婚約解消された私は醜い公爵令息と婚約することになりましたが、今の方が断然幸せです。

しあ

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リックス視点

彼女のためなら変わってみせる!

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なんて事だ…。
薄着でどこを見ればいいのか分からない。
余計に彼女のことを見ることなんてできない。
一旦部屋に戻るか?だが、薄着の彼女を残して行くわけにはいかないし…。


とりあえず話しかけて、上着を渡そうとすれば断られる。
少し傷付きはしたが、仕方の無いことだろう。
そう思ったが、彼女が上着を断った理由は俺が想像したものでは無いらしい。


良かったと安心する一方で、本当か?という疑念も湧いてくる。
徹夜で正常に回っていない頭がその疑念を増長させていく。


本当は俺の上着を着たくないだけじゃないのか?
やはり俺の事は他の令嬢と同じで気持ち悪いんだろ…。


疑念は頂点に達しーーー。


「ワーズス様は私の婚約者になって下さった方ですし。それにとても素敵な方ですので、」
「昨日も言っていたけど、俺のどの辺が素敵だと思うんだよ!」


思わず怒鳴ってしまった。


ダメだ、何をムキになって怒鳴っているんだ俺は。
抑えなくてはいけないのに、感情が全く制御出来ない。
彼女にこんな子供みたいな姿は見せなくなかったのに。


怒鳴る俺に、マルクス嬢は静かに耳を傾け、冷静に俺との婚約は自らが望んだ物だと教えてくれた。
そして、マルクス嬢がどれほど元婚約者を嫌っていたのかもよく理解できた。


バルコニー越しに話をしていると日は昇りってしまい、これ以上外に居てはマルクス嬢の身体が冷えてしまうので話を早々に終わらせた。


部屋に戻ってから、徹夜でテンションがよく分からないことになっていることもあって、俺はベッドに文字通り飛び込み、枕を抱きしめて転がった。


マルクス嬢が!
望んで俺と婚約してくれていた!!!
俺と話しをしたかっただって!!!


どうしよう…仕事まで少し寝ようかと思っていたが、こんなの眠れるわけがない!
寝るよりも仕事がしたい!彼女に失望されないように仕事をどんどんこなしていきたい!
今の俺は無敵だ!どんな厄介な案件でもこなしてやろうじゃないか!


バルコニーでの一件から、俺は今まで以上に仕事に精を出した。そしてマルクス嬢は、そんな俺について仕事場へと来るようになった。
なんでも、結婚した後直ぐに俺の仕事を少しでも手伝えるようにという理由らしい。


なんだその可愛い理由は…!
これ程までに仕事をしたいと思う日が来るとは思わなかった。それもこれも全てはマルクス嬢のおかげだ。
認めたくはないが、あの第2王子のおかげでもあるので少しだけは感謝してやろう。


そう思っていた矢先、屋敷に第2王子から婚約パーティーの招待状が届いた。
招待状には、婚約者を必ず同席させろと書いてある。


これは、嫌な予感しかしないな。
マルクス嬢の話を聞く限り、彼女は第2王子からよく思われてはいないようだし、あまり関わったことの無い俺もあの王子から嫌われている。


これはつまり、醜い俺をパートナーにしている彼女を笑いものにしようと言うことか。
そして、あまり人前に出ることのない俺の事も。


俺一人ならどう言われても気にはしない。
だが、マルクス嬢にも関わってくるのなら話は別だ。


パーティーが開催されるのは3ヶ月後。
今から減量を頑張ればそれなりになるはずだ。
いや、ならなくても、なるんだ!
マルクス嬢の為に、俺は生まれ変わってやる!


屋敷や領民にも協力してもらい、俺の減量はスタートした。
普段しない運動を始めれば身体のあちこちから悲鳴が聞こえてくるし、食事量を減らせばお腹から悲痛な叫び声が聞こえてくる。
だが、これも全てマルクス嬢のため。
彼女の為なら、俺はなんでも出来るんだ!


減量の日々は苦しいものだった。
それでも、近くに必ずマルクス嬢が居てくれたから何とか耐えられた。


一目惚れから始まった恋だが、彼女と過ごせば過ごすほど、彼女を知れば知るほど、彼女への気持ちが大きくなっていく。
パーティーまでに無理だったとしても、俺が目標とする体重にまで落とせた時には…この気持ちを彼女に打ち明けよう。


決して叶わない恋だとしても、一度くらいは気持ちを伝えさせて欲しい。


その思いを胸に減量に励み、気付けばパーティー当日になっていた。
まだ目標体重までいっていないが、彼女が気に入った服をなんとか着れる様にまでなったので良しとしよう。


減量は続けるが、3ヶ月にしては痩せた方ではないかな。
まだ腹に肉は残っているが、ぽっちゃり程度にはなった。
マルクス嬢のおかげで肌ツヤも良くなり、彼女の助言で前髪も切って少しは見た目が良くなっただろう。


さぁ、パーティー会場へ行こうか。


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