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研究所
2話 人体実験
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目が覚めると、自分は生きていた。それを知ると同時に、これは現実なんだと理解した。
またガラスの箱に閉じ込められていて、なぜか頭部の傷は治っている。ズキズキと痛むが、傷跡は綺麗さっぱり消えていた。
あの化け物を思い返すと、本当に転生したんだと思った。見たこともない未知の生物、非現実的な戦闘の強制、あの強烈な痛みが、麗央のいた日本ではないことが分かる。
「本当に、転生したんだ……」
その事実を理解しても、この状況は何も変わらない。体を起こして、ガラスの外を覗いたが、到底脱出なんてできそうになかった。
自分はこれからどうなるの?
知らない所に突き放された感覚が、これから想像できない体験をさせられそうでゾッとする。もしかしたら、またあの化け物の相手をさせられるかもしれない。早くこんな場所から抜け出したいと思った。
ジリリリリリン!
「実験体一から百までA号室、百一から二百までB号室、二百一から三百まではC号室へ行けー!」
すると、突然大きなベルの音が響き、白衣をきた男性が声を上げた。それとほぼ同時に、次々と各ガラスの壁の鍵が開き、外に出られるようになる。中にいた子供は、一斉に外へ出て廊下を歩いた。
麗央は何のことか分からずに、周りの真似をして廊下を進む。誰も一言も喋らないで、ただ前向いてを歩いていた。
どこに行くのだろう、何が始まるんだろう、と思いながら自分の前の子をついていく。
奥へ歩いていくうちに、途中で分かれ道があった。それぞれがその分かれ道を曲がって行って、麗央は右か左かどっちに行くかまごついた。
直感的な判断で右に曲がると、その先には部屋があり、皆がその室内へ入っていく。麗央も中に入ると、そこには手術台のような物が多く並べられ、全員が横になっていた。
「おい! お前はここじゃないだろ!」
頭上から怒鳴り声が聞こえて、麗央は肩をビクッと震わせた。声の元を見上げると、真っ白な医療用防護服を身にまとい、保護眼鏡を付けた人が立っている。眼鏡の奥からは、気の立った目つきで睨みつける青い瞳があった。
バシン!
不意に、麗央は平手打ちを受けた。何の前触れもなく、いきなり叩かれたことに呆然とする。そして、そんな彼を差し置いて、防護服を着た人物は何度も何度も殴りかかった。腹を蹴って顔面を殴り、麗央が倒れると首を乱暴に掴む。何発もの蹴りや拳を入れ、血でボロボロになるまで続けられた。
口の中は鉄の味でいっぱいになり、全身から力が抜けていった。
最初は何で、どうして、とばかり思ったが、だんだんと慣れが戻ってきた。暴力を受けるのは慣れっこ。ただ時間が過ぎるのを待って、物のような存在として場に溶け込むだけだ。
痛い。苦しい。辛い。怖い。悲しい。
されるうちに、その感情はだんだんと薄れていった。その感覚が自分にとって最も楽だから、何も考えないことを意識する。
まるで、家や学校にいた時と、そう変わらない。
暴行が終わると、麗央はズルズルと引きずられて違う部屋へ行かされた。服を引っ張って、乱雑に台の上に乗せられると、両手足を器具で抑えられる。動けない状態となり、口にタオルを詰め込まれて、頭にヘルメットのような物を装着させられた。
視界は真っ暗で、何も見えない。
「ゔゔ! ううんゔっ!」
全身に焼けるような痛みが走り、あまりの痛さに体が震えた。耐えられない痛みと衝撃が、体の中で循環する様に麗央を襲う。タオルを強く噛み締めて、この痛みから逃れようともがいた。
真っ暗な視界に、パチパチと細い光が見えて、頭痛から吐きそうになる。心臓がぎゅーと押さえつけられた感覚に、息苦しさを覚えた。
「こいつ、こんな傷だらけだと死んじまうんじゃねえの? エルフにまた治させるか?」
「いいや、そんなのは要らん。魔女の子供だから回復も早いだろっ。エルフもこんな傷治すのに、魔力の消費が激しくて倒れると面倒だからな」
「んじゃ、そんままで良いっか」
途切れ途切れに研究員の会話が聞こえた。何を言っているのか、頭が朦朧としているせいで理解できない。ただ、声が聞こえるたびに、早くやめてくれと思った。
今度こそ本当に死ぬかもしれない。死ぬなら一瞬で終わらせてほしい。苦しい。きつい。
「ゔゔー! んんゔう!」
苦しむのに慣れっこだった麗央でも、この苦痛には耐えられない。手足と歯に力を込めて、早く終わることだけを祈った。
なぜ、こんな仕打ちを受けなければならないの?
