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しおりを挟む先輩を見て切なくなったり、「好きです」なんて間違っても言ってしまわないように。明日から学校ですれ違えば会釈する様な先輩後輩の関係に戻らないと。
そうしないと、きっと先輩を困らせてしまう。
好きな人を困らせたくないし、この気持ちは涙を拭いたティッシュと一緒にゴミ箱に捨ててしまおう。
寝そべりながら魔法でティッシュを浮かせてゴミ箱まで移動させれば綺麗に中に入った。
「やった…」
浮遊魔法はあまり得意ではなかったのに、こんなに上手くコントロール出来るなんてやるじゃん私。
こんなに綺麗に魔法でティッシュを捨てられたんだから、きっとこの気持ちもすぐに綺麗に捨てられるはず。
なんて思っていたけど…思いの外恋慕の情は消えてくれず、先輩を見れば胸が傷んで無意識に足が先輩から離れていき、気付けばあれから2週間ほど先輩を避け続けてしまった。
といっても、きっと先輩は私と会わなかったとしても何とも思って居ないだろうから、私から避けられている事なんて気付いていないだろうな。
今日も今日とて、先輩を視界の端で捉えれば、一緒にいる友達に教室に忘れ物をした、なんて嘘をついてその場から離れる。
そうやって避け続けて気付いた事がいくつかある。
私と先輩は学年が違うはずなのに、高確率で廊下をすれ違いそうになる。
付き合う前は先輩のことを全く意識していなくて気付かなかったけど、学年が違ったとしても同じ廊下を使う事があるんだと知った。
そのおかげで教室を移動する時は高確率で遠回りをする羽目になる。学年が変われば使う校舎も変わるって聞いたけど、あれは違ったのかな。
それと、先輩はチャラそうな見た目で中身も違わずチャラいのに、放課後によく図書室で本を読んでいることが多い。
お付き合いしている時も、よく図書室で勉強を教えてくれたけど、あれは私の為にわざわざ来てくれたんじゃなくて、単にここに来慣れてるってだけだったんだと気付いた。
他にも、ランチは購買派ではなく食堂派だということ。
食堂は人が多いからあまり利用しないと、初めてランチを奢ってもらった時に言っていた気がするけど、案外そうでもなかったのかもしれない。
それとも、私と毎日のように利用するようになって食堂の良さに気付いたのかもしれない。
図書室とランチに関しては意外だなぁ。
なんて思いながらも、図書室と食堂が使えないので地味に辛い。
借りようと思っていた本は借りられないし、食堂が使えないので割高な購買で適当なものを買って、友達と別れて1人で寂しく外のベンチで食べるしかない。
きっと先輩は私の事なんて何も気にしていないだろうから、今まで通り図書室も食堂も利用すればいいのだろうけど、無意識に足が動いてしまうのだからしょうがない。
一体いつまで避け続ければ、この厄介な気持ちと不可解な行動は止まるんだろうか…。
今日も放課後に図書室へ入れずとぼとぼと自室へと向かっていると、スマホが通知を伝えるために振動する。
画面を見れば、部活があるからとさっき別れた友達のミラから。
『今日の夜は外に食べに行かない?』
夜に外食か、たまにはいいかもしれない。
最近は先輩に会わないように朝も晩もミラに食堂から部屋にご飯を持ってきてもらって一緒に食べてるし、ミラも部屋でばかり食べるの飽きたのだろう。
今日は金曜日で明日は休みだから、門限を過ぎない程度に遅くまで外に行ってもいいかもしれない。そう思って手早く返事をする。
『いいね!何時くらいに行く?』
送ればすぐに集合時間と場所を書かれたメッセージが返ってくる。
学校の外に出るのは先輩と別れた日以来だな。と悲しい記憶を思い出しかけて頭を横に振る。
あの日の事を思い出すのはやめよう。
せっかくミラとの楽しい外出なのに感傷に浸りたくない。
あれはもう終わったこと。
あの日のことは忘れて出かける用意をしよう。
服はどうしようかな…。
私が持っている服の中で1番可愛いのは先輩に貰ったワンピースだけど、これはもう着られないかな。
手に取ったワンピースを置いて、いつも通りのパーカーとジーズというかなりラフな格好に着替え、化粧もせずに待ち合わせ場所へと向かう。
待ち合わせ場所は転移門前。
少し早めに着きそうだけど、ミラは先輩と違っていつも10分前には待ち合わせ場所で待ってるからそんなに待つことはないだろう。
そう考えてから、先輩を引き合いに出して考える自分に苦笑する。
別れた日から先輩のことを考える時間が長くなって来たというか、何をしても先輩はこうだったとか、先輩ならこうするかな。なんて考える自分は本当に末期なのかもしれない。
気持ちを捨てようとしているのに、会ってさえいないのに、ますます先輩のことが気になってしまうなんて意味がわからない。自分から別れを告げたのに未練がましいな。
「はぁ…今日は限界まで食べてみるかな…」
そうすれば少しでも先輩のことを考えずに済むかもしれない。
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