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ワーズス公爵家の夕食
しおりを挟む「こんなに立派な部屋を私が使っても良いのですか?」
案内してもらった部屋があまりにも豪華で驚きが隠せない。
客室なのでしょうが、あまりにも広くて内装も凝っているので、ワーズス様が仰ったように書類上の婚約者に過ぎない私が使ってもいい部屋とは思えない。
だけどサラは当然とでも言うように力強く頷く。
「もちろんです!むしろマルクスお嬢様以外にこの部屋をお使い頂ける方はいません」
「そう、なのですか?」
「はい!ですので、この部屋を自室だと思ってお使い下さいませ。それでは、お持ちになられていた荷物を運んで参りますので少しの間失礼致します」
「何から何までありがとうございます」
「とんでもございません」
柔らかく微笑んでからサラは部屋を出ていった。
「はぁ…」
1人になった途端緊張が切れたのか、身体から力が抜けてソファに倒れ込む。
こんな姿、貴族の令嬢として誰かに見れるわけにはいきませんが、身体に力が入りませんわ。
それに、瞼もいつの間にか閉じていく。
次に目を覚ました時には何故かベッドで眠り、明るかったはずの空も暗くなっていた。
「っ!」
寝すぎてしまいましたわ!
お部屋をお借りしただけではなく、明るい内からこんなにも眠ってしまってはしたないですわ。
泊めていただくのですから、せめてお仕事などお手伝いさせてもらわなければいけませんのに。
コンコンコン
自分の失態に顔を覆いたくなっていると、見計らったかのようにドアがノックされる。
「マルクスお嬢様、サラでございます。お食事がご用意出来ましたが、いかがでしょうか?」
「あ、ありがとう。すぐに行くわ」
サラの声に出来るだけ身なりを整え部屋を出る。
そうすれば、サラは「よく眠られましたか?」と優しく笑いながら夕食へと案内してくれる。
案内してくれた部屋で、既に3人の方がご着席されていた。
1人は私の婚約者のワーズス様。後のおふたりはワーズス様のお父様とお母様のようです。
どうやら私は、失礼にもこの家の方々を待たせてしまったようです。
「お待たせしてしまい申し訳ありません。また、こちらにお世話になりますのに、公爵様方にご挨拶もせず申し訳ありませんでした」
既にたくさん無礼な振る舞いをしている事に気付いて慌てて頭を下げる。
「疲れていたのなら仕方ないわ。それよりも、料理が冷めると味が落ちてしまうから、エリーナちゃんもこっちに来て早く食べましょう」
公爵夫人が私の無礼を優しい笑顔で許してくださり、席に座るように促してもらえる。
それに名前まで呼んでいただけて、とても友好的な方のようですわ。
「それでは、我が息子の婚約者であるエリーナ嬢が来てくれたことを祝って、乾杯」
「乾杯!」
「かんぱい…」
公爵様の言葉に公爵夫人が嬉しそうにグラスを上げ、ワーズス様は居心地が悪そうにしながらも少しだけグラスを上げられる。
私はと言うと、まさか不躾なお願いをしに来たにも関わらず、予想外にお祝いをしていただいたことに驚いて乾杯とは言えずにグラスを上げるだけに留まってしまった。
「それでは、遠慮せずに食べてくれ」
「エリーナちゃんは、食べられないものとかあるかしら?」
「いえ、特にございません。お気遣い頂きありがとうございます」
優しく聞いてくださる公爵夫人に恐縮してしまう。
突然訪問してしまった私に、こんなにも優しくしていただけるなんて申し訳ないですわ…。
「もう、エリーナちゃんったら堅いわよ!遠くない未来で私達は家族になるんだから、もっと気楽に接してくれて良いのよ?」
「は、母上!彼女の前で何をおっしゃるんですか!」
公爵夫人から【家族】という言葉が出たことで反応が遅れてしまう。
そんな私の代わりにワーズス様が公爵夫人に声を上げられる。
「なにって、婚約したのだから当然のことでしょ?」
確かにそうですわ。
ですが、私はその当然のことを考えた事がありませんでした。
「そ、それは…!ですが、母上のせいでマルクス嬢が固まってしまいましたよ」
「あら、本当だわ。どうしたのかしら?」
「それは決まっているでしょう…。ルーファス様に婚約解消をされ、代わりに婚約させられたのが私のような醜い男なのですよ。そんな男との将来なんて考えたくもないでしょう…」
私が少し考え事をしている間に、ワーズス様が思ってもいないことを悲しそうな顔で言われるので思わず大きい声が出てしまう。
「そんな事はありませんわ!ワーズス様との婚約がルーファス様からの提案だと言うことは間違いありませんが、私は私の意思でワーズス様と婚約をさせて頂きたいと思いサインをしたのです」
「え…」
私の言葉にワーズス様は驚いたように目を丸くする。
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