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第四章 文化祭と秘めた気持ち
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「それで女装することになったと」
「ああそうだよ」
バイト先の控え室。仕事を終えた俺と串田はいつも通りに少し話をしていた。ここ最近は文化祭関係の話が多い。
「そんな嫌そうな顔しなくても、メイクとか女子がやってくれるんでしょ? 意外といい線行くんじゃないかな」
「いい線行けばいいってもんじゃないだろ……どっちに転んでも何で女装なんか」
好き好んでやるものではない。
「もし困ってるなら服貸すよ?」
「さすがに入らんだろ。小さいから無理だな。それに衣装に関しては日曜に後藤と橋本と見に行くことにしたしな」
もちろん某総合ディスカウントストアへ行くつもりである。
「へー楽しそう。私一緒に行こうかな。うちのクラス的にはまだ早いけど見ておきたいし」
「そういうことならいいんじゃないか? 聞いてみとくよ。あとで連絡する」
結局俺たちは4人で店に向かっていた。ちなみに串田が来ると後藤に話した時に、あいつは涙を流しながら喜んでいた気がした。メッセージなのにそう感じてしまった。
「それにしても今日は晴れてよかったな」
「そうだねー。ここ最近は本当に梅雨って感じの天気が続いてたからね」
毎日じめじめしていると気が滅入るから困る。外に出るのすら億劫だからな。
「それより今日買うのって衣装だけなのか?」
後藤がわざわざクラスから三人で来たことを疑問に思ったのか口に出す。
「いえ、責任者の武田さんからメモを預かってます。もしあったら買っておいてと言われてますよ」
俺と後藤は衣装のサイズのこともあるが荷物持ちでもあるということだ。
「よかった! 私もいろいろ見るから一緒に回れるね」
「ああそうだな」
店内に入るとその商品の多さに圧倒される。いつきてもここはワクワクするな!
とりあえず俺たちは第一目標である衣装から見ることにした。いろんなコスプレグッズが並んでいるが、女装をするということならばまずはカツラがいるだろう。衣装との色の相性も考えて……。
「遠藤君ったら意外と真剣に選んでる……」
「いや、これは別にそういうわけじゃなくてだな」
「変なところで真面目ですからね。後藤君も一緒に選んでみてください」
「はーい」
後藤は物珍しそうにいろんな衣装を見始めた。
「それじゃあ私はメモにあるものを少し探してきます」
「あ、私も行くよ瑞穂」
二人が店の中に消えていく。俺と後藤はここまで来たら楽しまなきゃ損だと思い、いろんな衣装を手にとっては二人で話し合った。
「二人とも、まだ選んでたんですか?」
「おっ、橋本ちょうどいいところに」
二人だけでは意見が固まらなかったので女子二人が戻ってきてくれて助かった。
「ああ、まずは俺なんだが」
後藤が自分の衣装について説明する。曰く、運動部で身長も高めの後藤には露出が少ない長めの丈のメイド服のようなものにして装飾が多いもので体型をカバーしようとするか、はたまた筋肉を見せつけるようにミニスカでも履くかで迷っているとのことだ。俺は男のミニスカなんて見たくないので圧倒的前者派なのだが、二人はどうだろうか。
「なるほど。おそらくクラスの皆が期待しているのは後者でしょうが……」
「普通に私は見たくない。それで廊下ねり歩いたら変質者だよ?」
やはり俺と同じ意見のようだ。その言葉で後藤も決心がついたようで頷く。
「それじゃあミニスカにするかな!」
後藤は変なところで鋼のメンタルを持っていたようだ。普段の撃たれ弱さはどこへ行ったんだ。串田に至っては苦笑いだ。
「まあ、いいでしょう。それで遠藤君の方は?」
俺は制服タイプの衣装を買おうかと思ったのだが、俺のサイズであれば女子から借りてきてもいいんじゃないかと思い提案する。コスプレ衣装よりもまともに見えるはずだ。
「なるほどね。でも借りれる女子なんているの? 当日普通はみんな制服なんじゃないかな」
「それは俺も考えたんだよ。そこで予算的には一人分の衣装代が浮くわけだろ? なら女子にも一人男装させてみようかなと。そしてサイズ的にも適任な人がここに一人……」
俺はそう言って委員長の方を見た。
「わ、私の制服が着たいんですか?」
「そういうわけじゃねえよ! 単純に男子だけなのは不公平ってのと、実行委員のお返しだ」
俺はニヤリとした笑みで委員長を見据える。
「気持ち悪い顔しないでください。まあ提案としてはありだと思いますけど」
「瑞穂の男装! 見てみたい! うちのお義父さんのスーツなら多分サイズも許容範囲だよ!」
そういえば父さんも俺と似たような背丈だったな。遺伝的に見ても俺は大きくならないんだろうな……とほほ。
「それじゃあ結局衣装代は一人分ですけど、まあ節約できるならもっとお菓子とかに回せるからいいでしょう」
決まりだ。それにしても委員長はあまり男装嫌がらなかったな。そう聞いてみると。
「まあ女装と違って女は普段からズボンも履きますからそんなに抵抗はないですね」
よくよく考えれば当然の事であった。
「ああそうだよ」
バイト先の控え室。仕事を終えた俺と串田はいつも通りに少し話をしていた。ここ最近は文化祭関係の話が多い。
「そんな嫌そうな顔しなくても、メイクとか女子がやってくれるんでしょ? 意外といい線行くんじゃないかな」
「いい線行けばいいってもんじゃないだろ……どっちに転んでも何で女装なんか」
好き好んでやるものではない。
「もし困ってるなら服貸すよ?」
「さすがに入らんだろ。小さいから無理だな。それに衣装に関しては日曜に後藤と橋本と見に行くことにしたしな」
もちろん某総合ディスカウントストアへ行くつもりである。
「へー楽しそう。私一緒に行こうかな。うちのクラス的にはまだ早いけど見ておきたいし」
「そういうことならいいんじゃないか? 聞いてみとくよ。あとで連絡する」
結局俺たちは4人で店に向かっていた。ちなみに串田が来ると後藤に話した時に、あいつは涙を流しながら喜んでいた気がした。メッセージなのにそう感じてしまった。
「それにしても今日は晴れてよかったな」
「そうだねー。ここ最近は本当に梅雨って感じの天気が続いてたからね」
毎日じめじめしていると気が滅入るから困る。外に出るのすら億劫だからな。
「それより今日買うのって衣装だけなのか?」
後藤がわざわざクラスから三人で来たことを疑問に思ったのか口に出す。
「いえ、責任者の武田さんからメモを預かってます。もしあったら買っておいてと言われてますよ」
俺と後藤は衣装のサイズのこともあるが荷物持ちでもあるということだ。
「よかった! 私もいろいろ見るから一緒に回れるね」
「ああそうだな」
店内に入るとその商品の多さに圧倒される。いつきてもここはワクワクするな!
とりあえず俺たちは第一目標である衣装から見ることにした。いろんなコスプレグッズが並んでいるが、女装をするということならばまずはカツラがいるだろう。衣装との色の相性も考えて……。
「遠藤君ったら意外と真剣に選んでる……」
「いや、これは別にそういうわけじゃなくてだな」
「変なところで真面目ですからね。後藤君も一緒に選んでみてください」
「はーい」
後藤は物珍しそうにいろんな衣装を見始めた。
「それじゃあ私はメモにあるものを少し探してきます」
「あ、私も行くよ瑞穂」
二人が店の中に消えていく。俺と後藤はここまで来たら楽しまなきゃ損だと思い、いろんな衣装を手にとっては二人で話し合った。
「二人とも、まだ選んでたんですか?」
「おっ、橋本ちょうどいいところに」
二人だけでは意見が固まらなかったので女子二人が戻ってきてくれて助かった。
「ああ、まずは俺なんだが」
後藤が自分の衣装について説明する。曰く、運動部で身長も高めの後藤には露出が少ない長めの丈のメイド服のようなものにして装飾が多いもので体型をカバーしようとするか、はたまた筋肉を見せつけるようにミニスカでも履くかで迷っているとのことだ。俺は男のミニスカなんて見たくないので圧倒的前者派なのだが、二人はどうだろうか。
「なるほど。おそらくクラスの皆が期待しているのは後者でしょうが……」
「普通に私は見たくない。それで廊下ねり歩いたら変質者だよ?」
やはり俺と同じ意見のようだ。その言葉で後藤も決心がついたようで頷く。
「それじゃあミニスカにするかな!」
後藤は変なところで鋼のメンタルを持っていたようだ。普段の撃たれ弱さはどこへ行ったんだ。串田に至っては苦笑いだ。
「まあ、いいでしょう。それで遠藤君の方は?」
俺は制服タイプの衣装を買おうかと思ったのだが、俺のサイズであれば女子から借りてきてもいいんじゃないかと思い提案する。コスプレ衣装よりもまともに見えるはずだ。
「なるほどね。でも借りれる女子なんているの? 当日普通はみんな制服なんじゃないかな」
「それは俺も考えたんだよ。そこで予算的には一人分の衣装代が浮くわけだろ? なら女子にも一人男装させてみようかなと。そしてサイズ的にも適任な人がここに一人……」
俺はそう言って委員長の方を見た。
「わ、私の制服が着たいんですか?」
「そういうわけじゃねえよ! 単純に男子だけなのは不公平ってのと、実行委員のお返しだ」
俺はニヤリとした笑みで委員長を見据える。
「気持ち悪い顔しないでください。まあ提案としてはありだと思いますけど」
「瑞穂の男装! 見てみたい! うちのお義父さんのスーツなら多分サイズも許容範囲だよ!」
そういえば父さんも俺と似たような背丈だったな。遺伝的に見ても俺は大きくならないんだろうな……とほほ。
「それじゃあ結局衣装代は一人分ですけど、まあ節約できるならもっとお菓子とかに回せるからいいでしょう」
決まりだ。それにしても委員長はあまり男装嫌がらなかったな。そう聞いてみると。
「まあ女装と違って女は普段からズボンも履きますからそんなに抵抗はないですね」
よくよく考えれば当然の事であった。
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