84 / 177
暗躍組織 〈捜索編〉
80話 雲のような犯罪者
しおりを挟む
「こちらです」
建物2階の奥にある取調室に案内された。そこでは、今日捕まった犯人を、これから、取り調べをするところだったが、マリ達の登場で、その部屋を明け渡す形になった。そして、そこの扉を開けた、その時だった。
取り調べ室の床に男が倒れていた。シャルルは驚いて、大声で
「おい、男が倒れているぞ、救急で医者を呼んで来い!」
男は、口の中の歯に忍ばせていた毒を飲んだようで、体がケイレンを起こしていた。それを見てイブが、
「シャルルどけ、生きているうちに情報をさぐる」
急いで、その男の頭をさわり、
「おい、お前は誰に頼まれたんだ。そいつは今どこにいるんだ」
イブの手が赤く光り、その男の意識をさぐろう必死だった。
「ユウキ、ほんの一瞬でいい、こいつを正常な状態に戻してくれ、頼む」
それを聞いてマリがすぐに
「ユウキ!イブの言った通りにして!」
「了解!ほんの一瞬なら、正常に戻せる、少し待て」
ユウキはポケットから球体を取り出し、その男にかざした。
「イブ30秒が限界だ。その時間で探ってくれ」
「それだけあれば十分だ」
イブは先ほどと同じことを繰り返し、話しかけ、犯人の意識内をサーチした。
そして、しばらくして、その男は死んでしまった。
マリとユウキはイブを見て
「どうだった?イブ何かわかった?」
イブは短時間で意識を探ったせいで、とても疲れた様子で
「マリ、全部ではないけど、だいたい、わかったわよ」
イブが話し出した時に緊急で警察医が駆けつけたが、男の体を調べ、すぐに死亡が確認された。
その様子をマリ達は見つめながら、悪人とはいえ、命をかけてまで、任務を達成しようとした、この男に敬服した。そして、命を捨ててまで、秘密を守るこの男がどのような組織に属していたのか、いったい、これから何をしようとしていたのか、考えずにはいられなかった。
取り調べ室は、警察職員でいっぱいになり、マリ達は廊下に出て、少し離れたところに行った。
そして、イブも落ち着きを取り戻し、わかったことを話しだした。
「まず、この男の名はオズワルドといい、アッダムの使徒という組織に属していた。
どうやら、こいつらは、3人で行動しており、このチームのリーダーはキールという名前で、
現在、中東のムセビアに向かっているようだ」
ユウキは思い出したように
「ムセビアといえば、あのアハド大統領がいる国だな」
「そうだ、しかし、こいつらの組織はやっかいなことに、一人一人に細かい指示をその都度だすのみで、全体の計画がまるでわからない。本当は昨日捕まえた、ジャックがムセビアについたら、このオズワルドがジャックに指令をだして、任務を実行させ、時間差でこのオズワルドがムセビアに着いたら、今度はこのキールが指令を出す、そして、キールがムセビアに着いたら、また、上の人間が指令を出すという流れで、それぞれは、ターゲットとなる人を一人殺すのみで、その行為がどんなことに繋がるのか、全く知らされていない」
マリは、こんな手の込んだことをするこの組織は、普通では考えられないし、なにか、恐ろしいことが起きるのではないか考えてしまった。
「それじゃあ、イブ、これからどうするの?その男を追いかけるの?」
イブは少し考えて
「マリ、これは、ちょっと複雑な事件になってきたよ」
ユウキは何やら、もったい付けて話すイブに
「なんだよ。いつもみたいに、言いたいことがあれば、すぐに言えばいいだろ。珍しく考えこんじゃって」
「はあ~、お前は能天気でいいな、オズワルドの意識に触れていないから、そんなことが言えるんだ。こいつらの血の結束は異常なほど、気味が悪いぞ」
マリは、ユウキ同様、早く、イブの話が聞きたくて、
「イブ、考えるのもいいけど、どうせなら、全部話してから、みんなで考えたほうがいいんじゃない、私はともかく、ユウキはたくさんの経験があり、いつも的確なアドバイスをしてくれるよ」
