シニカル ショート ストーリーズ

直木俊

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政治家への階段

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晋二は高校2年、一般的な家庭で育ち特に不満も無く、反抗期の真っ最中ではあるが、反抗するだけの情熱がない。将来の夢も特に無く、無難に一生をやり過ごせれば良いと思っている。

小さい頃から、人並み以上にスポーツも勉強もできたが、情熱を傾ける気になれず、周りからは器用貧乏のように思われている。

彼の最近の悩みは、人生は引き算でしかないのかと絶望感に苛まれていることだ。現在の生活に不満はないのは当然である。責任も無く、必要な物は揃っている。しかしこれからは、義務を負って行かなければならない。肉体的にも老化するだけだ。プラス要素が無い。

最近多い引きこもりの人の気持ちが良く分かるようになった。必要以上のお金や地位や名誉は要らない。今の世の中には、苦労をしてまで得るものが無い、家に籠っているのが、コスパが良いという訳だ。

晋二は考えた。

なんとか、気楽に生きて行ける方法はないものか。
そうだ!政治家だ!口から出まかせ言って高い給料が貰える。
何より責任がない。


人間の一番大切な部分を捨てなければならないが、何事にも犠牲は必要だ。


これが晋二の、政治家への階段の第一歩だった。
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