そして503号室だけになった

夜乃 凛

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第三章 白き城の調べ

どうして言わないのかな?

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 ホテル・ホワイトホテル。その内部の施設、レストランで、加羅と刀利と桜は、死体を発見したという証言者と相対する形となった。コンビニ店員の伊藤と、ブラックホテルの従業員の、西山の二名である。
 伊藤と西山は、四角いテーブルの横に設置された二台の椅子に、恐縮気味に座っていた。テーブルを挟んで、加羅たちが座っている。
 伊藤の服装は、コンビニの制服のままであった。着替える余裕など無かったのである。そして、若干、内気な印象を漂わせていた。加羅たちと、あまり目を合わせようとしない。
 それに対して、従業員の西山は、恐縮していることはしているが、どこか、場慣れしたような雰囲気を醸し出していた。ホテルの従業員なのだから、相当な数の人間と会ってきたということだろう。
 加羅が切り出した。

「伊藤さんと、西山さんですね。まず……伊藤さんにお尋ねしたいのですが、何故、あなたが宿泊していない施設である、ホワイトホテルにいたんですか?」

「その質問、警察の方に何度もされたんで、疲れちゃいましたよ。確かに、怪しまれてもしょうがないとは思います。でも、本当に、たまたま偶然だったんです。自販機が使いたかったんですよ。飲み物くらい、それこそコンビニの店員だから、いつでも買えるだろうって、何度も言われたんです。でも、ホワイトホテルのコーラは美味いんです。そのコーラを自販機で売っているから、わざわざホワイトホテルまで行ったんです。そしたら、開いている扉があって……」

 伊藤は言葉を切った。縮こまっている。

「コーラ、ですか。わかりました。しかし、自販機なら、5階以外のフロアでも、置いてあるのでは?それこそ、1階とか。2階でもいい。わざわざ5階まで行く意味はありますか?」

「1階には置いていないんですよ。僕の好きなコーラ。確かに、2階には置いてあります。ただ僕は、エレベーターに入ったら、もう既に5階のボタンが点灯していたんです。ボタンを押すのが面倒くさかった、というよりも、何も考えずにエレベーターに任せました。なんとなくです。流れるがまま、というか……ああ、あそこで2階のボタンを押していればよかったのかなぁ……」

 伊藤はため息をついた。不幸を背負いこんだような表情である。
 加羅は真剣な、刀利は無表情、桜は興味なさそに聞いていた。その面子が話す。桜から。

「どう思う、加羅?刀利君?都合が良すぎると思うのだけれど」

「都合が良い、悪いの問題ではなく、実際に正当性が通っているのかが重要だ。この証言、矛盾しているところは無い。確かに、確率論的に導き出される解を好む人間には、この話は嘘のように感じられるかもしれないが、矛盾の話でいけば、矛盾はしていない。とにかく、一つ確定事項が出来た。伊藤さんの通ったルートは、エレベーターだったということ。それだけでも一歩前進だ」

「それと、もう一つ、ですよね?」

 刀利が言った。煌めく蒼の瞳が、冷酷な、無慈悲なような眼差しを、伊藤に向けていた。そして告げる。

「そのエレベーター、誰が一緒に乗っていたんですか?」
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