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ルーファス視点
気に食わない女
しおりを挟むエリーナ=マルクス、それは俺の婚約者の名前だ。
見た目はかなり良いが、性格が最悪の女。
そんな女と婚約してしまったのは、ひとえに若気の至りと言うものだ。
あれは俺が10歳の誕生日パーティーを開いた時のことだ。
一際目立つ可愛い少女がいた。
それこそが、俺の婚約者のエリーナ=マルクス。
公爵令嬢で見た目も良い、王子である俺の婚約者に相応しいと思って婚約をしてやった。
だが、それが間違いだと気付くのに時間はかからなかった。
あの女は俺が婚約してやったというのに全く感謝もせず、俺の話に意見ばかりしてくる。
女ならば男を立てるべきだろうが。
それなのに俺に意見や反論をしてきやがるし、口がよく回るから俺の周りにいる奴らまで懐柔してくる始末だ。
おかげで催し物がある際は俺よりもあの女の意見が優先されるし、俺がなにか言えば必ずアイツの所に聞きに行きやがるし!
どいつもこいつもあの女の良いように動かされやがって!
普通、何を置いても王子であるこの俺が優先されるべきだろうが!
見た目が良いだけで鬱陶しいだけの女と話したくもない。
最近ではほとんど手紙でやり取りをしているが、婚約者という事で顔を合わせなければ行けない時がある。
その時は、待ってましたとばかりに俺にダメ出しをしてきやがる。
一体アイツは何様のつもりなんだ!
俺に向かって、一国の王子としてもっと周りを見てくださいだの、俺の行動ひとつでどれだけの人に影響があるのかを考えろだの…!
いちいち煩いんだよ!
俺は何も間違っちゃいないのに、アイツはチクチクチクチク小言ばかり言ってきやがる!
もう本当にうんざりなんだよ!
あんな女と結婚?
冗談じゃない!
あんな女と一生共に過ごすなんて俺には無理だ。
だが、今更婚約解消など出来るわけがない。
それならどうするか…。
あいつと婚約解消をする方法を日々考えていると、アイツと同じくらい見た目がいい女が俺に話しかけてくるようになった。
見た目は好みだし、俺に気がありそうな態度を取ってくる。アイツとは違って俺の意見を否定することも無く、俺が王子として優れていると本当の事まで言ってくれる。
そんな女に惚れるなという方が無理な話だ。
アイツなんかとは違って俺のことを想って傍にいてくれる女、いや、子猫ちゃんと恋仲になるのに時間はかからなかった。
子猫ちゃんの父親が王城の図書館の管理人として雇われているので、子猫ちゃんはその父親に付いて毎日のように俺に会いに来てくれた。
図書館で逢瀬を重ね、子猫ちゃんに婚約者であるアイツの愚痴を零したりしていると、子猫ちゃんがアイツとの婚約解消の方法を提案してくれた。
その方法というのが、俺との婚約解消の代わりに醜いと有名な公爵令息との婚約を取り付けると言うものだった。
もしこれが成功すれば、俺は子猫ちゃんと婚約出来てアイツによって不愉快な思いをすることも無くなる。そして、アイツの家も同じ公爵家との繋がりも出来、醜いために婚約者が出来なかった公爵令息にも恩を売れる。
これはなんていい案なんだ!
一石二鳥、どころか一石三鳥じゃないか!
流石俺が惚れた女、なんて賢いんだ!
だが、直接このことを言いに行けばまたアイツに小言を言われかねん。
なので、面倒だが手紙に書いてやるか。
「おい、今すぐこれをエリーナに届けろ!」
俺が指示を出せば即座に手紙がマルクス家に届けられ、思ったよりも早く返事が届いた。
返事の内容は、俺の案を全て受け入れると言うことだった。
「…しゃ!」
思わず握りこぶしを作って喜んでしまった。
いつもならツラツラと俺への文句を無駄に長ったらしく書いて来るが、今回はただサインをするだけで返信してきている。
拒否されるのは面倒だと思ったが、最後だけはいい仕事をしてくれたな。
見た目だけは良かったが、性格が可愛くなければ意味が無い。
今まで俺の婚約者であれたことを感謝しながら、あの醜い男の婚約者になるんだな。
あの男と女なら、美女と醜男か…。
ふふ、それを実際に見てみるのも一興じゃないか。
俺の事を散々馬鹿にしてきたあの女が笑われるのを見てやろうか。
それにあの男も醜い見た目をしているくせに、なかなか生意気なことをしてくれるしな。
あの男があそこの領主を手伝い初めてから、数々の改革を起こし、今やあの領があるからこの国が豊かなのだと言い始めている奴らもいるくらいだ。
父上は父上であの男と歳が近い俺をすぐ比べて、お前もあの子のように少しは頭を使ったらどうなんだ。と言ってくるしな!
少し頭がいいからと言って、知識を馬鹿みたいにひけらかして周りからいい評価をもらっているだけだろうが!
会ったことは数回程度だが、本当に気に食わないやつだ。
だが、頭は良くても見た目がアレだからな。
見た目を気にしてるのかあまり表には出てこない奴だが、王子である俺が婚約パーティーをするのだから出席しろと言えば出てくるだろう。
くくく、生意気な奴らが笑われるところを存分に見てやろうじゃないか。
そうすれば、今まであいつらによって受けてきた屈辱感も少しは癒えるだろうしな。
パーティー当日が楽しみで仕方ない。
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