婚約解消された私は醜い公爵令息と婚約することになりましたが、今の方が断然幸せです。

しあ

文字の大きさ
22 / 28
ルーファス視点

子猫ちゃんの本性

しおりを挟む



「ルーファス様って、稀代のポンコツ王子って言われてますけど、本当にその通りですよね」
「ぼん…」


なんだと?俺はそんなことを言われたことは1度もないぞ。
誰だそんな事を言うやつは。不敬罪で今すぐ首を落とされても文句は言えないぞ。


「あ、もしかしてポンコツって言われてることすら気付いてませんでした?流石ポンコツ王子ですね」


ニッコリと笑う子猫ちゃんには、もう前のように弱弱しい姿がない。
これでは、見た目が同じで中身だけ別人と入れ替わったと言われた方が納得いくくらいだ。


「どうしたんだい子猫ちゃん?最近、俺への当たりが強い気がするんだが、なにかあったのかい?」
「前から思ってたんですけど、その子猫ちゃんって気持ち悪いんで止めてもらえます?言われる度に寒気がするですよね」


爪をいじりながら、こちらを見ずに気だるげに言ってくる。


「気持ち悪い…」
「今までルーファス様を落とす為に可愛い子を演じていましたけど、もう疲れたって言うか、どうでも良くなったんですよね」
「演技…?」


嘘だろ…。
あんなにも俺に恋い焦がれたように見てきたあの瞳が嘘だなんて、あるわけが無いだ。


「嘘をつくのは感心しないな」
「ルーファス様って、本当に騙しやすいですよね。胸をくっつけて上目遣いするだけで簡単に落ちるんですから。でも、落とした所で意味はなかったですけど」
「意味が無い、とは?」


そう聞けば、苛立ったように深くため息をついて話し始める。


「私、エリーナ様が嫌いなんですよね。涼しい顔してなんでも完璧にこなして、見た目も良くて、その上公爵令嬢なんてズルいじゃないですか」
「ズルい?」
「ええ、公爵家に生まれたってだけで周りからチヤホヤされて、王子の婚約者にもなれるんですよ?私なんて、この可愛さを武器に高位貴族の令息を落としてやっと王子が参加するパーティーに出席出来るくらいなのに」


そういえば、子猫ちゃんの家はあまり聞いたことの無い名前だったな。


「私は見た目が良くても貧乏で、必死に周りに媚びを売って高位貴族と結婚しようと頑張っているのに、あの女は何も苦労せず王子と結婚出来るなんて、ズル過ぎますよ」


ずるいと言っても、貴族社会ではそれは当たり前のことだろうが。王族とて、今後の為に高位貴族と繋がりを持っておかなければ面倒な事になるのだから致し方のない事だ。
だが子猫ちゃんにはそんな考えは無いのだろうな。
まぁ、俺もあまりそんな事は気にしていないが。


「あっちは何も頑張らずに王子と婚約。頑張っていた私は醜い公爵令息と婚約させられそうになるなんて、理不尽ですよ」
「待て、もしかしてそれは…」
「そうですよ。あのワーズス様と私は、1度婚約の話があったんですよ」


そんな事は聞いたことがなかったぞ。


「断られましたけど」
「なんだと?」


あの万年婚約者なしの男が子猫ちゃんの婚約を断ったのか?
アイツはバカなのか?


「なんでも、好きな人がいるから私とは婚約できないとかで、こんなにも可愛い私の事を面と向かってふったんですよ、あの男」


その時のことを思い出しているのか、悔しそうに顔を歪めている。


「あの顔でよくそんな事が言えましたよね。あんなデブで不細工な男の婚約者になんてなりたくなかったですけど、まさかフラれるなんて思ってませんでしたよ!ホント、何様なのよ!」


子猫ちゃんが苛立ちを隠さず近くにあった枕を床に投げ捨てる。


「でも、その時ふと思ったんですよ。いつも涼しい顔をしたエリーナ様もあの男にフラれてショックを受ければいいなって」
「もしかして、君が俺に近付いたのは…」
「エリーナ様があの男にフラれる為には、まずルーファス様との婚約をどうにかしなければいけなかったし、あの女を蹴落として王子の婚約者になれば、すごく気分が良さそうだなって思ったんですよね」


ニッコリと笑う子猫ちゃんの顔は、出会った頃の純粋で可憐なものと同じだった。
もしその笑顔が乱れたベッドの上で体にシーツを巻き付けている格好でなければ、きっと俺は子猫ちゃんが元に戻ってくれたのだと喜んでいただろうな…。


「でも、まさかあの二人がいい仲になるなんて予想外でしたよ。しかも、痩せたワーズス様があんなにもイケメンだったなんて予想外過ぎましたよ。もし最初からイケメンだって知っていたら、ルーファス様みたいなバカをあの女から奪わなかったのに」


誤算だと嘆く彼女に、俺は怒ればいいのか悲しめばいいのか分からなかった。


「イケメンだって知ってたら、あっちを本気で落としに行ってたのに…」


子猫ちゃんと出会ってから、やっと俺のことを理解出来る女が現れたと思っていたのに。
まさか、エリーナを貶める為だけに俺に近付いただけだったとは…。


しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

追放された令嬢ですが、隣国公爵と白い結婚したら溺愛が止まりませんでした ~元婚約者? 今さら返り咲きは無理ですわ~

ふわふわ
恋愛
婚約破棄――そして追放。 完璧すぎると嘲られ、役立たず呼ばわりされた令嬢エテルナは、 家族にも見放され、王国を追われるように国境へと辿り着く。 そこで彼女を救ったのは、隣国の若き公爵アイオン。 「君を保護する名目が必要だ。干渉しない“白い結婚”をしよう」 契約だけの夫婦のはずだった。 お互いに心を乱さず、ただ穏やかに日々を過ごす――はずだったのに。 静かで優しさを隠した公爵。 無能と決めつけられていたエテルナに眠る、古代聖女の力。 二人の距離は、ゆっくり、けれど確実に近づき始める。 しかしその噂は王国へ戻り、 「エテルナを取り戻せ」という王太子の暴走が始まった。 「彼女はもうこちらの人間だ。二度と渡さない」 契約結婚は終わりを告げ、 守りたい想いはやがて恋に変わる──。 追放令嬢×隣国公爵×白い結婚から溺愛へ。 そして元婚約者ざまぁまで爽快に描く、 “追い出された令嬢が真の幸せを掴む物語”が、いま始まる。 ---

放蕩な血

イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。 だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。 冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。 その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。 「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」 過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。 光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。 ⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。

殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!

さくら
恋愛
 王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。  ――でも、リリアナは泣き崩れなかった。  「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」  庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。  「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」  絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。  「俺は、君を守るために剣を振るう」  寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。  灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。

答えられません、国家機密ですから

ととせ
恋愛
フェルディ男爵は「国家機密」を継承する特別な家だ。その後継であるジェシカは、伯爵邸のガゼボで令息セイルと向き合っていた。彼はジェシカを愛してると言うが、本当に欲しているのは「国家機密」であるのは明白。全てに疲れ果てていたジェシカは、一つの決断を彼に迫る。

転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。 胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。 けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。 勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに…… 『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。 子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。 逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。 時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。 これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday

婚約破棄されたので辺境でスローライフします……のはずが、氷の公爵様の溺愛が止まりません!』

鍛高譚
恋愛
王都の華と称されながら、婚約者である第二王子から一方的に婚約破棄された公爵令嬢エリシア。 理由は――「君は完璧すぎて可愛げがない」。 失意……かと思いきや。 「……これで、やっと毎日お昼まで寝られますわ!」 即日荷造りし、誰も寄りつかない“氷霧の辺境”へ隠居を決める。 ところが、その地を治める“氷の公爵”アークライトは、王都では冷酷無比と恐れられる人物だった。 ---

見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。 そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。 そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。 ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

処理中です...