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マッサージ…。
しおりを挟む「クリームをつけた方が滑りが良くなるので、私の部屋でマッサージをさせてもらえますか?」
「え、貴女の、部屋で…?」
「お嫌ですか?」
「いや、そういう訳では無いが…。いや、うん…わかっていたが、意識されていないことを再確認させられるのは辛いものがあるな…」
意識されていないとはなんの事なのでしょうか?
よく分かりませんが、部屋に来ていただける様なので早く移動しましょう。
段々と気温も下がってきましたし、上着に入らせてもらってると言っても、流石にこのままでは冷えてしまいますものね。
そう思って部屋に移動してマッサージをさせてもらいますが…。
「いたたたた!痛い!もっと優しく!痛い!痛い!」
触れる場所全てに痛みを感じられるようで、思わずマッサージの手を弛めそうになってしまいます。
といっても全然力は入れていないので、痛みの原因はリックス様の顔に老廃物が溜まりすぎているからでしょうね。
「もう少しで終わりますからね」
「ぐっ、いっ、痛い!」
「これで終了です」
「っ、や、やっと終わった…」
なんだか、屋敷の周りを走り終えた時のような疲れきった顔をされている気がします。
そんなに痛かったのでしょうか?
「顔が痛い……が、なんとなく、スッキリした気がする…?」
「これを毎日続けられれば、おそらくもっとスッキリされると思いますよ!」
「こ、これを毎日…。自分で出来る気がしない…」
確かに、自分自身ですると痛みを感じて力を弱めたりしてしまいますものね。
「では、私がさせていただいてもよろしいですか?」
「いいのか…?」
「はい。マッサージは得意な方ですのでお任せ下さい」
それに、リックス様へ恩返しをさせて頂くチャンスですもの。
しっかりとマッサージをしてみます!
そう意気込んでいましたがーー。
「…………」
「…………」
頭を高くしてソファで横になるリックス様の顔をマッサージすると、顔と顔の距離が近くなって、何故だかとても恥ずかしいです。
肉付きがよろしいですが、見れば見る程それぞれのパーツがとても整ってらっしゃる。
このお肉達が無くなれば、美形だと言われているルーファス様さえ霞んでしまうのでは無いでしょうか。
「どうかしたのか?」
「い、いえ…」
あまりにもじっくりと見すぎてしまいましたわ。
私の視線を感じたのか、リックス様が目を開けられて視線が交差してしまいます。
「…………」
いつも隠すように下ろしている前髪も眼鏡もないので、エメラルド色をした綺麗な瞳がハッキリと見える。
なんて綺麗なのかしら…。
「………その、そんなに見られると……なんと言うか、居心地が悪いんだが……」
「っ!も、申し訳ありません…!」
リックス様の言葉に、弾かれたように上体を起こす。
「く、クリームをもう少し足しますね。そうすれば、もっと滑りが良くなりますので」
「あ、ああ」
リックス様の瞳が綺麗だからって、私ったら何をしているのでしょうか…。
本当に恥ずかしいですわ。
少し火照った顔を冷ますように手で仰いだ後に、クリームを足してマッサージを再開させる。
マッサージをすると言ったのは私ですが、毎日させていただいて大丈夫でしょうか。
リックス様の瞳を至近距離で見てから、何故だかとても心臓の音がうるさくなってしまって、リックス様に聞かれないか心配で仕方ありません。
どうか、この心臓の音が聞こえませんように。
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