イブはチラっとユウキを見たが、思い出したように
「マリ、そういえば、エマはどこに行った?どうせなら、エマにも聞いてもらったほうがいい」
「そうだね、今、電話してこっちに来てもらうね、どうせなら、そこの空いている会議室で座って話そうか」
マリはすぐにエマに連絡して、2階の空いている会議室まで来てもらった。
「エマ、どこに行ってたの?もう、大変だったんだよ」
「すみません大将、セドリックがトイレに行ってたもので、この子を一人にすると、どこに行くかわからないので」
マリは少し笑いながら
「それじゃあ、せっかくだから、セドリックも一緒に聞いてよ」
セドリックはイブがいるのがわかって、少しおびえたように頷いた。
「イブ、これで、みんな揃ったよ。さっきの話の続きをお願い」
「了解、その前に、エマ、せっかく逮捕した犯人だけど、さっき毒を飲んで死んでしまったよ」
「本当かい!」
「それと、死ぬ前にあの男の意識内に入り、情報をある程度、掴むことができたよ。これから、それを話すから、意見があれば、遠慮なく言ってよ」
「わかった」
「あの男、オズワルドは本当は先に逮捕されたジャックがするはずだった仕事を代わりにするはずだった。そして、オズワルドも捕まった今、その上のキールが中東の国、ムセビアに向かい、代わりに任務を実行しようとしている」
エマはその話を聞きながら
「なんだか、ずいぶん慎重な組織だね、まるで、人を信用していないし、まるで、人を使い捨てのように扱うんだね」
「でも、そこが、こいつらのすごいところだよ。これじゃ、いくら犯人を捕まえても次から次へと犯人が出てくるんだから、頭がいたいよ」
ユウキも珍しく、困った顔をした。
「そうだな、それもそうなんだが、オズワルドの意識が消える中、最後にそのターゲットの一人の名前がわかった」
セドリックが自分も仲間外れにされたくない思いで
「わかった~、そのムセビアの大統領を暗殺するんだ、そうでしょ、イブさん」
イブはセドリックを睨みつけ
「おい、お前は黙って聞いてろ。そして、お前の考えは全く違う」
セドリックはまた、イブにしかられ、下を向いた。
「そのターゲットはフランス陸軍諜報部所属トニー少尉という人物だ」
マリは首をかしげ、
「なんで、そんな人をターゲットにしたんだろう?諜報部の人を殺して、何がしたいんだかわからないね」
イブも頷き
「そうなんだ、なんで、わざわざ、危険をおかしてまで、フランス諜報部の人間を殺そうとしているのかがわからないんだ」
「諜報部の人間は、その国にすぐになじみ言葉もそうだが、体術や武器など、あらゆることに対応できるスペシャリストだ。殺すこともそうだが、みつけることも困難なはず、いったいどうやって、仕留める気なんだ」
そして、エマがまた、思い出したように
「それと、イブさん、オズワルドがこの警視庁にスムーズに入れたのは、この警察に手引きした仲間がいるんじゃないかね。そっちの方はわからないかね?」
「そっちは全くわからなかったわ。でも、こいつらの仲間は普段は普通の人で、指令があると、急に変貌するようだから、もしかすると、近くにも、まだ仲間がかなり、いるかもしれないわね」
マリはその話をを聞いて
「本当に近くにいたら、ぞっとするね」
ユウキは話を取りまとめるように
「よし、ここじゃあ、もう、なにも得る物はないから、局に戻ろう。エマ、明日の朝、カミーユ大尉達が来たら、この話をしてもらって、え~と、トニー少尉の現在の所在を確認させてください」
「わかったよ、指示しておく、それと、なんか、この件はきな臭い感じがするから、アベル大臣にも話をしておくよ、大将、それでいいですよね」
「はい、お願いします」
警視庁内は犯人の自殺の件でバタバタしており、マリ達はシャルル警部補に軽く挨拶をして警視庁をあとにした。
