83 / 99
83、気まずい…
しおりを挟む皇帝と顔を合わせるのは本当に久しぶりだ。最後に会ったのがあの夜だったから、何を話していいのか…。
傷の調子はどうですか?
あの時、助けて下さりありがとうございました?
イザベラ様のことで、傷付いてませんか?
会えない事に寂しさを感じていたけど、会えるとは思っていなかったタイミングで来られると、戸惑いが勝って上手く話出せない。それに、楽しむためのピクニックで真面目な話をするのも変だし…。
本当に何を話そう…。
突然の登場でジェーンもミリアナもかしこまっちゃって空気が少し重くなっちゃったし、空気を変えるためにも私が何か言わないと。
「その…」
「父上、このダシマキタマゴ?と言う食べ物がすごく美味しいよ!食べてみて!」
「ああ、分かったいただこう」
「どう?美味しい?」
「ああ…美味いな」
「でしょ?じゃあ、次はこれ食べてみて!」
そうやってリアムが皇帝に次々と料理を勧めてくれるおかげで、皇帝の気まずそうだった表情も次第に柔らかくなっていった。
「お母様の料理はどれも美味しいでしょ」
「そうだな」
何故かリアムが誇らしげに言ってくれる言葉に、皇帝も柔らかく微笑みながら同意する。
そういえば、リアムはいつから皇帝に敬語を使うのを止めたんだろう。前はずっと皇帝に対して硬い口調だったはずなのに。
「アイリもお母様のご飯ならよく食べるんだよ」
「そうだな。アイリは皇后が作る食事をいつもよく食べているな」
そう皇帝が返せば、リアムが少し不機嫌そうな顔になる。
「ねぇ、父上はいつまでお母様の事を皇后って呼ぶの?お母様のこと、どうして名前で呼ばないの?」
口を尖らせながら質問してくるリアムに、皇帝の表情が固まる。そして私もなんとも言えない顔になる。
元々名前を呼びたくない程ルビアの事を嫌っていた…基、嫌うように仕向けられていたから、名前で呼ばない事の理由を聞かれても困るよね。
それに、そう仕向けられていたことを知ったとしても、急に呼び方を変えるなんて難しいだろうし、これは答えにくい質問だな…。
「リアム、皇帝陛下を困らせるようなことを言うのは止めようね」
「むっ、お母様も、どうして父上の事を皇帝陛下って呼ぶの?他の人は名前で呼んでるのに!」
ぐっ、私にも流れ弾が来るとは思っていなかった…。
「僕、お母様と父上には仲良くしてほしいのに」
「そんな、別に私達は仲が悪いわけじゃないよ?」
「そうだ、別にそこまで仲は悪くないぞ」
リアムの言葉に慌てて否定するけど、納得がいかなかったようで、リアムがマーガレットに同意を求めるように話しかける。
「嘘だ。だって、お母様と父上は全然仲良さそうじゃ無いよね?」
「そうですね。どう贔屓目に見ても、他人以上、友達未満のような間柄に見えますね」
「ぐっ、」
「うっ、」
マーガレットに痛い所を突かれて皇帝と一緒に変な声が出てしまう。
「城内の雰囲気も良くなってきたことですし、これからは夫婦の時間を持たれるのはどうでしょう」
「ふう!?」
「な、何を言っているんだ!子供の前で!」
「あら?私は夫婦として親睦を深めるために、お話やお茶の時間を日常的に取られるのはどうかと提案したつもりですが……一体ルミリオ様は、何を想像されたのですか?」
マーガレットを注意したはずなのに、逆に返り討ちにされてた皇帝は次の言葉が出てこないようだ。かく言う私も、皇帝と同じようなことを想像してしまったので、恥ずかしさで何も言えなくなってしまう。
「……食事も頂いたし、私はこの辺で失礼…」
「まだお開きには早いですし、今からでもルビア様と親睦を深めるために、お2人で散歩されてはどうですか?」
「な、なにを…」
「いや、別に今じゃなくても…それに、アイリももうすぐお昼寝の時間だし…」
「アイリ様でしたら、私達が付いておりますのでご心配なさらないでください」
笑顔でそう言い切られてしまえば、アイリを口実に皇帝と2人きりの時間を避けることが出来ない…。
「私は…残してきた仕事が…」
「ありませんよね?あったとしても、俺だけで片付けられる様なものなので安心して行ってきてください」
いつの間に来ていたのか、アレックスさんがマーガレットにそっくりな笑顔で皇帝の逃げ道を塞いでくる。
「たまには夫婦水入らずで過ごすのもいいんじゃないですか?ね、リアム様もそう思いますよね?」
「僕とアイリも一緒に行きたいけど、お母様と父上が仲良くなるなら良いよ」
何も良くないよ!
というか、なんで二人で行くことが決定事項みたいになってるの!?アレックスさんも何言ってるの!?
「じゃ、ルミリオ様も皇后陛下も楽しんできて下さい!」
「おいアレックス、何を言って…」
「ルビア様、日焼けするかも知れませんので、傘をどうぞ」
「マーガレットまで…」
ロンダ親子に背中を物理的に押され、リアムにも「楽しんできてね」と言われて皇帝と二人で散歩するしかなくなってしまった。
いや、別に皇帝と話したくないとかそんなことは思ってない。思ってけど、今まで避けられていたからなんて話せばいいか本当に分からない!
どうすればいいの、この状況!
489
あなたにおすすめの小説
【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい
廻り
恋愛
第18回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。応援してくださりありがとうございました!
王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。
ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。
『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。
ならばと、シャルロットは別居を始める。
『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。
夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。
それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。
〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?
藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。
目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。
前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。
前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない!
そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────
私、この子と生きていきますっ!!
シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。
幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。
時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。
やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。
それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。
けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────
生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。
※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜
雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる