『魔王』へ嫁入り~魔王の子供を産むために王妃になりました~【完結】

新月蕾

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第48話 それは思いの外にぎやかに

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 昼食はそのままユリウスの寝室でとることになった。
 昨夜通った扉を、今回はきちんと開け閉めしてユリウスの寝室に入ると、ユリウスのベッドの横には豪勢な食事が並んでいた。

「ははは、ミラベル、見てくれ、この肉肉肉!」

 ユリウスの言うとおり、昼食は肉料理がこれでもかと盛り付けられていた。

「うふふ……」

 私達は笑い合う元気を取り戻していた。

「キマイラでもあるまいし、こんなに肉は食えん」

 そう言いながらもユリウスはガツガツと昼食をかき込んでいた。
 ニンフが嬉しそうに給仕をしてくれる。

「お元気そうで何よりです」

「ああ、体はわりともう元気だ。痛みは残っているが……まあ、大丈夫。あとでヴァンパイアに礼を……君にも、か」

 ユリウスは食事の手を止め、私に向かい合った。

「一晩中、いっしょにいてくれてありがとう、ミラベル」

「いえ、いいえ」

 私は頭を横に振ることしかできなかった。
 そんな私にユリウスはどこか気まずそうな顔をした。

「……それから、謝らなくてはいけないことが……というか、なんだ、頼みたいことがあるのだが……」

「なんなりと」

「これなんだが……」

 ユリウスは布を引っ張り出してきた。
 見覚えがある。昨夜、ユリウスの口に押し込んだ布のようだった。

「君にもらったハンカチーフ……噛み締めてボロボロになってしまった」

「あ、それ、あれだったのですか」

 無我夢中で気がついていなかった。

「……せっかく作ってくれたのに、すまない。その、君さえ良ければ、あの、もう一回……新しいのを作ってくれるだろうか……」

「はい、もちろんですとも。もう一回と言わず、何枚でも用意いたします」

「……そうか」

 ユリウスは心底ほっとした顔で胸をなで下ろした。
 そのままボロボロのハンカチーフを大事そうに枕の下にしまい込んだ。

「……急いで新しいのを作りますから、それはもう捨ててはどうですか?」

「まさか。初めての君からの贈り物だ。ハンカチーフとして使い物にならなくとも、捨てるなんてとんでもない」

「まあ……」

 私は何だか少し笑ってしまった。

 そんな私の手を、空になった手でユリウスは取り上げた。

「……爪の痕」

「お気になさらず……」

「……そういえば、俺の背中の君からのものも消えてしまったか」

「っ……!」

 顔が赤くなる。
 行為中につけてしまった傷痕のことを、こんな明るい時間に話題にされると、それもずいぶんと名残惜しそうにされると、どうしていいかわからない。

「……またつけてくれ」

「しばらくは、駄目ですよ」

「……そう、だな」

 ユリウスは心の底から残念そうな顔をした。
 私は呆れるべきか、心配するべきか、笑うべきか、わからなかった。
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