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第75話 お茶会
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お茶会の日はあっという間に訪れた。
「それじゃあ、行って参ります」
「うん、綺麗だな、ミラベル」
「ありがとうございます」
今日のドレスは胸元を覆い隠した襟。
あまり膨らみすぎていない袖とスカート。これは移動が長いからだ。
帽子をちょこんと被っている。
「紫にしたんだな、ドレス」
「はい」
今日のドレスは一見、黒に見えるが少し紫色がかっている。
私的なお茶会くらいの気軽な場では黒から少しずらすのが基本なのだという。
「……君はいろいろな色が似合うだろう。そうだ、普段着なら黒じゃなくてもいいんじゃないか」
「あら」
突然そう言われて困惑してしまう。
「どうされましたの、急に」
「いや……うん、君は人間界ではあまりおしゃれをする余裕がなかったんだろう?」
魔王の父が渡してくれた宝石があったから、金銭の余裕はあった。
ただ私達におしゃれな服を売ってくれる店はなかったし、私が着飾ったところで何にもならなかった。
「だから……別に魔界の風習に囚われずに、いろんな服を着てみてほしい。そう思ったんだ」
「……ありがとう、ユリウス」
私は微笑んだ。
「でも、黒い服も気に入ってるわ、私は」
「……じゃあ、俺が見てみたいと言ったら?」
「……そう言われたら、着ないわけにはいかないけど……」
「やった」
ユリウスは嬉しそうにはにかんだ。
「あのー、そろそろよろしいですか?」
ドラキュラがしびれを切らしたように私達に声をかける。
「ああ、すまない。いってらっしゃい」
「はい」
私とドラキュラ、そしてお付きのニンフとシルフは、魔王城の地下まで降りて四頭立ての馬車に乗った。
魔王城の地下は魔族の町に通じているのだという。
周囲には護衛としてオークという魔族が付き添っている。
そして轢いてくれる馬には羽根が生えていた。
「こちらペガサスです」
ドラキュラが紹介してくれる。
「羽根が生えているけれど、空も飛べるの?」
「その気になれば。でも、ヴァンパイア家は近場ですから、陸路を行きます」
外を眺める。
黒で統一された家々が見える。
こうして見ると、あまり人里と変わりなく見える。
「……ああ、私、庭以外で外にちゃんと出るのって初めてだわ」
「ああ、そういえば」
ドラキュラは苦笑した。
「庭に出る以外じゃ、誘拐って……お妃様も災難ですね」
「ええ、まったく……。そういえばあの後、あの魔王族……アーダーベルトはどうなったの?」
「ベヒモスを取り上げられただけでも結構な経済的制裁になっていますが、他にも所領の一部を取り上げ、罰金を科されています。それと同時にアーダーベルト個人は蟄居処分。現在は妹が当主代行をしています。妹はアーダーベルトの妹なのが嘘みたいに優等生ないい子なので、このまま当主やってくれればいいのに、と他の魔族からも評判です。うちのカーミラにも爪の垢を煎じて飲ませたいくらいですよ」
「へえ……」
なかなかの才女のようだ。
「次のパーティーには彼女が呼ばれるはずです。お妃様の従姉になりますね」
「……仲良くできるかしら」
思わずそう呟いていた。
自分が今更親戚というものに憧憬を覚える日が来るとは思わなかった。
「ははは、遠くの従姉より近くのヴァンパイアですよ、お妃様……。今日のこと何か腹案などあるのですか?」
「ないわ。体当たりの丸裸よ」
「意外と勇ましいですねえ……ある意味、お似合いか」
ドラキュラが誰を思い浮かべているのかよくわかる。
「……そうだったら、嬉しいかもね」
私は素直にそう言っていた。
「それじゃあ、行って参ります」
「うん、綺麗だな、ミラベル」
「ありがとうございます」
今日のドレスは胸元を覆い隠した襟。
あまり膨らみすぎていない袖とスカート。これは移動が長いからだ。
帽子をちょこんと被っている。
「紫にしたんだな、ドレス」
「はい」
今日のドレスは一見、黒に見えるが少し紫色がかっている。
私的なお茶会くらいの気軽な場では黒から少しずらすのが基本なのだという。
「……君はいろいろな色が似合うだろう。そうだ、普段着なら黒じゃなくてもいいんじゃないか」
「あら」
突然そう言われて困惑してしまう。
「どうされましたの、急に」
「いや……うん、君は人間界ではあまりおしゃれをする余裕がなかったんだろう?」
魔王の父が渡してくれた宝石があったから、金銭の余裕はあった。
ただ私達におしゃれな服を売ってくれる店はなかったし、私が着飾ったところで何にもならなかった。
「だから……別に魔界の風習に囚われずに、いろんな服を着てみてほしい。そう思ったんだ」
「……ありがとう、ユリウス」
私は微笑んだ。
「でも、黒い服も気に入ってるわ、私は」
「……じゃあ、俺が見てみたいと言ったら?」
「……そう言われたら、着ないわけにはいかないけど……」
「やった」
ユリウスは嬉しそうにはにかんだ。
「あのー、そろそろよろしいですか?」
ドラキュラがしびれを切らしたように私達に声をかける。
「ああ、すまない。いってらっしゃい」
「はい」
私とドラキュラ、そしてお付きのニンフとシルフは、魔王城の地下まで降りて四頭立ての馬車に乗った。
魔王城の地下は魔族の町に通じているのだという。
周囲には護衛としてオークという魔族が付き添っている。
そして轢いてくれる馬には羽根が生えていた。
「こちらペガサスです」
ドラキュラが紹介してくれる。
「羽根が生えているけれど、空も飛べるの?」
「その気になれば。でも、ヴァンパイア家は近場ですから、陸路を行きます」
外を眺める。
黒で統一された家々が見える。
こうして見ると、あまり人里と変わりなく見える。
「……ああ、私、庭以外で外にちゃんと出るのって初めてだわ」
「ああ、そういえば」
ドラキュラは苦笑した。
「庭に出る以外じゃ、誘拐って……お妃様も災難ですね」
「ええ、まったく……。そういえばあの後、あの魔王族……アーダーベルトはどうなったの?」
「ベヒモスを取り上げられただけでも結構な経済的制裁になっていますが、他にも所領の一部を取り上げ、罰金を科されています。それと同時にアーダーベルト個人は蟄居処分。現在は妹が当主代行をしています。妹はアーダーベルトの妹なのが嘘みたいに優等生ないい子なので、このまま当主やってくれればいいのに、と他の魔族からも評判です。うちのカーミラにも爪の垢を煎じて飲ませたいくらいですよ」
「へえ……」
なかなかの才女のようだ。
「次のパーティーには彼女が呼ばれるはずです。お妃様の従姉になりますね」
「……仲良くできるかしら」
思わずそう呟いていた。
自分が今更親戚というものに憧憬を覚える日が来るとは思わなかった。
「ははは、遠くの従姉より近くのヴァンパイアですよ、お妃様……。今日のこと何か腹案などあるのですか?」
「ないわ。体当たりの丸裸よ」
「意外と勇ましいですねえ……ある意味、お似合いか」
ドラキュラが誰を思い浮かべているのかよくわかる。
「……そうだったら、嬉しいかもね」
私は素直にそう言っていた。
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