21 / 28
ルーファス視点
全てが思い通りにいかない!
しおりを挟む「私の婚約者のリックス様なら、この会場に入る前から共にいますが?」
なんだと!?
嘘だろう…。
前にあいつを見た時は、座った椅子が壊れそうなほど太っていたぞ。それに、醜い顔を隠すために前髪を伸ばして、メガネもしていた。
いや、この男もメガネはしているか。
だが、眼鏡など買えば誰でもつけられる。
眼鏡をしているからと言ってこれがあの男なんて通るはずがない。
だが、この男の瞳の色はワーズス家の直系しか受け継がれないと言われるエメラルドグリーンと同じだ。
いや、まさか、そんな事は…!
子猫ちゃんの言葉に激高したエリーナを宥めるように発した声は、俺の記憶の中にあるワーズスのものと全く同じだ…。
そんな、そんな事があるのか!?
何故こんなことに!
驚いている俺とは違い、何故か子猫ちゃんが強い口調でワーズスに問いかける。
一体どうしたんだい子猫ちゃん!
今までの奥ゆかしく大人しい君が、一体どうしてそんなにも感情的になんているんだ!
「待ちなさいよ!こんなの詐欺だわ!よくも私を騙してくれたわね!」
「落ち着いて子猫ちゃん!今まで大人しかった君が一体どうしたんだ!?」
「煩いわね!こんなこと、絶対に許されないわ!ちょっと、聞いてるの!ワーズス様!」
う、うるさい!?
子猫ちゃんが俺にこんな事を言うはずがない!
一体あの男は俺の子猫ちゃんに何をしたんだ!
せっかくエリーナとワーズスを笑ってやろうと思っていたのに、それどころではなくなってしまったじゃないか!
子猫ちゃんを何とかなだめてパーティーを始めることは出来だが、子猫ちゃんはワーズスが帰ってからずっと不機嫌で、周りも帰ったアイツらの話でもちきりで俺達のことを本気で祝おうとはしてこない。
くそぉ!主役の俺たちよりも目立ちやがって!
少し痩せて小綺麗になっただけだろうが!
俺を前にしてよくあんな男を見ることが出来るな!
どう考えても俺の方が美しい顔をしているだろうが!
くそくそくそ!
あんな奴らをパーティーに呼ぶんじゃなかった!
せっかくの祝いの席が台無しだ!
きっとこの日は人生で1番最悪な日になる。
そう思っていたが、この日を境に俺の人生は最悪なものへと変わっていった。
パーティーでワーズスに会った次の日から、子猫ちゃんの俺に対する態度がガラリと変わった。
俺の前ではいつも笑顔を絶やさなかったのに、ニコリとも笑うことは無くなり、俺と目線を合わせずに不機嫌そうに地面ばかりを見るようになった。
俺が気を利かせて話しかけても雑な返事しか返ってこず、最終的には「鬱陶しいので話しかけないでください」なんて言い出す始末だ。
あんなにも俺のことが好きと言っていた子猫ちゃんは一体どこに行ってしまったんだ!
何故突然俺に対してこんなにも冷たい態度を取るのかがわからない!
分かることといえば、あの生意気なワーズスに会ってから子猫ちゃんが変わってしまったということだけだ。
一体あの男と子猫ちゃんの間に何があったんだ…。
聞いても何も答えることはないし、それどころか最近では俺の事を避けるようになってきている。
俺が何をしたと言うんだ!
子猫ちゃんの態度に日々頭を悩ませていると、王城である噂を耳にした。
それは、【子猫ちゃんが別の男と褥を共にしている。それも1人ではなく複数人と…】というものだった。
いや、そんなことがあるはずがない!
手を握っただけでも頬を赤らめていた子猫ちゃんがそんな事をするはずがない!
最近の態度はおかしいが、それはきっと王子の婚約者になったというプレッシャーでそうなったに違いない!
俺の子猫ちゃんがそんな事をするなんて絶対にありえない!
そう思っていたし、そう信じていた。
だが、仕事がいつもより早く終わり、子猫ちゃんを驚かせようと彼女の部屋を訪れた時、見てしまった。
子猫ちゃんが見知らぬ男とベッドで肌を合わせている所をーーー。
「なにをしているんだ!」
「っ!で、殿下!」
声を上げれば子猫ちゃんに覆い被さっていた男が弾かれるように子猫ちゃんから飛び退きベッドから落ちる。
俺より先に子猫ちゃんの肌に触れた男に怒りが湧くが、それよりも悪びれる様子もなく退屈そうな態度を取る子猫ちゃんに衝撃を受けて上手く言葉が出ない。
「あーあ、せっかくいい所だったのに…。ホント、ルーファス様って空気が読めないですよね」
「な、なにを言っているんだ…?それよりも、何をしていたんだ」
「なにって、見ればわかるでしょ?ていうか、まだ私が純情でか弱い女だと思ってたんですか?流石に察しが悪すぎません?」
俺に対してバカにするように笑う子猫ちゃんを前に、頭がついて行かない。
663
あなたにおすすめの小説
追放された令嬢ですが、隣国公爵と白い結婚したら溺愛が止まりませんでした ~元婚約者? 今さら返り咲きは無理ですわ~
ふわふわ
恋愛
婚約破棄――そして追放。
完璧すぎると嘲られ、役立たず呼ばわりされた令嬢エテルナは、
家族にも見放され、王国を追われるように国境へと辿り着く。
そこで彼女を救ったのは、隣国の若き公爵アイオン。
「君を保護する名目が必要だ。干渉しない“白い結婚”をしよう」
契約だけの夫婦のはずだった。
お互いに心を乱さず、ただ穏やかに日々を過ごす――はずだったのに。
静かで優しさを隠した公爵。
無能と決めつけられていたエテルナに眠る、古代聖女の力。
二人の距離は、ゆっくり、けれど確実に近づき始める。
しかしその噂は王国へ戻り、
「エテルナを取り戻せ」という王太子の暴走が始まった。
「彼女はもうこちらの人間だ。二度と渡さない」
契約結婚は終わりを告げ、
守りたい想いはやがて恋に変わる──。
追放令嬢×隣国公爵×白い結婚から溺愛へ。
そして元婚約者ざまぁまで爽快に描く、
“追い出された令嬢が真の幸せを掴む物語”が、いま始まる。
---
放蕩な血
イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。
だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。
冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。
その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。
「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」
過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。
光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。
⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。
殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!
さくら
恋愛
王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。
――でも、リリアナは泣き崩れなかった。
「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」
庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。
「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」
絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。
「俺は、君を守るために剣を振るう」
寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。
灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。
答えられません、国家機密ですから
ととせ
恋愛
フェルディ男爵は「国家機密」を継承する特別な家だ。その後継であるジェシカは、伯爵邸のガゼボで令息セイルと向き合っていた。彼はジェシカを愛してると言うが、本当に欲しているのは「国家機密」であるのは明白。全てに疲れ果てていたジェシカは、一つの決断を彼に迫る。
転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!
木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。
胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。
けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。
勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに……
『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。
子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。
逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。
時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。
これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。
※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。
表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。
※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。
©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday
婚約破棄されたので辺境でスローライフします……のはずが、氷の公爵様の溺愛が止まりません!』
鍛高譚
恋愛
王都の華と称されながら、婚約者である第二王子から一方的に婚約破棄された公爵令嬢エリシア。
理由は――「君は完璧すぎて可愛げがない」。
失意……かと思いきや。
「……これで、やっと毎日お昼まで寝られますわ!」
即日荷造りし、誰も寄りつかない“氷霧の辺境”へ隠居を決める。
ところが、その地を治める“氷の公爵”アークライトは、王都では冷酷無比と恐れられる人物だった。
---
見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます
珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。
そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。
そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。
ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。
編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?
灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。
しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる