わざわざパーティで婚約破棄していただかなくても大丈夫ですよ。私もそのつもりでしたから。

しあ

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後日談、第3王子視点 2





「お前は今日この時を持って、販売員から物資調達員へと異動する事になった」
「は…?それは、どういう意味だ?」


物資調達員?それは、山から魔石を掘り起こしたり、魔物と戦って素材を集める、言わば仕事のできないものや奴隷が着く仕事だろうが。
それをこの俺にやれと…?


「お前のせいでお客様からのクレームが酷いんだ。今そのことをエレノア様達に相談させていただいたら、次にクレームがあれば物資調達員に異動させていいと言ってくださったんだ」
「まて、俺に奴隷と共に働けと言うのか?」
「奴隷はこの国にはいないよ。アンタ元王族のくせにそんな事も知らないのか」
「うるさい!それよりも俺の上から早く退け!」
「やだね」


なんだと!この俺を椅子替わりにする気か!


「抑えていてくださりありがとうございます」
「いや、いいよ」


何を感謝しているんだこいつは!
お前のすることはまず、俺を助けることだろうが!


「そういうことだから、アンタを今から仕事場へ送る」
「送る?一体どうやって」


外には馬車もないし、移動手段などないだろうが。
やはり平民は馬鹿だな。


「移動手段ならあるよ」
「!?あ、アラン兄上!?」


何故ここに兄上が!?


「愚弟が迷惑をかけて悪かった。それじゃあ、それは預かるよ」
「それとは俺の事ですか?」
「それじゃあ、行こうか」
「うわっ、」


アラン兄上の声と共に視界が歪む。
これはアラン兄上しか出来ない転移魔法か。
一瞬で店から森に移動するなんて凄い。


「兄上、何故森に?」
「決まっているだろ?お前に物資を調達してもらう為さ。では、この紙に書いたものを取ってこい」
「あの、兄上。ここに魔物の名前があるのですが?」
「ああ、そいつの皮はいい素材になるんだ。任せたぞ」


笑顔で言われるが、着の身着のままここに連れてこられたのにどうしろと言うんだ。


「武器がないのですが…」
「腐っても元王族ならば魔術で魔物を倒すくらい出来るだろ?」
「で、ですが…!」


笑っているのに目が全く笑っていない。
いつも優しく笑っている兄上のこんな顔は初めて見る。
どうしてそんな目を俺に向けるんだ。


「終わった頃に迎えに来てやるから。さぁ、行ってこい」
「ま、待ってください兄上!」
「ああ、そうだ。お前とはもう家族でもなんでもないのだから、兄上と呼ぶのはやめてくれ」
「あ、あに…」
「呼ぶな」


今度は笑顔すらも消え、冷え切った表情を向けてくる。
何故俺が兄上からこんな顔を向けられなければいけないんだ。
周りの者達が俺の事をなんと言おうとも、兄上だけは優しく笑って声をかけてくださっていたのに…。


「俺は………お前のことが元々嫌いだったんだ。そしてお前がエレノアの婚約者になった時からお前の事が憎くて仕方なかった」
「え…?」
「ただわがままで、注意してくれるものの話も聞こうともせず、周りに迷惑をかけるだけのお前が何故エレノアの婚約者に選ばれたんだと、ずっと腹立たしかった」


そんな…嘘だ…。


「そ、そんな!兄上は、アラン兄上だけは私に優しくして下さったではないですか!」
「それはお前がエレノアの婚約者だったからだよ。意図した形とは違うが、エレノアとは家族になるのだから夫になるであろうお前にも優しく振舞っていただけだ。それ以前のことは、騒ぐお前がただただ鬱陶しかったからだよ」


そんな…そんなのは嘘だ…。
俺に優しくしてくれていた理由が、あのエレノアだと?


「だが、お前が愚かなままで居てくれたから俺は、愛するエレノアと結婚することが出来た。その事に関しては感謝している」


兄上が少しだけ笑った。
だが、その笑顔はすぐに消え、人を殺しそうなほど冷たい表情へと変わる。


「感謝はしているが、エレノアの名誉を傷付けようとしたことは許せない。それはあのディアと言う女も一緒だ。エレノアを傷付けようとする者は誰だろうと許す気は無い」


兄上から向けられた声と表情に震えが止まらない。
優しいと思っていた兄上は、今まで出会ったどの人間よりも冷たくて恐ろしい。そんな人物の逆鱗に俺は触れてしまったんだと理解する。


「そういうことだから、物資の調達頑張れよ。くれぐれも死ぬなよ。すぐ死なれちゃ罰にならないからね」
「ひっ…!」


最後にニッコリと笑って兄上は転移魔法を使って去っていった。


その後、物資調達に行って死にそうになった事は何度もあるが、兄上に怒りを向けられた時程怖いものはなかった。


どうして俺の人生はこんな事になってしまったのだろうか。
好きな物はなんでも手に入り、人を思い通りに動かしてきたはずなのに。
今では元婚約者の慰謝料を払うために魔物と戦い、食事も硬いパンと水のように薄いスープのみ。


