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暗躍組織 〈捜索編〉
81話 暗殺
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7月も近づき、パリの街はお祭りが多く、場所によっては人が多いが、夏休みが長いため、多くのパリジャンが街を離れて、別の場所で休暇を過ごすため、公共の交通機関など、普段より、だいぶ、人が少なくなってきていた。そんな中、パリの外れに位置する、この治安情報局に
いつもの朝が来た。
「ボンジュール、チュ」
フランスでは女と男があうとビス(北フランスのパリは右頬から南は左頬から)男同士は握手が決まりで、朝は必ず一人ずつ行うのが普通だ。
「アンナ、少しは元気が戻ったみたいだな」
「はい、あまり、クヨクヨ考えていても、しょうがないですからね」
朝、九時になり、カミーユ大尉のチームは全員、情報棟の2階職務室に出勤した。
「よ~し、先週は事件がひとつ解決したから、また、皆で次はどの事件を調査するか決めよう」
その時、3階からエマの秘書アンドレが降りてきた。
「皆さん、エマがミーティングルームで緊急の要件があるから、すぐに来るように言っています。速やかに移動してください」
「了解!」
こんな月曜日の朝から、収集があるなんて、いったい、どんな話があるのか、皆、驚いた様子で、すぐにミーティングルームに移動した。
「よ~し、みんな、そろったね」
エマは全員の顔を確認して、大声で話し始めた。
「先週の土曜日に犯人を逮捕したが、昨日、その犯人を口封じにパリ警視庁にまた、仲間と思われる男が侵入、たまたま、そこに居合わせた、私とアンドレがその侵入者を捕獲した。その後、局長達が侵入者の男を取り調べすることになったが、その直前に口の中に忍ばせていた毒を飲んで、その侵入者は死亡してしまった。これから、その侵入者が所属していた組織の暗殺計画を止めるために、局長から指示があるので、皆に伝える」
カミーユ大尉達は驚いた様子で
「え、昨日、そんなことがあったんですか?」
「局長達は土曜日の夜の連絡があって、そのまま日曜日も、犯人捜査をしていたんですか、
我々にも、言ってくれれば、いいのに」
エマは笑いながら、
「イブさんが、部下は休ませる時はしっかり、休んでもらい、動く時はしっかり動いてもらう。そして、我々上官たるもの、皆の手本となる行動を常に行う、それが組織というものだと言っていたよ」
カミーユ大尉達は、また、イブが来たら、ここぞとばかりに嫌みを言ってくるなと想像してしまった。
「おっと、いけない、その前に、皆に再度、紹介させてもらうよ。ほれ、セドリック挨拶しな」
セドリックはこの日のために、スーツ姿でビシっと決めて、少し緊張しながら、挨拶をした。
「皆さん、本日より、正式にこの治安情報局に配属になりました、セドリック・バテンタールです。局長の許可をもらい、ここでは、技術開発部門を担当させていただきます。皆さんが仕事で役立つ物や特殊な物でも、依頼があれば、全力で対応します。私は、理学・工学・物理学などに精通しております。それで、朝早く、こちらに来まして、建物を確認させていただき、この棟の1階の空きスペースをいただき、技術開発室として利用させていただきます。これから、よろしくお願いします」
「ねえ、セドリックはスパイ映画で言うような、特殊な物も作れるの?車に銃やミサイルを装備したり、車が見えなくなったり、あと、背中に機械をつけて、空を飛んだりなんて、そんなこともできるのかな?」
セドリックは自信満々で
「大丈夫ですよ。材料さえ、そろえられれば、できますよ。なんでも、言ってください。その代わり費用は結構かかりますよ」
「費用はね、ここでは、仕事に必要な物なら、気にしなくていいみたいだから、でも、後で必ず、ユウキさんに詳細は報告しないとダメだけどね」
セドリックはワクワクした顔で笑った。エマは以前の会社で毎日、死んだような顔していた、息子とは大違いだと思い、それを見て、とても、嬉しく思った。
「それじゃあ、話を進めるよ。アンドレ、昨日、イブさんが作ってくれた、画像を出してくれるかい」
「はい、わかりました」
アンドレは、PCから、壁面に埋め込まれたモニターにイブが昨日作った画像を映し出した。
「昨日、イブさんとユウキさんが苦労して、侵入者が亡くなる前にその男の意識から、犯人の手掛かりになる物を完全ではないが、だいたい、確認することができた。まず、モニターに映し出された、この男、アッダムという組織のメンバーでキールという名前だ。最初に逮捕したジャック、そして、侵入者のオズワルド、それぞれが、本当はムセビアに行き、暗殺の仕事をする予定だったが、逮捕・死亡したため、現在はこのキールという男がムセビアに向かい、代わりに暗殺の任務を実行するようだ。この組織はおそらく、世界中にメンバーが散らばっており、それぞれが与えられた仕事のみを完遂するだけで、全体の計画や目的は全く知らされていない、そのため、今回のように犯人を逮捕しても、逮捕しても、次から次へと別の犯人が現れ、切りがない仕組みになっているようだ。皆には、このキールという男を探すこともそうだが、アンドレ次の画像出してくれるかい」
「はい、わかりました」
「暗殺のターゲットになっているこの男、フランス陸軍諜報部トニー少尉を見つけることを最優先で動いてもらいたい。そして、なにか、わかれば、大将、いや局長にその情報をPCから、送ってほしいと指示があった。カミーユ大尉、チームを指示して、大至急、調査・捜索を頼む」
アンナ軍曹はもちろん、カミーユ大尉達は、この間、話していた、トニーがこんなところで
出てきて、とても驚いた様子で
「エマ、このトニーは、アンナ軍曹の知り合いですよ」
「なんだって!それは本当かいアンナ」
「はい、そうです。大尉達にも話はしていたんですが、このトニーは昔の教官仲間です。以前、私も同じところで教官をしていたんですけど、先日、トニーがもうすぐ軍を退官するはずだったので、会いに行ったんですけど、そこにはもういなくなっており、トニーの上官もその理由を教えてくれなかったんです。でもトニーはわたしと同じ軍曹だったはずです。どう考えても士官学校にも行ってないトニーが少尉になること事態おかしいです」
「そうかい、確かに変だね、そりゃあ、アンナ、そのトニーっていうのは、なんか、特技はあったのかい?」
「はい、体術における近接戦では、軍ではトニーにかなうものはいなかったと思います。
私も、素手同志なら、いい勝負ができますが、ナイフなどを持たせたら、とても、トニーにはかないませんでした。あと、お母さんが中東の方の出身で、そこの国の言葉も話せるけど、フランスでは全く、役に立たないとか、言って笑ってましたね」
「なるほどね。ムセビアに行かせるには、ちょうど都合いい人物というわけだね」
「都合のいい人物?」
「そうさ、今、ムセビアは世界で最も不安定な危険な国と言われ、核兵器の所有や国内での内戦や、それにより、国民は疲弊し、虐殺などもあり、国連やNATOも危険国家として指定し、うわさだが、NATOの国の諜報員が秘密裏にムセビアへの核や化学兵器などの確認、または、行方がわからない、アハド大統領の捜索に入りこんでいるようだ。だからトニーは現地語が話せて、容姿もあの国では違和感がないし、近接戦にも優れているから、都合がいい人間ということになる。おそらく、昇進もそうだが、トニーはかなりの好条件を提示され、この潜入捜査を承諾したと思うよ。その上官も秘密裏に行うこの作戦をむやみに話すことはできなかったんだろうね」
アンナは、あんなに優しかったトニーがいくら好条件だったとしても、こんな危険な任務引き受けただろうか、実家が農家で、父と一緒に働くことを楽しみにしていたのに・・・
「アンナ、そんな不安そうな顔をするな、局長からの命令ということは、トニーはこの治安情報局が全面的に守ってあげることにもつながるんだぞ」
アンナは嬉しそうな表情をして
「了解!大尉、早くトニーを見つけましょう」
チームはすぐに捜索を開始した。
いつもの朝が来た。
「ボンジュール、チュ」
フランスでは女と男があうとビス(北フランスのパリは右頬から南は左頬から)男同士は握手が決まりで、朝は必ず一人ずつ行うのが普通だ。
「アンナ、少しは元気が戻ったみたいだな」
「はい、あまり、クヨクヨ考えていても、しょうがないですからね」
朝、九時になり、カミーユ大尉のチームは全員、情報棟の2階職務室に出勤した。
「よ~し、先週は事件がひとつ解決したから、また、皆で次はどの事件を調査するか決めよう」
その時、3階からエマの秘書アンドレが降りてきた。
「皆さん、エマがミーティングルームで緊急の要件があるから、すぐに来るように言っています。速やかに移動してください」
「了解!」
こんな月曜日の朝から、収集があるなんて、いったい、どんな話があるのか、皆、驚いた様子で、すぐにミーティングルームに移動した。
「よ~し、みんな、そろったね」
エマは全員の顔を確認して、大声で話し始めた。
「先週の土曜日に犯人を逮捕したが、昨日、その犯人を口封じにパリ警視庁にまた、仲間と思われる男が侵入、たまたま、そこに居合わせた、私とアンドレがその侵入者を捕獲した。その後、局長達が侵入者の男を取り調べすることになったが、その直前に口の中に忍ばせていた毒を飲んで、その侵入者は死亡してしまった。これから、その侵入者が所属していた組織の暗殺計画を止めるために、局長から指示があるので、皆に伝える」
カミーユ大尉達は驚いた様子で
「え、昨日、そんなことがあったんですか?」
「局長達は土曜日の夜の連絡があって、そのまま日曜日も、犯人捜査をしていたんですか、
我々にも、言ってくれれば、いいのに」
エマは笑いながら、
「イブさんが、部下は休ませる時はしっかり、休んでもらい、動く時はしっかり動いてもらう。そして、我々上官たるもの、皆の手本となる行動を常に行う、それが組織というものだと言っていたよ」
カミーユ大尉達は、また、イブが来たら、ここぞとばかりに嫌みを言ってくるなと想像してしまった。
「おっと、いけない、その前に、皆に再度、紹介させてもらうよ。ほれ、セドリック挨拶しな」
セドリックはこの日のために、スーツ姿でビシっと決めて、少し緊張しながら、挨拶をした。
「皆さん、本日より、正式にこの治安情報局に配属になりました、セドリック・バテンタールです。局長の許可をもらい、ここでは、技術開発部門を担当させていただきます。皆さんが仕事で役立つ物や特殊な物でも、依頼があれば、全力で対応します。私は、理学・工学・物理学などに精通しております。それで、朝早く、こちらに来まして、建物を確認させていただき、この棟の1階の空きスペースをいただき、技術開発室として利用させていただきます。これから、よろしくお願いします」
「ねえ、セドリックはスパイ映画で言うような、特殊な物も作れるの?車に銃やミサイルを装備したり、車が見えなくなったり、あと、背中に機械をつけて、空を飛んだりなんて、そんなこともできるのかな?」
セドリックは自信満々で
「大丈夫ですよ。材料さえ、そろえられれば、できますよ。なんでも、言ってください。その代わり費用は結構かかりますよ」
「費用はね、ここでは、仕事に必要な物なら、気にしなくていいみたいだから、でも、後で必ず、ユウキさんに詳細は報告しないとダメだけどね」
セドリックはワクワクした顔で笑った。エマは以前の会社で毎日、死んだような顔していた、息子とは大違いだと思い、それを見て、とても、嬉しく思った。
「それじゃあ、話を進めるよ。アンドレ、昨日、イブさんが作ってくれた、画像を出してくれるかい」
「はい、わかりました」
アンドレは、PCから、壁面に埋め込まれたモニターにイブが昨日作った画像を映し出した。
「昨日、イブさんとユウキさんが苦労して、侵入者が亡くなる前にその男の意識から、犯人の手掛かりになる物を完全ではないが、だいたい、確認することができた。まず、モニターに映し出された、この男、アッダムという組織のメンバーでキールという名前だ。最初に逮捕したジャック、そして、侵入者のオズワルド、それぞれが、本当はムセビアに行き、暗殺の仕事をする予定だったが、逮捕・死亡したため、現在はこのキールという男がムセビアに向かい、代わりに暗殺の任務を実行するようだ。この組織はおそらく、世界中にメンバーが散らばっており、それぞれが与えられた仕事のみを完遂するだけで、全体の計画や目的は全く知らされていない、そのため、今回のように犯人を逮捕しても、逮捕しても、次から次へと別の犯人が現れ、切りがない仕組みになっているようだ。皆には、このキールという男を探すこともそうだが、アンドレ次の画像出してくれるかい」
「はい、わかりました」
「暗殺のターゲットになっているこの男、フランス陸軍諜報部トニー少尉を見つけることを最優先で動いてもらいたい。そして、なにか、わかれば、大将、いや局長にその情報をPCから、送ってほしいと指示があった。カミーユ大尉、チームを指示して、大至急、調査・捜索を頼む」
アンナ軍曹はもちろん、カミーユ大尉達は、この間、話していた、トニーがこんなところで
出てきて、とても驚いた様子で
「エマ、このトニーは、アンナ軍曹の知り合いですよ」
「なんだって!それは本当かいアンナ」
「はい、そうです。大尉達にも話はしていたんですが、このトニーは昔の教官仲間です。以前、私も同じところで教官をしていたんですけど、先日、トニーがもうすぐ軍を退官するはずだったので、会いに行ったんですけど、そこにはもういなくなっており、トニーの上官もその理由を教えてくれなかったんです。でもトニーはわたしと同じ軍曹だったはずです。どう考えても士官学校にも行ってないトニーが少尉になること事態おかしいです」
「そうかい、確かに変だね、そりゃあ、アンナ、そのトニーっていうのは、なんか、特技はあったのかい?」
「はい、体術における近接戦では、軍ではトニーにかなうものはいなかったと思います。
私も、素手同志なら、いい勝負ができますが、ナイフなどを持たせたら、とても、トニーにはかないませんでした。あと、お母さんが中東の方の出身で、そこの国の言葉も話せるけど、フランスでは全く、役に立たないとか、言って笑ってましたね」
「なるほどね。ムセビアに行かせるには、ちょうど都合いい人物というわけだね」
「都合のいい人物?」
「そうさ、今、ムセビアは世界で最も不安定な危険な国と言われ、核兵器の所有や国内での内戦や、それにより、国民は疲弊し、虐殺などもあり、国連やNATOも危険国家として指定し、うわさだが、NATOの国の諜報員が秘密裏にムセビアへの核や化学兵器などの確認、または、行方がわからない、アハド大統領の捜索に入りこんでいるようだ。だからトニーは現地語が話せて、容姿もあの国では違和感がないし、近接戦にも優れているから、都合がいい人間ということになる。おそらく、昇進もそうだが、トニーはかなりの好条件を提示され、この潜入捜査を承諾したと思うよ。その上官も秘密裏に行うこの作戦をむやみに話すことはできなかったんだろうね」
アンナは、あんなに優しかったトニーがいくら好条件だったとしても、こんな危険な任務引き受けただろうか、実家が農家で、父と一緒に働くことを楽しみにしていたのに・・・
「アンナ、そんな不安そうな顔をするな、局長からの命令ということは、トニーはこの治安情報局が全面的に守ってあげることにもつながるんだぞ」
アンナは嬉しそうな表情をして
「了解!大尉、早くトニーを見つけましょう」
チームはすぐに捜索を開始した。
応援ありがとうございます!
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