涙が溢れて、呼吸が困難になっていった。体の感覚が麻痺しはじめ、手足や噛み締める力が抜けていく。そして、痛みが和らいでいった。
「二十分経ったから、注射打つぞー」
すると、パッと視界が眩しくなり、ヘルメットが外された。あの苦しみからやっとのことで解放され、麗央は終わったことに安堵する。目の前は空間が歪んで見えていて、焦点を合わせようにも難しい。
霞んで見える室内で、何が行われ、周りが何をしているのかは分からなかった。
「注射したかー?」
「ああ、今終わった。これから、パルシンとコラスとブォンカを飲まそうと思ってる」
「ショーラマも四錠飲ませてくれ。俺は記録を書いとく」
「了解っす」
カチャカチャと音がすると、手足の拘束が解かれた。起きろと言われて、麗央は上半身を上げながら目を擦る。そうすると、ぼやけていた視界が明瞭になっていった。
「これ飲め」
そう言われて渡されたのは、色と形状が違う四種類の薬だった。合計十三粒の薬を飲まされ、不味くて吐きそうになってしまう。
その後も拷問のような実験を繰り返され、麗央は頑張って耐え続けた。
僕の転生した意味は何なんだろう?
どうして、二度も人生で苦しまなきゃならないの?
何で、ギリギリまで生かして苦しめるの?
実験はいつ終わって、いつ僕を解放してくれるの?
研究員は何がしたくて、何を調査しているのは分からないが、毎日が苦しい日々だった。朝に目が覚めると夢だったって思いたいのに、起きるたびに憂鬱になる。
これは現実なんだ。そして、また今日も辛い実験に付き合わされるんだ。
またガラスの箱に閉じ込められていて、なぜか頭部の傷は治っている。ズキズキと痛むが、傷跡は綺麗さっぱり消えていた。
あの化け物を思い返すと、本当に転生したんだと思った。見たこともない未知の生物、非現実的な戦闘の強制、あの強烈な痛みが、麗央のいた日本ではないことが分かる。
「本当に、転生したんだ……」
その事実を理解しても、この状況は何も変わらない。体を起こして、ガラスの外を覗いたが、到底脱出なんてできそうになかった。
自分はこれからどうなるの?
知らない所に突き放された感覚が、これから想像できない体験をさせられそうでゾッとする。もしかしたら、またあの化け物の相手をさせられるかもしれない。早くこんな場所から抜け出したいと思った。
ジリリリリリン!
「実験体一から百までA号室、百一から二百までB号室、二百一から三百まではC号室へ行けー!」
すると、突然大きなベルの音が響き、白衣をきた男性が声を上げた。それとほぼ同時に、次々と各ガラスの壁の鍵が開き、外に出られるようになる。中にいた子供は、一斉に外へ出て廊下を歩いた。
麗央は何のことか分からずに、周りの真似をして廊下を進む。誰も一言も喋らないで、ただ前向いてを歩いていた。
どこに行くのだろう、何が始まるんだろう、と思いながら自分の前の子をついていく。
奥へ歩いていくうちに、途中で分かれ道があった。それぞれがその分かれ道を曲がって行って、麗央は右か左かどっちに行くかまごついた。
直感的な判断で右に曲がると、その先には部屋があり、皆がその室内へ入っていく。麗央も中に入ると、そこには手術台のような物が多く並べられ、全員が横になっていた。
「おい! お前はここじゃないだろ!」
頭上から怒鳴り声が聞こえて、麗央は肩をビクッと震わせた。声の元を見上げると、真っ白な医療用防護服を身にまとい、保護眼鏡を付けた人が立っている。眼鏡の奥からは、気の立った目つきで睨みつける青い瞳があった。
バシン!
不意に、麗央は平手打ちを受けた。何の前触れもなく、いきなり叩かれたことに呆然とする。そして、そんな彼を差し置いて、防護服を着た人物は何度も何度も殴りかかった。腹を蹴って顔面を殴り、麗央が倒れると首を乱暴に掴む。何発もの蹴りや拳を入れ、血でボロボロになるまで続けられた。
口の中は鉄の味でいっぱいになり、全身から力が抜けていった。
最初は何で、どうして、とばかり思ったが、だんだんと慣れが戻ってきた。暴力を受けるのは慣れっこ。ただ時間が過ぎるのを待って、物のような存在として場に溶け込むだけだ。
痛い。苦しい。辛い。怖い。悲しい。
されるうちに、その感情はだんだんと薄れていった。その感覚が自分にとって最も楽だから、何も考えないことを意識する。
まるで、家や学校にいた時と、そう変わらない。
暴行が終わると、麗央はズルズルと引きずられて違う部屋へ行かされた。服を引っ張って、乱雑に台の上に乗せられると、両手足を器具で抑えられる。動けない状態となり、口にタオルを詰め込まれて、頭にヘルメットのような物を装着させられた。
視界は真っ暗で、何も見えない。
「ゔゔ! ううんゔっ!」
全身に焼けるような痛みが走り、あまりの痛さに体が震えた。耐えられない痛みと衝撃が、体の中で循環する様に麗央を襲う。タオルを強く噛み締めて、この痛みから逃れようともがいた。
真っ暗な視界に、パチパチと細い光が見えて、頭痛から吐きそうになる。心臓がぎゅーと押さえつけられた感覚に、息苦しさを覚えた。
「こいつ、こんな傷だらけだと死んじまうんじゃねえの? エルフにまた治させるか?」
「いいや、そんなのは要らん。魔女の子供だから回復も早いだろっ。エルフもこんな傷治すのに、魔力の消費が激しくて倒れると面倒だからな」
「んじゃ、そんままで良いっか」
途切れ途切れに研究員の会話が聞こえた。何を言っているのか、頭が朦朧としているせいで理解できない。ただ、声が聞こえるたびに、早くやめてくれと思った。
今度こそ本当に死ぬかもしれない。死ぬなら一瞬で終わらせてほしい。苦しい。きつい。
「ゔゔー! んんゔう!」
苦しむのに慣れっこだった麗央でも、この苦痛には耐えられない。手足と歯に力を込めて、早く終わることだけを祈った。
なぜ、こんな仕打ちを受けなければならないの?
涙が溢れて、呼吸が困難になっていった。体の感覚が麻痺しはじめ、手足や噛み締める力が抜けていく。そして、痛みが和らいでいった。
「二十分経ったから、注射打つぞー」
すると、パッと視界が眩しくなり、ヘルメットが外された。あの苦しみからやっとのことで解放され、麗央は終わったことに安堵する。目の前は空間が歪んで見えていて、焦点を合わせようにも難しい。
霞んで見える室内で、何が行われ、周りが何をしているのかは分からなかった。
「注射したかー?」
「ああ、今終わった。これから、パルシンとコラスとブォンカを飲まそうと思ってる」
「ショーラマも四錠飲ませてくれ。俺は記録を書いとく」
「了解っす」
カチャカチャと音がすると、手足の拘束が解かれた。起きろと言われて、麗央は上半身を上げながら目を擦る。そうすると、ぼやけていた視界が明瞭になっていった。
「これ飲め」
そう言われて渡されたのは、色と形状が違う四種類の薬だった。合計十三粒の薬を飲まされ、不味くて吐きそうになってしまう。
その後も拷問のような実験を繰り返され、麗央は頑張って耐え続けた。
僕の転生した意味は何なんだろう?
どうして、二度も人生で苦しまなきゃならないの?
何で、ギリギリまで生かして苦しめるの?
実験はいつ終わって、いつ僕を解放してくれるの?
研究員は何がしたくて、何を調査しているのは分からないが、毎日が苦しい日々だった。朝に目が覚めると夢だったって思いたいのに、起きるたびに憂鬱になる。
これは現実なんだ。そして、また今日も辛い実験に付き合わされるんだ。
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