俺は、俺は何も悪いことをしていないのに…。
何故こんなことになったんだ。


愛し合っていたディアも、俺が物資調達員になってから会うことがなくなり、風の噂でディアは劣悪な娼館で働かされていると聞いた。
だが、俺が王位継承権を失って共に平民になってからは俺を軽んじることが多くなり、外で男を作っていたのも知っていたからディアの事を聞いても、俺を軽んじる行動をしたのだから当然の報いだとしか思わなかった。


それよりも、俺が捨ててやるはずだったエレノアがアラン兄上と結婚してから魔道具商会を開きかなりの儲けを出し優雅に暮らしている事が何よりも納得がいかない。


なぜあの女だけが幸せになっているんだ。


くそ、くそぉ…。
アイツと婚約破棄しなければ、こんな事にはならなかったのに……。


ちくしょう……いつまで俺は、魔物を狩り続けなきゃいけないんだ………。


感想 12

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みんなの感想(12件)

ヤン
2025.06.02 ヤン

 バカ王子の後日談と対比でディアの後日談もあれば面白いのに😈

 でもなんかディアの後日談はなんか違う人の後日談になりそうな気がする💧

〈妄想劇場〉ディアの後日談?
 クソッ‼️
 あたま悪そうな第3王子を落として、今の婚約者に冤罪の疑いをかけて嵌めれば、『王子の婚約者』になれると思ったのに……。

「あのバカ王子なら簡単に落とせる上、〈第3王子だから『王子妃教育』もさほど難しくはないだろう〉し、バカ王子と結婚したら贅沢し邦題だわ😆🎶✨」

って浮かれていた自分が馬鹿みたいじゃないの(≧口≦)ノ

 私の家は限りなく子爵家に近い〈貧乏〉伯爵家………。
 だから私は一生楽して暮らせる〈お金持ちと結婚〉したかったのよ。
 でも実際は平民に落とされて毎日、〈明日、食べる食料を購入出来るか〉〈今住んでいる借家の来月の家賃を払えるだろうか〉っていう事ばかり考えている。

 しかも町に住んでる平民の女性には白い目で見られ、平民の男性には汚物扱いや娼婦扱い……。

 なんで私がこんな目に?

 そう思ってたらある日、知らない男に肩を捕まれてレイプされそうになった。
 でもその時、身なりの良い紳士が助けてくれたの😭

 そうだ😃💡
 バカ王子からこの人に乗り換えよう‼️

 バカ王子は今、魔道具材料の調達係だからほとんど帰ってこないし、問題ないよね😆

 私は助けてくれた紳士を『逃すまい』とダラダラと引き留め、なんとか次に会う約束を取り付け、何度か会っているうちに彼を落とすことに成功したの。

 でも彼は『愛してもいない女性と結婚しなきゃ行けなくなった』とか、『本当は君と結婚したい、だから駆け落ちしよう』と言われた。

 ただ、駆け落ちする前に『役所に結婚届けを出したいから署名してほしい』と言われた〈書類をロクに見ずに署名欄にサイン〉をした。

 駆け落ちの日、そこに現れたのは結婚を誓った紳士ではなく女衒だった。

 私が文句を言うと女衒は私が身売りの書類にサインしたことを理由に娼館に売り飛ばしたのだ。

 ーある人物の後日談ー 

?は机の上の書類を処理しながら部下に聞く。
『終わったのか?』
部下『はい、これで両方とも処理が終わりました』
?『そうか、愚弟と浮気女には妻への慰謝料の為にしっかり働いて貰わないといけないからな』
?は嘲笑った。

終り

解除
椎葉朱夏
2024.04.22 椎葉朱夏

国王なら、奥様は王妃ではないでしょうか?
作者様独自の世界観なのかもしれませんが、気になってしまったので……💦

お話自体はすごく面白かったです😊
エレノアが淡々と証拠映像を流してるところなんて特に😂
第3王子とはいえ王族の婚約者ならば、高位貴族のご令嬢だろうに(笑)

2024.04.23 しあ

コメントありがとうございます!
純粋に言葉選びを間違っているだけでした…😅
教えていただけて嬉しいです!
ありがとうございます😄

作品を楽しんでいただけて良かったです!
この作品を見つけて下さりありがとうございます😊

解除
ひゅふぁ
2024.04.21 ひゅふぁ

第3王子が意外と有能で、驚きました。
着の身着のままの格好で、森に放り出され、魔物討伐できて、かつ役目を全うしているっぽい。

それから、余計だったら申し訳ないのですが、
「後日談、第3王子視点2 」の後半部分で、
「だが、俺が王位を失って平民に〜」とあるのですが、王子位か王位継承権ではないでしょうか。
        

2024.04.22 しあ

コメントありがとうございます!
確かに良く考えれば有能でしたね笑

ご指摘ありがとうございます!
全然気付いていませんでした…。
教えていただけて嬉しいです!

解除

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