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しおりを挟む「…先輩の話ってなんですか」
「それは料理来てからゆっくり話そっか。いろいろ聞きたいこととか言いたいことあるし」
そう言ってニッコリと笑う先輩に口元が引つる。
やっぱり怒ってるよね、これ。
ここに来てからは機嫌良さそうに見えたのに、本題に入るよう促そうとすると笑っている目の奥に怒りの感情が見え隠れする。
人に感情を読ませない先輩がここまで分かりやすいとか怖すぎる…!そんなに私に対してお怒りなのか!
怖い…。怒られる覚悟でここに来たけど、出来ることなら今すぐ帰りたい。
普段怒らない人が怒ると怖いっていうのを身に染みて感じる。
「そんな警戒しないでよ。俺も悪かったところがあるとは思ってるしさ。てか、ほとんど俺が悪いんだけど、やっぱ納得いかないからなさ、話し合いたいんだよね」
「そ、そうですか…」
一体何を?と言いたいけど、どうせこの後すぐに話すことになるだろうし、怒っている先輩をあまり刺激したくないので曖昧に頷いて膝の上に置いている手に視線を移す。
「さっきも言ったけど、そんなラフな格好もいいね。俺そういう格好も結構好きかも」
「そうなんですか。てっきり先輩はカワイイ系の服装が好みなのかと思っていました」
「え?もしかして今まで俺に会う時に着てた格好って、俺のため?」
「え、あ、えっと!い、一応賭けに勝つためとは言え、付き合っていることになっていたので、相手に合わせるべきかと思って…」
先輩に気に入られようと思って服装を選んでいたなんて、貴方に好意がありますと言っているようなもの、と気付いて慌ててしどろもどろになりながらもそれっぽい言い訳をしてみる。
そうすれば、何故か自分の為に服装を選んでいたと知って嬉しそうにしていた表情が一転し、すごくつまらなそうな顔をする。
「ああ、賭け…ね。てか、付き合っていることになってたって、なんで過去形?俺は別れたつもりないんだけど」
「………はい?え?私、送りましたよね?別れましょうって」
別れたつもりがないって一体どういうこと?
いつも浮かべている笑みをけし、真剣な表情でそんな事を言う先輩に戸惑いが隠せない。
「あんなんで納得できるかよ…」
ボソッと呟かれた言葉に首を傾げる。
納得が出来ないと言われても、どうすれば良かったのか分からない。今まで人とお付き合いしたことなんてなかったから、もしかして恋人と別れるのにはもっと違う方法を取る必要があったのかな?
でも、私達は普通の恋人というわけでもなかったのだから、それくらいでいい気がしたのだけど、ダメだったという事?
「あの日約束通り行けなかった事は本当に悪いと思ってるし、リディアが許してくれるまで何をしてでも償うよ。けど、急に別れたいって言われても納得出来ないし、したくない」
「…どうしてですか?元々の期限だった3ヶ月は経ってますし、それに…」
一旦言葉を切って、あの日のことを思い出して泣いてしまわないようにグッと手を握ってから口を開く。
「それに、先輩には私なんかよりもずっとお似合いで可愛い彼女がいるじゃないですか」
「は?」
「それなのに、私と別れたくないって、ちょっと意味がわからないです。あの人と一緒にいる先輩はとても楽しそうでしたし、私と居るより絶対にいいと思います。でも、まさか彼女がいるなんて驚きましたよ」
「いや、ちょっと待って」
「いるならいるって言って下さいよ。賭けのこと、ちゃんと彼女さんに話していたんですか?」
出来るだけ何ともないというように、親しい先輩に話すように軽い口調で話し続ける。
先輩が少し焦った様に何かを言おうとしているのは分かっているけど、何故だか口が全然止まってくれなくて次から次へと言葉が溢れてくる。
「私、恋人同士のいざこざに巻き込まれたくないですよ?恨まれて刺されるとかホント勘弁ですよ」
「いや、本当に待って!俺の彼女はリディアだけだから!可愛い彼女って何!?」
「なにって、あの約束した日に腕を組んで歩いていたじゃないですか。彼女さんを愛おしそうに見つめながらお話していたの見ましたよ。先輩あんな顔も出来たんですね」
「腕組んで……あ、」
やはり心当たりがあるのか、先輩は一瞬固まったかと思うと、次の瞬間違う!と言いながら慌て出す。
「いや、あれは本当に違うから!!」
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