建物2階の奥にある取調室に案内された。そこでは、今日捕まった犯人を、これから、取り調べをするところだったが、マリ達の登場で、その部屋を明け渡す形になった。そして、そこの扉を開けた、その時だった。
取り調べ室の床に男が倒れていた。シャルルは驚いて、大声で
「おい、男が倒れているぞ、救急で医者を呼んで来い!」
男は、口の中の歯に忍ばせていた毒を飲んだようで、体がケイレンを起こしていた。それを見てイブが、
「シャルルどけ、生きているうちに情報をさぐる」
急いで、その男の頭をさわり、
「おい、お前は誰に頼まれたんだ。そいつは今どこにいるんだ」
イブの手が赤く光り、その男の意識をさぐろう必死だった。
「ユウキ、ほんの一瞬でいい、こいつを正常な状態に戻してくれ、頼む」
それを聞いてマリがすぐに
「ユウキ!イブの言った通りにして!」
「了解!ほんの一瞬なら、正常に戻せる、少し待て」
ユウキはポケットから球体を取り出し、その男にかざした。
「イブ30秒が限界だ。その時間で探ってくれ」
「それだけあれば十分だ」
イブは先ほどと同じことを繰り返し、話しかけ、犯人の意識内をサーチした。
そして、しばらくして、その男は死んでしまった。
マリとユウキはイブを見て
「どうだった?イブ何かわかった?」
イブは短時間で意識を探ったせいで、とても疲れた様子で
「マリ、全部ではないけど、だいたい、わかったわよ」
イブが話し出した時に緊急で警察医が駆けつけたが、男の体を調べ、すぐに死亡が確認された。
その様子をマリ達は見つめながら、悪人とはいえ、命をかけてまで、任務を達成しようとした、この男に敬服した。そして、命を捨ててまで、秘密を守るこの男がどのような組織に属していたのか、いったい、これから何をしようとしていたのか、考えずにはいられなかった。
取り調べ室は、警察職員でいっぱいになり、マリ達は廊下に出て、少し離れたところに行った。
そして、イブも落ち着きを取り戻し、わかったことを話しだした。
「まず、この男の名はオズワルドといい、アッダムの使徒という組織に属していた。
どうやら、こいつらは、3人で行動しており、このチームのリーダーはキールという名前で、
現在、中東のムセビアに向かっているようだ」
ユウキは思い出したように
「ムセビアといえば、あのアハド大統領がいる国だな」
「そうだ、しかし、こいつらの組織はやっかいなことに、一人一人に細かい指示をその都度だすのみで、全体の計画がまるでわからない。本当は昨日捕まえた、ジャックがムセビアについたら、このオズワルドがジャックに指令をだして、任務を実行させ、時間差でこのオズワルドがムセビアに着いたら、今度はこのキールが指令を出す、そして、キールがムセビアに着いたら、また、上の人間が指令を出すという流れで、それぞれは、ターゲットとなる人を一人殺すのみで、その行為がどんなことに繋がるのか、全く知らされていない」
マリは、こんな手の込んだことをするこの組織は、普通では考えられないし、なにか、恐ろしいことが起きるのではないか考えてしまった。
「それじゃあ、イブ、これからどうするの?その男を追いかけるの?」
イブは少し考えて
「マリ、これは、ちょっと複雑な事件になってきたよ」
ユウキは何やら、もったい付けて話すイブに
「なんだよ。いつもみたいに、言いたいことがあれば、すぐに言えばいいだろ。珍しく考えこんじゃって」
「はあ~、お前は能天気でいいな、オズワルドの意識に触れていないから、そんなことが言えるんだ。こいつらの血の結束は異常なほど、気味が悪いぞ」
マリは、ユウキ同様、早く、イブの話が聞きたくて、
「イブ、考えるのもいいけど、どうせなら、全部話してから、みんなで考えたほうがいいんじゃない、私はともかく、ユウキはたくさんの経験があり、いつも的確なアドバイスをしてくれるよ」
イブはチラっとユウキを見たが、思い出したように
「マリ、そういえば、エマはどこに行った?どうせなら、エマにも聞いてもらったほうがいい」
「そうだね、今、電話してこっちに来てもらうね、どうせなら、そこの空いている会議室で座って話そうか」
マリはすぐにエマに連絡して、2階の空いている会議室まで来てもらった。
「エマ、どこに行ってたの?もう、大変だったんだよ」
「すみません大将、セドリックがトイレに行ってたもので、この子を一人にすると、どこに行くかわからないので」
マリは少し笑いながら
「それじゃあ、せっかくだから、セドリックも一緒に聞いてよ」
セドリックはイブがいるのがわかって、少しおびえたように頷いた。
「イブ、これで、みんな揃ったよ。さっきの話の続きをお願い」
「了解、その前に、エマ、せっかく逮捕した犯人だけど、さっき毒を飲んで死んでしまったよ」
「本当かい!」
「それと、死ぬ前にあの男の意識内に入り、情報をある程度、掴むことができたよ。これから、それを話すから、意見があれば、遠慮なく言ってよ」
「わかった」
「あの男、オズワルドは本当は先に逮捕されたジャックがするはずだった仕事を代わりにするはずだった。そして、オズワルドも捕まった今、その上のキールが中東の国、ムセビアに向かい、代わりに任務を実行しようとしている」
エマはその話を聞きながら
「なんだか、ずいぶん慎重な組織だね、まるで、人を信用していないし、まるで、人を使い捨てのように扱うんだね」
「でも、そこが、こいつらのすごいところだよ。これじゃ、いくら犯人を捕まえても次から次へと犯人が出てくるんだから、頭がいたいよ」
ユウキも珍しく、困った顔をした。
「そうだな、それもそうなんだが、オズワルドの意識が消える中、最後にそのターゲットの一人の名前がわかった」
セドリックが自分も仲間外れにされたくない思いで
「わかった~、そのムセビアの大統領を暗殺するんだ、そうでしょ、イブさん」
イブはセドリックを睨みつけ
「おい、お前は黙って聞いてろ。そして、お前の考えは全く違う」
セドリックはまた、イブにしかられ、下を向いた。
「そのターゲットはフランス陸軍諜報部所属トニー少尉という人物だ」
マリは首をかしげ、
「なんで、そんな人をターゲットにしたんだろう?諜報部の人を殺して、何がしたいんだかわからないね」
イブも頷き
「そうなんだ、なんで、わざわざ、危険をおかしてまで、フランス諜報部の人間を殺そうとしているのかがわからないんだ」
「諜報部の人間は、その国にすぐになじみ言葉もそうだが、体術や武器など、あらゆることに対応できるスペシャリストだ。殺すこともそうだが、みつけることも困難なはず、いったいどうやって、仕留める気なんだ」
そして、エマがまた、思い出したように
「それと、イブさん、オズワルドがこの警視庁にスムーズに入れたのは、この警察に手引きした仲間がいるんじゃないかね。そっちの方はわからないかね?」
「そっちは全くわからなかったわ。でも、こいつらの仲間は普段は普通の人で、指令があると、急に変貌するようだから、もしかすると、近くにも、まだ仲間がかなり、いるかもしれないわね」
マリはその話をを聞いて
「本当に近くにいたら、ぞっとするね」
ユウキは話を取りまとめるように
「よし、ここじゃあ、もう、なにも得る物はないから、局に戻ろう。エマ、明日の朝、カミーユ大尉達が来たら、この話をしてもらって、え~と、トニー少尉の現在の所在を確認させてください」
「わかったよ、指示しておく、それと、なんか、この件はきな臭い感じがするから、アベル大臣にも話をしておくよ、大将、それでいいですよね」
「はい、お願いします」
警視庁内は犯人の自殺の件でバタバタしており、マリ達はシャルル警部補に軽く挨拶をして警視庁をあとにした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
12
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる