27 / 28
リックス視点
彼女のためなら変わってみせる!
しおりを挟むなんて事だ…。
薄着でどこを見ればいいのか分からない。
余計に彼女のことを見ることなんてできない。
一旦部屋に戻るか?だが、薄着の彼女を残して行くわけにはいかないし…。
とりあえず話しかけて、上着を渡そうとすれば断られる。
少し傷付きはしたが、仕方の無いことだろう。
そう思ったが、彼女が上着を断った理由は俺が想像したものでは無いらしい。
良かったと安心する一方で、本当か?という疑念も湧いてくる。
徹夜で正常に回っていない頭がその疑念を増長させていく。
本当は俺の上着を着たくないだけじゃないのか?
やはり俺の事は他の令嬢と同じで気持ち悪いんだろ…。
疑念は頂点に達しーーー。
「ワーズス様は私の婚約者になって下さった方ですし。それにとても素敵な方ですので、」
「昨日も言っていたけど、俺のどの辺が素敵だと思うんだよ!」
思わず怒鳴ってしまった。
ダメだ、何をムキになって怒鳴っているんだ俺は。
抑えなくてはいけないのに、感情が全く制御出来ない。
彼女にこんな子供みたいな姿は見せなくなかったのに。
怒鳴る俺に、マルクス嬢は静かに耳を傾け、冷静に俺との婚約は自らが望んだ物だと教えてくれた。
そして、マルクス嬢がどれほど元婚約者を嫌っていたのかもよく理解できた。
バルコニー越しに話をしていると日は昇りってしまい、これ以上外に居てはマルクス嬢の身体が冷えてしまうので話を早々に終わらせた。
部屋に戻ってから、徹夜でテンションがよく分からないことになっていることもあって、俺はベッドに文字通り飛び込み、枕を抱きしめて転がった。
マルクス嬢が!
望んで俺と婚約してくれていた!!!
俺と話しをしたかっただって!!!
どうしよう…仕事まで少し寝ようかと思っていたが、こんなの眠れるわけがない!
寝るよりも仕事がしたい!彼女に失望されないように仕事をどんどんこなしていきたい!
今の俺は無敵だ!どんな厄介な案件でもこなしてやろうじゃないか!
バルコニーでの一件から、俺は今まで以上に仕事に精を出した。そしてマルクス嬢は、そんな俺について仕事場へと来るようになった。
なんでも、結婚した後直ぐに俺の仕事を少しでも手伝えるようにという理由らしい。
なんだその可愛い理由は…!
これ程までに仕事をしたいと思う日が来るとは思わなかった。それもこれも全てはマルクス嬢のおかげだ。
認めたくはないが、あの第2王子のおかげでもあるので少しだけは感謝してやろう。
そう思っていた矢先、屋敷に第2王子から婚約パーティーの招待状が届いた。
招待状には、婚約者を必ず同席させろと書いてある。
これは、嫌な予感しかしないな。
マルクス嬢の話を聞く限り、彼女は第2王子からよく思われてはいないようだし、あまり関わったことの無い俺もあの王子から嫌われている。
これはつまり、醜い俺をパートナーにしている彼女を笑いものにしようと言うことか。
そして、あまり人前に出ることのない俺の事も。
俺一人ならどう言われても気にはしない。
だが、マルクス嬢にも関わってくるのなら話は別だ。
パーティーが開催されるのは3ヶ月後。
今から減量を頑張ればそれなりになるはずだ。
いや、ならなくても、なるんだ!
マルクス嬢の為に、俺は生まれ変わってやる!
屋敷や領民にも協力してもらい、俺の減量はスタートした。
普段しない運動を始めれば身体のあちこちから悲鳴が聞こえてくるし、食事量を減らせばお腹から悲痛な叫び声が聞こえてくる。
だが、これも全てマルクス嬢のため。
彼女の為なら、俺はなんでも出来るんだ!
減量の日々は苦しいものだった。
それでも、近くに必ずマルクス嬢が居てくれたから何とか耐えられた。
一目惚れから始まった恋だが、彼女と過ごせば過ごすほど、彼女を知れば知るほど、彼女への気持ちが大きくなっていく。
パーティーまでに無理だったとしても、俺が目標とする体重にまで落とせた時には…この気持ちを彼女に打ち明けよう。
決して叶わない恋だとしても、一度くらいは気持ちを伝えさせて欲しい。
その思いを胸に減量に励み、気付けばパーティー当日になっていた。
まだ目標体重までいっていないが、彼女が気に入った服をなんとか着れる様にまでなったので良しとしよう。
減量は続けるが、3ヶ月にしては痩せた方ではないかな。
まだ腹に肉は残っているが、ぽっちゃり程度にはなった。
マルクス嬢のおかげで肌ツヤも良くなり、彼女の助言で前髪も切って少しは見た目が良くなっただろう。
さぁ、パーティー会場へ行こうか。
707
あなたにおすすめの小説
追放された令嬢ですが、隣国公爵と白い結婚したら溺愛が止まりませんでした ~元婚約者? 今さら返り咲きは無理ですわ~
ふわふわ
恋愛
婚約破棄――そして追放。
完璧すぎると嘲られ、役立たず呼ばわりされた令嬢エテルナは、
家族にも見放され、王国を追われるように国境へと辿り着く。
そこで彼女を救ったのは、隣国の若き公爵アイオン。
「君を保護する名目が必要だ。干渉しない“白い結婚”をしよう」
契約だけの夫婦のはずだった。
お互いに心を乱さず、ただ穏やかに日々を過ごす――はずだったのに。
静かで優しさを隠した公爵。
無能と決めつけられていたエテルナに眠る、古代聖女の力。
二人の距離は、ゆっくり、けれど確実に近づき始める。
しかしその噂は王国へ戻り、
「エテルナを取り戻せ」という王太子の暴走が始まった。
「彼女はもうこちらの人間だ。二度と渡さない」
契約結婚は終わりを告げ、
守りたい想いはやがて恋に変わる──。
追放令嬢×隣国公爵×白い結婚から溺愛へ。
そして元婚約者ざまぁまで爽快に描く、
“追い出された令嬢が真の幸せを掴む物語”が、いま始まる。
---
放蕩な血
イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。
だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。
冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。
その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。
「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」
過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。
光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。
⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。
殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!
さくら
恋愛
王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。
――でも、リリアナは泣き崩れなかった。
「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」
庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。
「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」
絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。
「俺は、君を守るために剣を振るう」
寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。
灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。
答えられません、国家機密ですから
ととせ
恋愛
フェルディ男爵は「国家機密」を継承する特別な家だ。その後継であるジェシカは、伯爵邸のガゼボで令息セイルと向き合っていた。彼はジェシカを愛してると言うが、本当に欲しているのは「国家機密」であるのは明白。全てに疲れ果てていたジェシカは、一つの決断を彼に迫る。
転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!
木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。
胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。
けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。
勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに……
『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。
子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。
逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。
時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。
これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。
※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。
表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。
※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。
©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday
婚約破棄されたので辺境でスローライフします……のはずが、氷の公爵様の溺愛が止まりません!』
鍛高譚
恋愛
王都の華と称されながら、婚約者である第二王子から一方的に婚約破棄された公爵令嬢エリシア。
理由は――「君は完璧すぎて可愛げがない」。
失意……かと思いきや。
「……これで、やっと毎日お昼まで寝られますわ!」
即日荷造りし、誰も寄りつかない“氷霧の辺境”へ隠居を決める。
ところが、その地を治める“氷の公爵”アークライトは、王都では冷酷無比と恐れられる人物だった。
---
見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます
珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。
そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。
そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。
ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。
編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?
灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。
しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる