嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。

しあ

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12、また皇帝が来た…




「ルビア様、陛下が来られたようですが、どうされますか?」
「お通しして」


皇帝の来訪を聞いて、またか…。と思うが、アイリが父親に会える機会を潰してしまうのは可哀想なので会うしかない。


「朝にすいません…」


珍しくアポ無し訪問の謝罪をしたかと思うと、何故だか私の顔をまじまじと見てくる。


「なんですか?私の顔になにか着いていますか?」
「いや…酷い隈だと思いまして…」


あまり寝ていないのだから、隈くらい出来るのは仕方ないだろうと思うが、皇帝は眉をひそめながら隈を見てくる。


「見苦しいから化粧をして隠せとでも言いたいのですか?」
「い、いえ、別にそういうわけでは無いです」


どこか焦ったように言う姿が余計に怪しい。曲がりなりにも皇后なのだから、身なりに気を付けろとでも言いたいのか。


もしそんなことを言われたら本当にうんざりする。もう皇帝の小言なんて聞き飽きたから、いつも通りアイリを見て早く帰ってもらおう。


「アイリ、皇帝陛下が来られたよ」


アイリを抱いて皇帝の前まで行って見せてあげる。そうすれば、いつも通り "では、私はもう行く" と言って出ていくはずだ。


「皇后は…子供が好きなのですか?」
「はい?好きか嫌いかで言われましたら、好きな方ですが…」


それがなに?というか、まだ行かないの?


いつもと違う行動をする皇帝を不審に思う。


質問なんてして、一体何が目的なんだろう。私の粗探しでもしようとしているのか。


「そうですか…。子育ては大変ですか?」
「初めての事なので慣れない部分はありますが、マーガレット達が居てくれますので、そこまで大変ではありません」


マーガレット達がいつもミルクや沐浴の用意、それらやオムツの処理までしてくれるので、私は本当に楽しかしていない。


前世なら、これに家事仕事も入ってくるはずなのに、それも無いし、これで大変なんて言ってしまうと、前世のワンオぺママさん達に申し訳なさすぎる。


「身体の調子はどうですか?」
「問題ないと思います。いつもしっかり寝いてますし、ミルクもしっかり飲んで、排便や排尿も出ていますので、至って良好かと」
「そういうことではありません」


ならどういう事だ。
まさか、私がアイリに手を上げてないかどうかを心配しているのか?それなら、全く心配無用なんですけど。前までの印象が悪過ぎるのは分かるけど、虐待を疑われるのは心外だ。


「どこにも痣などはありませんよ。なんなら、今この場で見ていただいても構いませんよ」
「いえ、だからそういう訳ではないです」
「なら、なんですか」


不機嫌そうな声に、こちらも眉間にシワが寄ってくる。一体何が知りたいんだ、この人は。


「ですから……皇后の体調はどうなのですか」
「はい…?私、ですか?特に問題はありませんが?」


どうして今更私の体調なんて気にするんだ。それに、今日はどうして私に質問なんてしてくるんだ。いつも通りアイリを見て直ぐに立ち去ってくれればいいのに…。


「はぁ…目の下にそんなにも隈を作ってよく問題ない、と言えますね。お飾りだとはいえ、皇后として見た目も気にする必要があると思うのですが?」
「…隈なら、化粧でいくらでも隠せます」
「そういうことではありません。育児をするのは勝手ですが、隈を作る様なやり方は避けてください。みっともなく隈なんて、皇后としての自覚が足りないのではありませんか?」


それはどういう意味だ。責めるような言い方をしてくる皇帝にイラッとする。


皇室や貴族の家では子供を乳母に見てもらうのが当たり前で、母親が直接子育てをする事は無いからそんなことを言ってくるのかもしれないが、私にしてみれば、念願の子育てなのだ。


寝不足で隈が出来ようと自分自身で子供を育てたいのに、どうしてそんなことを言ってくるんだ。


皇帝も言っている通り、私はお飾りで何も仕事を回されないお飾りの皇后という立ち位置だ。だから、別に皇帝に迷惑を掛けている訳では無いから隈を作ろうが別にいいじゃないか。


それに、隈が出来無いように子育てするって、どうすればいいんだ。隈が出来ない様に効率よく子育てをしたり、睡眠時間を作る方法があるの?あったとしても、私は今していることが精一杯でそんなやり方は出来ない。


それって、私が母親として力不足だから?私は、私なりに精一杯しているつもりなのに…。どうしてそんなにも私がすることなすこと全てに文句をつけてくるの。


前までの私の態度が悪かったからかもしれないけど、今はこちらから無理に関わろうともして居ないし、迷惑だってかけていないつもりだ。なのに、勝手に来てはいちいち文句を言ってきて…。


皇帝の言動を無視すればいいだけだと思うのに、なんだかまた泣きそうだ。こんな男の前でなんて泣きたくないのに。


泣きたくなんて…無いのに…。


「っ、」


気持ちとは裏腹に涙が静かに流れてくる。止めようとしても全然止まってくれない。


「ど、どうし…」
「ミリアナ、ジェーン、ルビア様をお願い。私はルミリオ陛下を追い出すから!」
「「はい!」」



皇帝が何かを言う前に、マーガレットがミリアナとジェーンに指示を出し、戸惑う皇帝の背中を押して部屋の外へと連れていってくれた。


「大丈夫ですよ、ルビア様。ルビア様は立派にアイリ様を育てておられますから」
「そうです!隈が出来るほどしっかりアイリ様の事を見られていると言うことですから、子育てをしたことの無い人の話なんて気にし無なくていいですからね!」
「うん…ありがとう、2人とも…」


ミリアナとジェーンの言葉に救われる。


本当に2人がいてくれて良かった。皇帝を追い出してくれたマーガレットも。


「うー」
「アイリも心配してくれているの?ありがとうね」


それに、アイリも居てくれてよかった。みんなが居るから、この世界でも私は何とかやっていけるとひしひしと実感する。


皇帝にはムカつく事しかないけど、皇帝さえ居なければ、ここは本当に居心地のいい場所だ。





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