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ルシオ視点 5
しおりを挟む手を繋ぎながらレストランの前まで行けば、リディアがあからさまに緊張しだす。
「そんな緊張しなくていいから、肩の力抜きなよ」
こういう所は来慣れていないだろうから緊張するのは無理も無いかもしれない。しかもドレスコードガン無視の格好してるし余計にね。けど今はリディアとの話を誰にも邪魔されたくないから、緊張するリディアを引っ張って席に着く。
メニュー選びでは金がないと言われたけど、好きな女の子に出させるわけないじゃん。ここのメニューはそれなりの値段するけど、それくらい余裕で払えるくらいには稼いでるっての。
ま、リディアがそんなこと知るわけないだろうから、俺に負担をかけまいと自分で支払いするつもりだったんだろうな。
そんなとこもいじらしくて本当に好き。
2週間も会えなかったせいか、無性にリディアに触れたくなる。
頭を撫でてから頬を撫でれば、リディアの可愛い頬が薄らと赤く染る。恥ずかしかったのか誤魔化すように水を飲む姿も愛おしい。
ずっと見つめていたいけれど、きっと見つめ過ぎると恥ずかしがってこっちを見てくれないだろうから、そっと視線を外して注文をする。
料理が来るまでの間、リディアは俺の話がなにか聞き出そうとしていたけど、聞きたいことや言いたいことが多過ぎて、正直何から話すかまだ決まっていない。
先に謝罪をして、別れたい理由を聞いて…って、もしかして俺と別れたい理由って賭けの期間が終わったからじゃなくて、今日見た男子生徒か…?
は?嘘だろ?あんな奴より俺の方が何倍もリディアを幸せにできるし。え?今まで幸せにしてこなかっただろ?うるせぇ、今からするんだよ!
なんて脳内でなく噛み付いていると、リディアが脅えた顔をする。
マズイ!またやってしまった。
取り繕うように笑っても曖昧な頷きだけしか返ってこないので、慌てて話題を変えてみる。
「さっきも言ったけど、そんなラフな格好もいいね。俺そういう格好も結構好きかも」
「そうなんですか。てっきり先輩はカワイイ系の服装が好みなのかと思っていました」
「え?もしかして今まで俺に会う時に着てた格好って、俺のため?」
「え、あ、えっと!い、一応賭けに勝つためとは言え付き合っていることになっていたので、相手に合わせるべきかと思って…」
マジかよ…。そうかなとは思ったけど、なにこの可愛い子。健気かよ。言うこと可愛すぎて心臓止まるかと思ったわ。
でも、賭けという単語と付き合っている関係を過去として話すリディアに気持ちが落ち込む。
「ああ、賭け…ね。てか、付き合っていることになってたって、俺は別れたつもりないんだけど」
「………はい?え?私、送りましたよね?別れましょうって」
「あんなんで納得できるかよ…」
リディアの言葉に、思わず漏れてしまった声が彼女に届いたのかは分からない。だけど、ハッキリと俺の気持ちを伝えておかなきゃいけない。
「あの日約束通り行けなかった事は本当に悪いと思ってるし、リディアが許してくれるまで何をしてでも償うよ。けど、急に別れたいって言われても納得出来ないし、したくない」
「…どうしてですか?元々の期限だった3ヶ月は経ってますし、それに…………それに、先輩には私なんかよりもずっとお似合いで可愛い彼女がいるじゃないですか」
「は?」
は?今なんて?リディアよりお似合いの可愛い彼女?なにそれ?知らないんだけど?
「それなのに、私と別れたくないって、ちょっと意味がわからないです。あの人と一緒にいる先輩はとても楽しそうでしたし、私と居るより絶対にいいと思います。でも、まさか彼女がいるなんて驚きましたよ」
「いや、ちょっと待って」
「いるならいるって言って下さいよ。賭けのこと、ちゃんと彼女さんに話していたんですか?」
いや、本当に待ってほしい。
彼女に話すって、俺の彼女はリディアだけなんだけど?マジでリディアの言ってる彼女って誰だよ。変な勘違いさせやがった女は誰だよふざけんな。
「私、恋人同士のいざこざに巻き込まれたくないですよ?恨まれて刺されるとかホント勘弁ですよ」
「いや、本当に待って!俺の彼女はリディアだけだから!可愛い彼女って何!?」
「なにって、あの約束した日に腕を組んで歩いていたじゃないですか。彼女さんを愛おしそうに見つめながらお話していたの見ましたよ。先輩あんな顔も出来たんですね」
「腕組んで……あ、」
え、マジで?あの時見られてたの?
いや、マジでタイミング悪過ぎだしあの女マジで許さねぇ。あの女のせいであの日リディアに会えなくて別れまで告げられたとか一生恨む。髪の毛全て枝毛になる魔法薬でも飲ましてやろうかマジで。
けど、あの女への報復よりも先にリディアに伝えるべきことがある。
「いや、あれは本当に違うから!!」
自分がこんなに大声を出せるなんて知らなかった。
だけど、それくらいしっかりと伝えておきたかった。
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