シニカル ショート ストーリーズ

直木俊

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二種類の人間

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私はデザインの仕事をしている。社内の営業から依頼を受ける時は色々な個性の営業マンがいるが、大きく分けると二通りのタイプがいる。

私は、それをインプルーブ(改良)型とインベント(発明)型と呼んでいる。

インプルーブ型の人は、疑問を抱かずに受け取ったデザインの大枠をそのまま受け入れて、細かい配置や色を変更しようとする。そもそも、根底から変更する発想が無い場合がほとんどだ。私に言わせれば、適当に作った大枠を受け入れている時点で、なんにも考えていない事を証明しているのだ。

配置や色などは、最後の最後に決めれば良いのだ。まず、コンセプトや打ち出し方が合っているかどうかが重要だ。それにも関わらず、この箇所が2ミリずれているとか、この緑を紫にとか、見当違いで小学生でも指摘できるような事を自慢気に言うのだから手に負えない。

インベント型の人は、デザインに疎い人もいるが、ゼロから考え出す発想力があり、コンセプトをしっかり自分の中でイメージ出来ていて、見た目のデザインに惑わされず常に受け手の視点に立つ事ができる。もし、それに沿わないものは即座にノーと言える感性をもっている。

デザインは、綺麗に作ろうとするとうまく行かない。とりあえず、型にはめてラフに作った物を、ぶち壊したり、制約を与えて不自由にしてやる事で、思いがけず良いデザインになる事も多い。

これは、デザイン以外にも当てはまると考えているのだが、綺麗に作ろうとすると、綺麗に作る事が目的となり、どんなコンセプトで、何の為に、誰に向けて、何を伝えようとしているのかを、試行錯誤しながら模索しなくなる。

世の中には、比較的インプルーブ型の人間が多い。出来上がった物に、あれこれ意見を言うのは簡単だ。意見が出来るという事は、その対象を熟知し、創り出す能力もあると錯覚している人がいる。それは腹の出た運動音痴のおっさんが、テレビの野球選手に「右肘の角度がなっていない!」と、アドバイスしているのとそう変わらないのだ。

ありものに疑問を持ち、そのまま受け入れずに物事の本質を見て、ゼロからでも物を生み出せるインベント型でありたいものだ。。。
と出っぱった腹をさすりながら、物思いにふける私であった。
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