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ルシオ視点 4
しおりを挟む「じゃ、デートの用意があるから俺はここで」
「デートというか拉致では?」
小さく呟かれたリアちゃんの言葉は聞こえなかったフリをして自室へと戻る。戻ってからはデートの用意。
これがリディアと話す最後のチャンスになるかもしれない。
いや、絶対にそうさせないようにするつもりだけど、万が一ってこともある。念には念をいれておかないとな。
話し合いの場所は、あの最悪な日みたいに誰かに邪魔なんてされたくないから、学生が気軽に入れないウチのレストランが良い。この時ばかりは親があそこを経営してくれてることに感謝したくなる。
電話をすれば最優先で席を用意してもらえたから場所の確保は出来た。
後は服装。
大事な日だし、ビシッと決めたい気持ちはあるけど、あまりキメ過ぎるとリディアが萎縮するだろうから程よくラフな格好が良いか。髪型も少しだけ整えて。
ま、こんなもんだろ。と自分の姿を鏡で見返して最終チェックをする。時間を確認すれば、約束の時間まで後30分。
デートの時はいつもリディアが先にして待っていた。きっと集合時間より早く来るはずだから、待たせないように集合場所へと向かう。
予定の時間まで後25分。
あと少しでリディアにやっと会えるのだと思ったら、なんか柄にもなくソワソワする。リディアに会ったら何から話そう。
とりあえず、まだ別れてないって伝えるか?いや、それよりリディアのことが本気で好きだから、本当の恋人になって欲しいって伝える?いや、それより先にあの日遅刻してしまったことへの謝罪が先か。
謝罪して、好きだって伝えて…あ、そういやあの仲良さげな男について聞かないとな。アイツマジでなんなんだよ、リディアに惚れてんじゃねぇよ。いや、リディアは可愛くて性格もいいから惚れる気持ちは分かる。お前人を見る目あるよって言いたい。
けど、距離が近すぎて無理。なにリディアの前であからさまに好意向けてんだよ。リディアが鈍感じゃなきゃ今頃気持ちに気付かれてんぞ。気付かれるなよ。億が1にもお前とリディアが付き合うなんて事はありえないけど、その億が1が起きたらどうしてくれる。俺がいない間にリディアの隣取ろうとすんなよ。
つか、今からリディアに会うのにあの男のことを思い出したせいで腹立ってきたし。どうしてくれんだよ。あの浮き足立った気持ち返せや。
理不尽な怒りを向けてることは自覚しているが、ふつふつと湧き上がってくる黒い感情が制御出来ない。
ああ、イライラする。
せっかくリディアに会えるのにイラつくとかありえねぇわ。
「はぁ…今日は限界まで食べてみるかな…」
ふと聞こえてきた声に、一瞬で怒りが消えて頬が緩みそうになる。てか、確実に緩んでる。
あんまり量が食べられないのになに可愛いこと言ってるんだか。
何かを考えながらこちらに向かってくるリディアを見て、今度こそ表情筋が緩む。
リアちゃんと食べに行くって思ってるからなのか、パーカーとジーンズという見慣れないラフな格好をしているリディアに気付かれないように音を消して近付く。
いつも俺と出かける時はスカート履いてるし、結構可愛い服装だったけど、実はラフな格好が好きなのかもしれない。今の格好はすごく自然体って感じだし、なんかしっくりくる。
いつも見ていた服装も可愛くて好きだったけど、こういうのも全然良い。つか、リディアが可愛いから何着ても似合うと思う。
てか、待って。
俺とデートだったから態々着慣れない服装してたってこと?何それ可愛過ぎる。なのに俺は何回もドタキャンしてたとか、マジでぶん殴りてぇ過去の自分。勿体なさすぎるだろ。
いや、今はそんな後悔よりもリディアに逃げられない事が最優先だからそれは一旦置いておこう。
「そんなこと言っても、リディアは少食だからそんなに食べらんないでしょ」
「まぁ、そうなんですけど…………え!?」
ポカンとこちらを見てくる顔が可愛い。
久しぶりに間近で顔が見れて声が聞けるだけで幸せな気持ちで満たされていく。そんな幸福感を逃がさないようにーーー。
「久しぶり。じゃ、行こうか」
「へ?え?」
リディアの腰を掴んで転移門へと誘導する。
慌てるリディアも可愛い。
必死にリアちゃんと約束があるからと訴えてくるけど、残念、それは俺が頼んだ事なのでリアちゃんはここへは来ない。
困惑しているリディアに話をしようと言えば少し怯えられる。
しまった、話をしようと言った時にあの男子生徒の事を思い出してしまったから、きっと俺の目は全然笑えてなかったんだろうな。話をする前に怯えさせてどうすんだよ俺…。
こんなんじゃ、リディアにまた逃げられるかもしれない。
なんて思ったけど、それは杞憂だったようでリディアは素直に俺に着いてきてくれた。
素直に着いてきてくれるリディアに嬉しくなって、転移門を潜る直前に指を絡めて手を繋いでみた。
門をくぐった後も振り払われない事に安心して繋ぎ続ける。
そういえば、リディアと手を繋ぐ時はいつも俺からだったな。
今まで付き合った子達は全員向こうから手を繋いできて、その手を何度も鬱陶しいと思った事がかある。
それなのにリディアには自分から手を繋ぎにいって離さなかったなんて、その頃からリディアの事めちゃくちゃ好きじゃん、俺。なんで最近になるまで自分の気持ちに気付かなかったのか不思議だわ。鈍感過ぎて呆れる。
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