嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。

しあ

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10、今日はもう疲れた…


「リアム様は、食物アレルギーをお持ちのようです」
「アレルギー?なんですかそれは?」


え、アレルギーってこの世界では認知されてないの?まさか、アレルギーを知らないなんて…。なら、私の行動が不審に思われても仕方ないのか。


皇帝以外も「なんだそれは?初めて聞いたぞ」という反応が伺える。これは、アレルギーとはなんだ、という所から説明しないといけないのか…。


「アレルギーとは、特定のものが肌に触れたり、体内に入った際、くしゃみや発疹、嘔吐や下痢といった様々な症状を引き起こすものです」
「そんな話、初めて聞きましたが」


嘘を言っているんじゃないか。と言いたげな顔を隠しもせず皇帝が言ってくる。


「貴方が初めて聞いたとかは知りませんが、現に、リアム様は、食物アレルギーを起こしておられると思います」
「そんな、リアムが…!」
「どうしてそんなことが分かるのですか」


ショックを受けるイザベラ様と、まだ疑った顔をしている皇帝に、リアム様に断って、リアム様の身体を見せる。


「ご覧下さい。リアム様の身体に発疹が出来ています。これは、アレルギー症状の1つです。また、食事を始める前には口元に発疹が出ていなかったのに、食べ始めてから出てきています」
「確かに…ここに来る前には無かったように思います…」
「それは本当かイザベラ?」
「はい、確かです」
「…皇后よ、そのアレルギーと言うのが出た場合、どうすればいいのですか」


イザベラ様の言葉に、皇帝が少しだけ話を信じる気になったようだ。


「とりあえず、口内はゆすぎ、食べていた物を口に入れなければこれ以上悪化することは無いと思います。みたところ、アナフィラキシーも起こってなさそうなので良かったです」
「アナフィラキシー?なんですかそれは」
「アレルギー症状が強く出た場合の重篤な症状です。最悪の場合、死ぬこともあるのですが、咳は出ていないようなので、おそらく大丈夫かと」


アレルギーが認知されていない世界で、アナフィラキシーショックを起こした時に打つエピペンが存在するとも思えないし、本当にアナフィラキシーじゃなくて良かった。


「リアム様、すぐにお医者様が来られると思うので、それまでもう少しお待ちくださいね」
「はい。ありがとうございます、皇后陛下」
「いえ、私は出来ることをしただけのことです」


ちゃんとお礼が言えるなんて賢い子だ。これは絶対イザベラ様の血だろうな。皇帝に似てたらお礼なんて言えるはずがない。


その後、医者が往診してくれて、リアム様はやはり食物アレルギーだと言うことが判明した。


「しかし、特定の物を口に入れて身体に悪影響を及ぼすという事が最近医学界で解明されたばかりなのに、よくご存知でしたね」
「…たまたま知っていただけです」


医者が感心するように言ってくれるが、この身体になる前は保育園で栄養士をしていたので知っていて当然の知識だっただけだ。


だけど、そんなことは言えないので適当に流しておく。


「皇后陛下は噂とは違い、博識なお方ですね。やはり、噂なんて真剣に聞くものでは無いですね。皇后陛下はわがままで無知だなんて」
「ははは…」


いや、きっとその噂は間違っていないような気がする。そして、記憶の中の私にそんなことを言えば、今頃この医者の首は比喩ではなく飛んでいただろう。


「それより、アナフィラキシーを起こす前の症状をどのようにお知りになったのですか?私達でさえ知りえなかったと言うのに」
「あははは、どうしてでしょうねぇ」
「まさか、アレルギーが起こるメカニズムまでご存知なのでありませんか?」
「いや、まさかぁ」


アレルギーが体を守る防御反応だなんて言えるわけが無い。それに、アナフィラキシーの前に咳が出るのは口から入った物の場合だとも言えない。


根掘り葉掘り聞かれてはボロが出てしまいかねないのでもう本当に勘弁して欲しい。そう思っていると、タイミングよくアイリが泣いてくれた。


ママを助けてくれるなんて、なんていい子なの!


「あの、娘が泣いていますので、私は失礼させていただきます。では、リアム様、お大事になさって下さい」
「はい、ありがとうございました」
「ルビア様、私からもお礼を言わせて下さい。息子を救っていただきありがとうございました」
「いえ、大事にならなくて本当に良かったです。では、失礼致します」


ただ出来ることをしただけなので、感謝されるのはなんだかむず痒い。それに、感謝の言葉を言ってくれるのが美人な親子だから余計に照れてしまう。


照れているのを隠すように、マーガレットに抱かれたアイリの元まで行ってアイリを受け取る。そして、礼を取って退出する。


退出する時に、なにか物言いたげな顔をした皇帝と目があったが、色々と追求されるかもしれないので無視し部屋へと戻る。


「ごめんね、アイリ。お腹空いたよね、待っててくれてありがとうね」


食事をしてすぐ帰る予定だったのに、思いの外時間が経っていようだ。


ああ、本当に疲れた。医者を待ってる間ずっと皇帝に睨まれるし、食事の時も、向こうの家族団欒を邪魔しかしていない気がして全然落ち着かなかった。


でも、リアム様のトマトアレルギーが周知されただけでも良かったと思おう。


医者の問診で今までも同じような症状になったことはあると言ってたし、きっとこれからはトマトを食卓に出さないように気を付けてもらえるだろうからもう安心だ。


「アイリ、今日はママ、ちょっとは人の役に立てたと思うよ。褒めて~」


お乳を飲みながら寝そうになっているアイリの頬をつついてそう言えば、マーガレット達がクスリと笑う。


リアム様を助けられたのは良かったけど、やっぱり私はここでアイリやマーガレット達と一緒にいる方が落ち着くな。


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