周りじゃ無いわよ!私の世界よ!!!」




「それって強制力ってやつと関係あるの?」


「「イヴァン」」

「イヴァン様っ!?助けて下さい!!シシーリア様が暴走してっ!」



「……暴走?それは大変だね」





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