婚約解消された私は醜い公爵令息と婚約することになりましたが、今の方が断然幸せです。

しあ

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ルーファス様の婚約者さん。

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ルーファス様のことで謝罪されているようですが、見当違いにも程がありますわ。


「いえ、その事に関しては全く気にしていませんので謝罪は必要ありませんわ」
「でも…。婚約解消のせいで、醜いと噂の方と婚約する事になったんですよね?私のせいで、本当にごめんなさい!」


本人を目の前にこの人はなんて事を言うのでしょうか。
それも周りに聞こえるように大きい声で言うなんて、この方は常識というものが全くないのでしょうか。


「私、前に一度だけその方を見たんですけど、とても酷い見た目をされてて、もし私があの人の婚約者になれと言われたら、死にたくなるなって思ったんです!」
「あの、それは言い過ぎですわ。それに、リックス様の見た目が酷かったことは1度もありま…」
「そんな事はありません!女だったら絶対あんな人と婚約、ましてや結婚なんて絶対にしたいなんて思いませんよ!」


人の話を遮って言いたいことを話すのはマナー違反ですわよね。
流石ルーファス様が見初めた方ですわね。(2回目)


「そんな方と婚約する事になってしまって、本当にごめんなさい!」
「俺の子猫ちゃんがここまで謝っているんだから、許してくれるよな?」


許すも何も、そもそも私は怒っていませんでしたが?
ですが、リックス様への物言いには少しカチンと来ましたわ。


「私は、リックス様の婚約者になれたことに感謝していますので謝罪は本当に必要ありません」
「そんな事はありませんよ!だって、今日のパーティーであの醜い方をパートナーにされていないじゃないですか!やっばり、あんな方がパートナーなのは恥ずかしくて一緒に来れなかったんですよね!」


この方は大声でなければ話せない病気なのでしょうか?
そんなに大きな声を出さなても聞こえますのに、どんな意図があってこんな話方をされているのでしょうね。
それにそもそも。


「私の婚約者のリックス様なら、この会場に入る前から共にいますが?」
「え?」
「は?」


もしかして、本当にリックス様だと認識されていなかったのでしょうか。
子猫ちゃんさんやルーファス殿下以外の方も、声を出さずに驚いてらっしゃいますわ。


「う、うそ…。少しぽっちゃりはしているけど、こんなに綺麗な顔をした人があんな醜いブタだなんて、ありえない…」
「醜いブタってなんですか?リックス様は1度だってそんな姿だった事はありませんわ!」


いけませんわ。
せっかくのパーティーなのですから、もっと穏便にことを済ませようと思いましたのに、子猫ちゃんさんの言葉に何かが切れる音がした気がします。


「リックス様は少し恰幅がよろしかったのは事実ですが、それはリックス様の優しさの現れです!ブタなどと言われる謂れはありませんわ!それに、リックス様は元々綺麗な顔立ちをされていましたわ!それなのに、よく見もせずに醜いだのよく言えましたわね!」
「おい、マルクス嬢」

「今まで散々酷い噂話で笑っていらしたのに、少し痩せられたからって色めき立ってなんなのですか!醜いから婚約者になりたくない?醜いのは、リックス様の美しさを理解せず笑い物にしていた貴女の方ではありませんの!」
「マルクス嬢、その辺に…」

「いいえ、言わせていただきます!私はともかく、リックス様の事を言われて黙っている訳には行きませんわ!よろしいですか!」
「エリーナ!」
「!?」


まだ言いたいことは沢山あったのですが、リックス様に名前を呼ばれた事で思考が停止する。


今、私の事を名前で呼んでいただけましたか…?
ずっとマルクス嬢と呼んでいたはずですのに、こんなタイミングで呼んでくださるなんてズルいですわ…。


「少しは落ち着いたか?」
「はい…」
「俺の事で怒ってくれるのは嬉しいが、俺は別にエリーナ以外からなんて思われようと気にしないから、そんなにムキになるな。わかったか?」
「わかり、ました…」


が、それは私にどう思われているかは気にする、と言うことなのでしょうか…?


私が婚約者だから気になるということで、他意はないのでしょうが、リックス様の言葉に胸が勝手に高鳴ってしまいますわ。


「ダンスするって雰囲気でも無くなったし、帰るか」


いつの間にか離してしまったリックス様の暖かい手が、引き寄せるように私の肩を掴む。
そして軽く殿下に婚約のお祝いを告げてから会場を出る為に一歩踏み出す。


「待って!貴方が、あのワーズス様だなんて、嘘…ですよね?」
「子猫ちゃん…?」


去ろうとすると子猫ちゃんさんがリックス様に話しかけてくる。
その声にリックス様は煩わしそうに答える。


「だったらなんですか。急いでますので、これで失礼致します」
「あ、待って!どうして今更変わったんですか!」
「どうしたんだ子猫ちゃん!」
「ねぇ!ちょっと!離して、ルーファス様!」


なんだか子猫ちゃんさんとルーファス殿下が揉めている様です。
そんなおふたりにリックス様がこれで最後と言うように言い放つ。


「どうして今更変わったって?好きな人の隣に立っても恥ずかしくないように変わろうとしただけですよ。それでは、今度こそ失礼致します」


今度こそ2人に背を向けて会場を後にする。


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