賭けで付き合った2人の結末は…

しあ

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「そんなこと言っても、リディアは少食だからそんなに食べらんないでしょ」
「まぁ、そうなんですけど…………え!?」


誰にも拾われることがないと思っていた呟きはしっかり拾われていた。しかも、今まで私が避けていた人物によって。
ここ最近聞き慣れていた声が聞こえて思わず振り返って固まる私に、先輩はいつも通りへらっと軽く笑って手を振ってくる。


「久しぶり。じゃ、行こうか」
「へ?え?」


隣に来てサラッと私の腰に手を回して転移門へと足を進めていこうとする先輩に驚いて言葉にならない声が出る。


ちょっと待って、なんで先輩がここにいるの?
なんで当たり前のように転移門に行こうとしているの?


避けていたはずの先輩が突然目の前に現れて、別れる前と同じように接してこられて困惑する。
だけど、先輩に流されて連れていかれる前に伝えなければならない事がある。


「ル、ルシオ先輩!私、友達と約束してますので!」
「あ、それは俺がリディアと話したいからミラちゃん?だっけに頼んで誘ってもらっただけだから安心して」
「ど、どういう…」
「どうもなにも、リディアが俺の事避けるからじゃん。ブロックされてて連絡も取れないし、会おうとしても全然会えないしさ」
「え、先輩がどうして私に会う必要が…」
「それも含めて色々お話しよっか!」


語尾に星でもつきそうな軽い言い方をしているけど、目の奥が全然笑っていない。これは怒っている…?
私なにか先輩を怒らせることしたっけ…?
メッセージだけで別れましょうって言ったのが良くなかった?やっぱりこういうのは面と向かって伝えるのが礼儀だった?


あ、そういえば、メッセージを送った時は冷静じゃなかったから、「先輩からフッたという事にしてください」って書くのを忘れていた!
そのせいで私からフラれたって事になって、賭けを一緒にしていた先輩の友達に笑われてプライドが傷付いたとか…。


あ、ありえる!
それに対して文句を言いたいのに、ブロックされてるし避けられてるしで言いたくても言えなくて怒っているんだ!
先輩に迷惑をかけないようにと思っていたのに、しっかり迷惑をかけてしまっていたなんて…悲しい。


これはしっかり先輩からの文句を聞いて謝罪しなければいけない。
そう覚悟を決めて、私は抵抗をやめて素直に先輩と一緒に転移門をくぐった。


転移門をくぐって街へと行けば、先輩はいつの間にか指を絡めて私の手を握った。これは所謂恋人繋ぎというものだと思うのだけど…何故この繋ぎ方?
こんな繋ぎ方今までされたことがなかったのに、というよりも手を繋いだのも数える程しかなかったはずなのに、何故今になってこのつなぎ方をされているのだろう?


意図が分からずチラッと先輩の顔を伺えば、先輩は変わらず何を考えているか分からない笑みを浮かべているだけだった。


前に手を繋がれた時は、はぐれると面倒だからという理由だった。という事は、これは指を絡めて更にはぐれにくくしてやったから逃げるなよ、ということなのかな。
別に逃げるつもりなんてないから手も繋がなくていいように思うけど、2週間ほど先輩から逃げ回ってたせいでそこら辺の信用が無くなったのかもしれない。


そんなことを考えながら先輩に引っ張られるまま歩いていると、1軒のレストランへと連れて行かれた。
いつも行くような安っぽい店ではなく、ドレスコードがありそうな高級感溢れるレストランで場違い感が凄まじくて思わず後退しそうになる。
だけどそれは許さないとばかりに、先輩は繋がっている手を引いて案内された席へと進んでいく。やっぱりこの手はリード的なものだったのか!


「そんな緊張しなくていいから、肩の力抜きなよ」


強引に席へと座らされた後、先輩はゆったりと正面の席に座って呆れたように笑いながら言ってくる。


「無理を仰る…。ここ絶対私のような小娘が来るようなところじゃないですって」
「小娘って…。別にそこらのレストランと変わんないじゃん」
「いやいや、変わりますよ!どう見てもここドレスコードとかありますよね?」


席に案内される間に見たお客さん達は誰もがドレスやタキシードを着用していた。


「私、パーカーとジーンズ姿なんですけど…。場違い過ぎですよ」
「あ、そういやそんな姿珍しいね。いっつもスカートとかカワイイ系の格好してたけど、そんな姿も似合ってるね。可愛い」
「か、かわ…!?」


な、何を言っているんだろうこの先輩は…!
こんなラフ過ぎる姿にか、可愛いとか何言ってんの!
というか、今まで私に対して可愛いとか1度も言ったことありませんでしたよね!?
私は貴方に惚れているんだから、軽率に嬉しくなるような言葉を言わないで欲しい!こっちは貴方に対する恋心を捨てようと必死なのに!バカなんですか!?自分の顔面を1度じっくり鏡で見てほしい!イケメンが写ってるから!軽率に惚れさそうとしないで!



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