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新一年生のみんなへ
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俊介という小学一年生の少年がいた。
彼は、おばあちゃん子で甘やかされて育った。兄弟は活発で頭の良い兄がいる。父親は別居状態で、年に数回しか家に帰らない。一家の家計は、母親の稼ぎと、祖母の年金でまかなわれていた。
幼稚園には行かず、保育園児から小学生になった為、授業というものには全く馴染めなかった。なぜ、みんな黙って座っているのか意味が分からなかった。頑固なほど宿題などの提出物は出さず、毎日のようにみんなの前で先生に叱られていた。
なぜ、宿題をしなかったのか?それは、家で鉛筆で何かを書くという発想がなかったのだ。家はあくまでも遊んだり、テレビを見る場所なのだ。しかし、先生からのお小言が書き連なった連絡帳に、保護者印を押して提出するという悪知恵だけは持ち合わせていた。
ある日、いつものように教科書を忘れたので、となりの子に見せてもらう事となった。
その時、先生が、
「俊介君!こんな時、どんなふうに言うのですか?」
「ご、ごめんなさい。」
と、俊介が言うと、クラス一同、笑いに包まれた。
「お友達に何かをやって貰ったときは、“ありがとう”ですよ!」
俊介は、大人に囲まれて育った為、ごめんくださいませ、のように、「ありがとう」を使ったという意味もあるが、「ありがとう」では、反省していないようで、軽いと感じたのだ。なので、「ありがとう」を省略し、行間に忍ばせ、「ごめんなさい」と言ったのだが、先生も分かる筈も無い。
しかも、申し訳ないと思う位なら、最初から、教科書を忘れなければ良いだけだ。しかし、彼には、確固たる信念があったのだ。意味を理解出来ない物はやらないと。俊介に教育の意義を教えるものは、誰一人居なかったのだ。
特に算数は、最初の段階で挫折した。まず、授業では数の数え方を教えられると思うが、なぜ、ゼロから初めてはいけないのか、ゼロとは何なのかが分からず、数えられなくなったのだ。
美術の時間には、まず背景から塗り始め、終了時間には、一面水色に塗られた紙が出来上がった。母親は参観日に「わからん」と名付けられた謎の絵と遭遇する事になる。(題名は先生の聞き取りにより本人の答えをそのままを書き写したものである)
母親は、仕事の忙しさもあり、この謎の生物を早くから諦めていた。兄は見込みがあるので、俊介は、適当に育ってさえいれば、良しとしようと早くから妥協していたのであった。
ある日、俊介のクラスメートは、俊介の机の裏側に、信じられない量の、乾いて固まったハナクソを発見した。その後、クラス全体が恐怖に包まれた事は言うまでもない。
そんな俊介にも、たった一つの特技があった。だれがうんこをしたいかを言い当てることが出来るのだ。顔色、体の動き、醸し出すオーラなどから、敏感に感じ取るのだ。その精度は、百発百中といっても差し支えなかった。
その時代、トイレの大に行くことは死を意味していた。大便器の扉が閉まっていると、大騒ぎになり個室から出てくるまで、皆が息を呑んで待ち構えている。そして一ヶ月は「うんこ」というあだ名で呼ばれるので、学校でうんこをする強者などいなかったのだ。
そんな状況で、俊介の鋭い観察眼にかかった者は、クラス全員の監視下に置かれることになる。まさに生き地獄と言って良いだろう。
しかし、神はそんな俊介の悪行を見逃すはずはなかった。
ある日、汚れたパンツを入れたビニール袋を持った、俊介のおばあちゃんが学校の廊下で先生に頭を下げている場面が、通りがかった生徒により目撃されたという。俊介は最大級のあやまちを犯し学校中の伝説となった。
彼は、おばあちゃん子で甘やかされて育った。兄弟は活発で頭の良い兄がいる。父親は別居状態で、年に数回しか家に帰らない。一家の家計は、母親の稼ぎと、祖母の年金でまかなわれていた。
幼稚園には行かず、保育園児から小学生になった為、授業というものには全く馴染めなかった。なぜ、みんな黙って座っているのか意味が分からなかった。頑固なほど宿題などの提出物は出さず、毎日のようにみんなの前で先生に叱られていた。
なぜ、宿題をしなかったのか?それは、家で鉛筆で何かを書くという発想がなかったのだ。家はあくまでも遊んだり、テレビを見る場所なのだ。しかし、先生からのお小言が書き連なった連絡帳に、保護者印を押して提出するという悪知恵だけは持ち合わせていた。
ある日、いつものように教科書を忘れたので、となりの子に見せてもらう事となった。
その時、先生が、
「俊介君!こんな時、どんなふうに言うのですか?」
「ご、ごめんなさい。」
と、俊介が言うと、クラス一同、笑いに包まれた。
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俊介は、大人に囲まれて育った為、ごめんくださいませ、のように、「ありがとう」を使ったという意味もあるが、「ありがとう」では、反省していないようで、軽いと感じたのだ。なので、「ありがとう」を省略し、行間に忍ばせ、「ごめんなさい」と言ったのだが、先生も分かる筈も無い。
しかも、申し訳ないと思う位なら、最初から、教科書を忘れなければ良いだけだ。しかし、彼には、確固たる信念があったのだ。意味を理解出来ない物はやらないと。俊介に教育の意義を教えるものは、誰一人居なかったのだ。
特に算数は、最初の段階で挫折した。まず、授業では数の数え方を教えられると思うが、なぜ、ゼロから初めてはいけないのか、ゼロとは何なのかが分からず、数えられなくなったのだ。
美術の時間には、まず背景から塗り始め、終了時間には、一面水色に塗られた紙が出来上がった。母親は参観日に「わからん」と名付けられた謎の絵と遭遇する事になる。(題名は先生の聞き取りにより本人の答えをそのままを書き写したものである)
母親は、仕事の忙しさもあり、この謎の生物を早くから諦めていた。兄は見込みがあるので、俊介は、適当に育ってさえいれば、良しとしようと早くから妥協していたのであった。
ある日、俊介のクラスメートは、俊介の机の裏側に、信じられない量の、乾いて固まったハナクソを発見した。その後、クラス全体が恐怖に包まれた事は言うまでもない。
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そんな状況で、俊介の鋭い観察眼にかかった者は、クラス全員の監視下に置かれることになる。まさに生き地獄と言って良いだろう。
しかし、神はそんな俊介の悪行を見逃すはずはなかった。
ある日、汚れたパンツを入れたビニール袋を持った、俊介のおばあちゃんが学校の廊下で先生に頭を下げている場面が、通りがかった生徒により目撃されたという。俊介は最大級のあやまちを犯し学校中の伝説となった。
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