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楽しい夕食でした。
しおりを挟む目を丸くするワーズス様とは反対に、公爵夫人は嬉しそうに手を叩く。
「まぁ!まぁまぁまぁ、なんて素敵なのかしら!息子と望んで婚約をしてくれるなんて、親としてこんなに嬉しいことはないわ!ありがとうエリーナちゃん!」
「いえ、感謝される事ではありません。むしろ、この婚約は私が一方的に決めてしまったものですので、ワーズス様が気分を害されたのではないでしょうか」
「そんな事あるはずがないわ!ねぇ?リックス?」
ワーズス様の名前を呼びながら意味深な笑顔を彼に送る。
そうすれば、ワーズス様が居心地悪そうに公爵夫人から視線を外し咳払いをする。
「おほん。ですが、母が私達は家族になると言った時に何か考えられていたようですが?やはり俺との結婚は嫌だと思ったのではないですか?」
「それは…公爵夫人が仰るまで、皆様と家族になるということを考えた事がなかったので、家族になればどうなるかを考えていたのです」
「もう、エリーナちゃんったら、そんな他人行儀な呼び方じゃなくて、お義母様って読んでちょうだい」
「母上、今は呼び方なんてどうでもいいでしょう」
「ああ、私の事はお義父様と呼んでくれ」
「父上まで!」
真面目な表情のワーズス様とは反対に、公爵夫人ーーお義母様とお義父様は気さくに話しかけて下さる。
ワーズス様はそんなお二人に頭痛がするのか頭を教えてらっしゃるわ。
ワーズス様も、私と同じで親に悩まされているのかしら。
ですが、その悩まされる内容はきっと私とは真逆なのでしょうね。
「………想像してみたのです。皆様の家族の一員にして頂いた時のことを…」
「それで?やはり、私みたいな醜い男が夫では気が滅入るでしょう」
「いえ、そんなことはございません。ワーズス様やお義父様、お義母様とは本日お会いしたばかりですが。皆様はとてもお優しくて素敵な方々で、皆様と家族になるという事は……とても、とても素敵で幸せな未来が待っている気がしたのです」
「まぁ、エリーナちゃんったら嬉しいことを言ってくれるわね!」
「まさか息子の嫁にこんないい子が来てるれるとは…長生きするもんだな」
「………か…?」
私の言葉にお義母様とお義父様は喜んでくださっているようですが、ワーズス様は眉間に皺を寄せて何かを呟かれたように見えました。
「あの、ワーズス様なにか…」
「こんな嬉しい日は妻がプロポーズを受け入れてくれた時と、息子が生まれた日以来だ」
「そうね、あなた!今日はみんなで存分にお祝いしましょう!エリーナちゃん!しっかり食べてね!」
「は、はい!ありがとうございます!」
ワーズス様が何を言ったのかを聞こうとするが、喜ぶお義父様とお義母様の勢い圧されて食事を口に運ぶ。
「…!美味しいです!」
「口に合ったようで良かったわ。おかわりもあるから言ってね」
「ありがとうございます」
口に入れた食事は、きっと今まで食べたどの食べ物より美味しかったと断言出来ます。
私の家の食事も美味しいとは思いますが、これは格別ですわ!
きっとこれは、この国一美味しいのではないでしょうか。
そういえば、こちらの領はお食事が美味しいことで有名でしたわね。
なんでも、ワーズス様がシェフと共にレシピを考案し、それを領地全体で共有しているとか。そんな噂を聞いたことがありますわ。
「エリーナちゃん、これは私のオススメなの、食べてみて」
「はい、ありがとうございます」
「デザートは何がいいかしら?チョコは好き?」
「 生クリームとカスタードのケーキもどうだ?」
「なら、両方なんてどうかしら?」
「い、いただきます!」
「無理する必要はないですからね…」
お料理があまりにも美味しくて、人生で初めてお腹がはち切れそう、という体験をしましたわ。
美味しいお料理をお腹いっぱいに食べるなんて、なんて幸せなことでしょう。
今まで体型を気にしてうさぎのように野菜ばかり食べていたのが本当に馬鹿らしく感じますわ。
幸せな気分のまま部屋に戻ってからは、動くのが億劫でベッドに横になってそのまま寝てしまった。
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