【R18】同僚マネージャーとヒミツの恋、担当アイドルにバレてはいけない……

新月蕾

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第33話 アスリートバトル

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 本日、水曜日。シュンくんは大学の入学式および説明会。
 そしてリクくんエイジくんはジャージ姿で都外にいた。

 今日の現場には男性芸能人がひしめき合っていた。
 新人~中堅どころのアイドル・俳優・モデル・お笑い芸人……その中から体力自慢が集まっている。

 広い野原に、陸上競技のセットが組まれている。

「今日の収録はスポーツバラエティー『芸能界アスリートバトルTOKYO』の予選です。ここで好成績を残せば本戦に残れます」
「ここ東京じゃない……」
「世の中のだいたいはそんなもんです」

 瀬川さんは苦笑した。

「カメラがめっちゃあるので、僕らは写り込まないように遠くから見学ですね」
「はい」

 スタッフさんのさらに後方に、他の事務所のスタッフさんらしき人たちと並ぶ。
 こうして見るとこの世界には芸能人もそのマネージャーもたくさんいるのだなと思い知る。

「……あの中を、勝ち抜かなきゃ行けないんですね……あ、いや番組もですけど……芸能人として」
「そうですね。険しい戦いです。でも、あいつらならやれると、僕は信じてます」

 瀬川さんはうなずいた。

「ちなみに今日の本命はエイジです。リクにはちょっと荷が重たいですね、身長もあんまりないし」
「でもでも、そこが可愛いって評判でした!」

 私はここ数日、暇さえあれば『トライアングルアルファ』をエゴサしている。
 アンチの意見を見るのは心苦しくなるけど、そういうのも勉強の一つだと思う。
 ……前職でも仕事の一環で自社が扱っている商品のエゴサとかしていたけど、物に向けられる暴言と人に向けられる暴言だと圧倒的に人に向けられる暴言の方がえげつないというか心に来る……。

「はい、リクはそこがいいんです」

 瀬川さんは自信たっぷりにうなずいた。
 私に嬉しそうな顔を向けた。

「エイジは元々ダンサーをやっていました。子供の頃からです。ミュージシャンのバックダンサーとかをやってたところを三角社長が声をかけて引き抜いてきたんです。というわけで運動神経は抜群です。バク転とかもお手の物」
「なるほど……」

 確かに見せてもらったらVでも、テレビの収録でも一番アクロバットな動きをしていたのはシュンくんだった。

「あ、ほら、始まりますよ。僕らエキストラも兼ねているので、拍手とか歓声とか出来る限り協力しましょう」
「はい!」

 司会者のお笑い芸人コンビが方々に頭を下げながら、カメラの前に入ってくる。
 収録が、始まる。



『芸能界アスリートバトルTOKYO』の予選は陸上競技で行われる。ハードル走や砲丸投げに走り幅跳び、体育の授業で行ったことのある体力測定に芸能人が挑む。
 その点数を数値化し、上位者が後日、巨大アスレチックなどよりバラエティー性の高い競技に挑むことになる。
 つまるところ、今日の収録はぶっちゃけ退屈である。
 学校の一学年より多い人数が体力測定をやるのを数時間かけて見守るだけなのだから。

 それでも、リクくんとエイジくんの出番にはさすがに手に汗握る。
 気分は運動会に来ている親だろうか。

「きゃー!」

 2人が競技場に現れると黄色い声が飛んだ。
 女の子の集団が出来ていた。

「おー見てください、ファンの子ですね」
「人気だねえ、トライアングルアルファ」
「トライアングルって1人足りないけどね」
「最後の1人は今日は大学の入学式だそうで」
「へー」

 司会の二人が軽妙なやり取りでトライアングルアルファを紹介してくれる。

「……あれファンの子、ですか?」
「エキストラですね」

 さらりと瀬川さんが答える。まあ、そういうこともあるのだろう。

「あのトーク使われますかね?」
「本戦に進めればあるいは、ですね」

 何人もの芸能人にコメントしていく司会の人も大変である。それも使われるか分からない。

 ふたりはハードル走を行った。エイジくんは悠々とゴールしたが、リクくんは何個か倒して悔しそうな顔をしていた。

 定期的にスタッフさんから「水分補給お願いしまーす!」の声が飛ぶ。
 4月も初め、まだ涼しいと油断はできない何しろ屋外だ。しかも快晴。瀬川さんに言われて日焼け止めは塗ってきたけど、正直効果が怪しく思えるほどのピーカンの空だ。
 私達は素直にスポーツドリンクを飲む。
 瀬川さんはメガネを外して鼻の頭の汗を拭いた。
 用意されていたスポーツドリンクは製造会社がスポンサーなのだろう『カラダにウォーター』だった。

「カラダにウォーター!」

 エイジくんが嬉しそうにカラダにウォーターを飲み干す。
 その飲みっぷりにカメラさんが寄る。
 そういえば、こないだのライブ前にも飲んでいたっけ。

「エイジはスポドリ、カラダにウォーターしか飲まないんですよね……他社のCMとか来たらどうするか社長と今から頭を悩ませているところです」
「いろいろあるんですね……」
「というわけで、カラダにウォーターのCMを取りたいですね」

 なかなかに野心的な瀬川さん、いや三角アイドル事務所だった。
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