シニカル ショート ストーリーズ

直木俊

文字の大きさ
15 / 99

夢判断

しおりを挟む
大地はいつも同じ場所の夢を見る。

大きな木造の長屋である。

東西に長細く二階部分は南面に部屋が並んでいる。
どの部屋も布団が敷いてあったり、散らかって見知らぬ人がゴロゴロしている。
窓から日が差し込んで、みんな居心地がよさそうだ。

一階部分はあまり行くことはないが、暗くてあまり居心地が良くない。共同のトイレや台所、浴室などがある。夢の終わりは、いつも一階で気を失って目が覚める。

なぜいつも同じ長屋の夢なのか。
恐らく彼の願望が形を変えて表れているのかもしれない。


ある日仕事で、行ったことのない岡山へ行った時、あの長屋を発見した。


実家に帰った時、母親に岡山のことを聞いてみた。

母親の顔色が一気に青ざめた。

「あなたが、まだ4歳の頃、岡山のマンションに住んでいたの。近くの長屋に、仲の良いお友達がいて、よく遊びにいっていた。大地には楽しかった長屋の記憶が焼き付いていたのね。」

大地には、母親が何か隠し事をしているのが分かった。

しかし、これ以上聞いても、何も話さないだろう。
図書館で大地が4歳の時の岡山の事件を調べることにした。

25年前の2月10日、長屋の住民から男が包丁を振り回していると通報があった。
男は警官の制止を無視して襲い掛かってきたので射殺された。

被害者は三人。
4歳の子供二人の内、一人が重体、もう一人が死亡した。
母親は即死だった。

それ以上の続報等の情報は、見つけることができなかった。
やはり直接、母親に聞くしかない。

「母さん、この殺人事件の時、僕はどこにいたの?」

母親は観念して話し始めた。

「実は、この死んだ子供のほうが、私の子供だったの。」

「ということは、やっぱり僕は生き残ったほうの子供で、母さんの本当の子供じゃないんだね。」




「ちがうわ。あなたは、本当の私の子供。死んだほうよ。」

「えっ。でも僕は今、生きてるよ?」

そう言って、自分の手を見た。
みるみる透明に変わって見えなくなった。

あの事件から一週間後、あなたが突然帰ってきたの。
自分が死んでいることに気づかずに。



でも、ついに気付いちゃったのね。。。さようなら。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語

kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。 率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。 一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。 己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。 が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。 志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。 遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。 その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。 しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

百の話を語り終えたなら

コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」 これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。 誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。 日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。 そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき—— あなたは、もう後戻りできない。 ■1話完結の百物語形式 ■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ ■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感 最後の一話を読んだとき、

今日の怖い話

海藤日本
ホラー
出来るだけ毎日怖い話やゾッとする話を投稿します。 一話完結です。暇潰しにどうぞ!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...